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1 闇夜の紡ぎ手

闇から、生へ

――解らないね。
いや、君の事ではないんだよ。あくまでも僕は自分の事が解らないんだ。誤解だけはして欲しくない。

本当は君に伝えたい事なんて、何一つないのかもしれない。虚ろな存在だからね僕は…何て言うと君は眉を寄せてあの愛らしい相棒を撫でるのだろうか。


前置きばかりが長くなるのは癖だね、許しておくれ。
意味も意義も理由すら曖昧なのだけれど、今もあるけど動かないあの場を見たら唐突に君が懐かしくなって、ね。
探す資格もない僕は、こうして小さな言の葉を残す事にしてみたよ。


君は、元気かい?
幸せにしているかい?
それなら…良いと思う。
あの柔らかい色をした石は、今も僕の手の中にあるから安心してくれたまえ。実際、手放す気も更々ないしね。

君の事を何と言って良いのかは正直曖昧だね。
ただ、話した言葉が優しくて、僕は心地よかったんだよ。
闇の許容を、ありがとう。

人ですらない僕と何度も会話してくれたのは、感謝しているとしか言い様がない。

どうしようか。伝えたい内容は多々に渡ってあるのだけれど、上手い事人の言葉になってくれないな。

実は、僕のこの感情は神でさえ把握していないと思うんだ。
実際、僕でさえ予想外だったんだからね――笑える。
ええと、そうではなくて、そう。伝えたいのはこれだ。
あの頃告げる事は出来なかったけれど、君の事が大切だったよ。
…それだけだ。結局の所。もっと凄い何かを期待していたらすまないね、僕には語彙が少ないんだよ。君は知っていたかな?


それじゃあ、言い逃げだけどここまでだ。僕はまた闇の中で眠りにつこうと思う。
ステンドグラスから君に差し込む光が、眠る君を包む闇が、どうか常に優しいものである事を僕は祈っている。
2 死の真逆
…よう、久々だな。いや俺の方が久々なんだろーけどさ。
かはは、傑作だな。まさかここに来てまでお前の足跡を見つける事になるなんざ、おかしすぎて笑っちまう。

ああそう、何を言いに来たんだか忘れるトコだった。
言いづれぇな、全く……あの頃も今も俺も幸せだったし、今は闇だったか?お前が大事だった。考えてた事同じだぜ?凄ぇ笑えるよ。

お前とあの場で交わした文は短かったけど、それでも俺は良かったと思ってる、なんて、俺らしくねーのな。かは。
お前に貰った相棒、もといナイフだけどよ、ちゃんと磨いて保管してあっから安心しろや。

じゃ、ま、そんだけ。お前の書き込み見て久々に書いてみたくなっただけだから、これで本当にさよならだ。
アデュー、俺の闇夜。
お前が幸せな道を行かん事を。
3 死の真逆
追記。つーか書きもらし。
俺はお前のお友達だったっつー事でいいんだよな?お互い恋愛感情はなかったんだろ、どう考えてもさ。
それでも、お前に会えて良かったよ。
傑作だな…いや、戯言か。聞き流してくれとは言わねーけど、あんま気に止めねぇように。
可愛いお前の恋人ちゃんと仲良くな、かははっ。
4 闇夜の紡ぎ手
――はは、いや参ったな。こんなに早く見つかってしまうだなんて、思わなかったよ。
うん。単純に予想外だ。僕の裏をかけた事を喜びたまえ、鬼の申し子くん。
元気なら良かったよ、素直にそう思える。

君と僕の運命が繋がる事は、きっともう有り得ないのだけれど、出来れば忘れないでいてほしい。
僕という愚かな友人がいた事を。

確かに君と僕の間にそんな甘ったるくて泣きたくなる感情があったとしたら、それこそあの場の住人は声をあげて笑っただろう。僕と君の位置付けは、友人にしか成り得ない。お互いに了承済みの事だったね、これは。


それでは、ここで本当にお開きだ――さようなら。ありがとう。
君に幸を。