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1 アスガルド新主神

ミュリンの指輪に願う幸せ

さて、あんたはいつ此処に気が付くのかな。

つらつら続けんのも何か申し訳ない気がしてきたし、お互い納得するまで話しあおうか、お姫様。


――…まずは、謝罪。
悪かった、あの時二人の部屋に言葉を残す事も出来たはずなのに、そうしなかった…いや、正しくはしようとしなかった俺が元はいけなかったんだ。
毎晩、最近は色んな女を抱いてるけどやっぱ…虚しいんだよ。
今更ってのはわかってるしヨリを戻そう何て言うつもりもない。

でもな、本当は後悔してるんだ、手放しちまった事。


罵りも甘んじて受ける。
だからまた…きみの言葉が欲しい。
2 アリーシャ
何、この手紙…。
私は貴方の存在に気付けなかったのね──…

何時も必然の様に御互い擦れ違い、そして言葉を残し…貴方から貰った全ての言の葉を私は受け止め、今迄頑張れた…そう思って来たのに。
肝心な時に気付いてあげる事が出来なくて御免なさい。

神様の悪戯なのかしら…。
貴方の言葉に気付かぬ儘に大分時間は過ぎ行き、気付いた今ではもう…貴方は此処には居ないでしょう…。

今更話し合う事は無いと思うの。
此の、最後の手紙を見て私は貴方の全てを知った…。悪いのは私だった──…
理解、してあげる事が出来なかった……。


本当に、御免なさい。


貴方は今愛してる人と、幸せになって下さい。
其が私にとっての幸せ──…


ありがとう、ルーファス…。
私、貴方に出逢えて良かった。

今迄、ありがとう──…
3 ルーファス
はは…参っちまうな、まさか――…アリーシャの言葉を今見てしまうなんてさ。

馬鹿だな、きみは何も悪くなんか無いんだ。
いや、悪いとすればそれはお互い様だろ?
アリーシャも俺も互いに感情表現が下手だったからな。
なぁ…覚えてるか?
初めて手を繋いだ夜。
何度も唇を重ねた朝。

俺は忘れないよ。
忘れられる筈、無いんだ。


きみも知っての通り、俺の隣には今違う人が居る。
しかもその人はな、何の運命の悪戯か過去にきみと出会っていた事があるらしい。そして、俺たちの部屋の事も知っていた…。
こればかりは神様の俺にも予想は出来なかったな。

…――忘れない。
アリーシャが居てくれたから今の俺が在るんだから。

俺ときみが愛を誓ったミュリンの指輪は此処に置いていこう。
そして此処から互いに違う道を歩み始めるんだ。


アリーシャ、きみに出会えて良かった。
俺は幸せを見付けた。
次はきみの番だ。
もし、愛する人に出会えたらちゃんと報告しろ…って言っても勢いで鍵変えちまったからな…。
とにかく!
今までの二割り増し以上に幸せに成れ。
それがきみへの最後のお願いだ。

今迄有難うアリーシャ。
俺が愛した人がきみで良かった――…。