指輪と髪飾りの主へ

こんな所にまで顔を出すとは思いもよりませんでしたよ。
返ってくるとも思いませんが…鳩を出せない臆病者なんですよ、仕方ないでしょう!?

本来なら貴方と１番言葉を介したあの陰険鬼畜男で書き連ねればいいのですが…あの男では本音が言えないんですよ、嘘というか…縋る事が出来ないんですっ。

…私は、私達は貴方を待ち続けていいですか?恐い、んです。
貴方が帰ってくるまで待ちます、指輪に祈りを込めて。
だから時にはたった一言でいいですから顔を、声を聞かせなさいっ!
会いたい、なんて…こんな気持ち…重いかもしれませんが…会いたい、会いたいんですよ本当はっ!

あぁ、全く…こんな女々しい気持ちやはりあの男には吐き出す事も出来ませんね、恥ずかしがり屋らしいですから貴方いわく。

ですが…会いたい願望の中に貴方が元気でいるならいい、と思う気持ちもありますから…元気でいなさい、愛しい貴方。

鍵が少なくて仕方ないですが…見たら貴方は気付くんでしょうかね。

幼馴染みであったり使用人だったり疾風だったり沢山の姿で会い、慈しんだ貴方へ。

古いものを引っ張りだして、今更何だと言われるやも知れないが…俺なりの答をお前に返させて欲しい。

こちらから連絡が出来なくなってどれくらい経っただろうか…お前には申し訳ないがそれすらも覚えていない。
お前にどんな思いをさせているのかわかっていながらも鳩の一通も送ってやれない自分が腹立たしい。
だが、同時に自分自身に弱い今の俺じゃお前の側にいても迷惑をかけるばかりだ。
だから……待ってて欲しいなんてもう言えない、お前を幸せにしてくれる人間でも見つけるといいさ。引く手数多のお前ならすぐに見つかるのだから。今の俺ではどんなにお前が愛しくとも拘束する権利なんざない。

お互い不器用で、そのくせやけに心配性でどうしようもなくて、俺と同じところをもったお前が今でも愛しくて仕方ない。会いたいなんて言ったら今まで堪えてきたものが全て崩れてしまいそうで言えない。
…ああ、どうせなら会える内にもっとお前に触れておけばよかった。もっと、抱きしめて、愛してるって囁いておけばよかった。…なんて、後悔しても遅いんだがな。


俺を覚えててもらえてる自信すらないが…お前がまだ待っててくれるなら、帰る場所をとっておいてくれるなら俺はお前の元に必ず帰ろう、待つのが疲れた場合は贈った髪飾りと指輪はお前の手で処分してやってほしい。


さて…いつもの決まり文句でも残しておくか。愛しいお前に、こんな季節だから体調管理は怠るなよ?

…本当はずっと前に気付いていたんですが…私は何を貴方に返せばいいのかわからなくて考えては止めてを繰り返していました…えぇ、えぇ!馬鹿だと言ってくれても構いませんよっ!全く滑稽ですね…。

弱い、とか今更じゃないですか…私は貴方のそんな部分だって愛しいんですよ?何故、何時も…直ぐに手を離すような事を言うんですかっ…私は貴方と出会えたあの時を未だに忘れられません。
引く手数多?馬鹿をおっしゃい!!忘れられるわけがないでしょう!?貴方が私を嫌いになったのなら…忘れます、よっ。
鳩はいいんです…貴方が元気ならばそれが１番ですからねぇ…なんて意地はまだ張れますから。

だから…だからっ、貴方が私を嫌いでないならば何時か…連絡ぐらいよこしなさい…鳩は変えません、貴方がそれも忘れたいならば構いませんけどね。
忘れてしまってもいいですよ、ただ私は貴方を待っています。貴方がそれを拒絶するならば…諦めますから…あーっ全く女々しいにも程がありますよっ。

貴方を包む事ぐらい出来るんですからね、私は。
それを覚えていて欲しい、と…無理を承知で言わせなさい…。

最後の最後に卑怯者ですねぇ、貴方は…そんな言葉見たら眼鏡が曇りますよっ。
貴方も元気でいなさい、それが１番の願いです。

全く…こんなもの引っ張りだして俺も未練がましいったらねぇな。
今、お前はどうしてるんだろうな。
元気でやってるか？俺の事、まだ覚えててくれてるか？……いや、さすがにもう忘れてるか。

またやりとりが無くなって、もしかしたらこっちのミスで返してないのかも知れないと確認しようとしたが…怖くて出来なかった、なんてただの言い訳だよな。


……最後まで卑怯な俺ですまなかった。俺はお前が元気でやってるならそれでいいから。
お前が誰かと一緒にいて笑って幸せで過ごせているのならそれで満足だからな。