運命を信じた者へ

この後に及んでまだ代理とは‥呆れた奴だな、俺の懐刀は…‥まあ良いだろう。お前に見つかっちまったしな、否…見つけちまったが正解か。

其処のお前…そう、内面を直ぐに見抜いたお前だ。元気にしてるみたいだな、安心したぞ。ま、一時其の元気を奪ったのは此方…と言うのには敢えて触れるなよ？

連絡を…‥と言ってもらったのは喜ぶべき事なんだろうが、彼奴は臆病でな‥舞台に上がる事も出来ずにいる。故に代理で相手をする事は容赦しろ。

今はまだやり取りをする程の気持ちの余裕はない、が…お前の気が向いたら此処に筆跡を残せ、それ位なら平気らしいからな。

其方が遣いを立てようが本人を寄越そうがそれは厭わん。
その前に‥此処に気付くかどうか分からんがな。

此は確率の問題だ、運命とやらが互いを呼び寄せるのなら…お前は必ずや此処を見付ける。…‥相変わらず陳腐な台詞しか浮かばんな、だからバレるんだ‥。

今度は私が代理だとは‥案外あの阿呆神子は意地が悪い様ですねぇ…

やはり見つけましたよ。貴方を

運命とは時には残酷で‥なんてよく言いますがまさに当て嵌まりますね。

また貴方が腕の中からするりと抜け出す事などわかっているのに連絡が取りたくて仕方が無い。


年寄りの我儘‥おっと、これは貴方の台詞でした。
まぁ似た様な物です、貴方こそ気が向いたらこの戯言達に付き合って下さい。


元気には‥してますよ。身体はどう考えても貴方の方が弱そうですからねぇ…そっちの方が心配です。

しかし精神面は似た者同士なんでしょう。
もうヘロヘロでしたよ、正直。

結局大人になりきれてないのは私の方だった‥
いやですねー、大人気ないとはこういうときに使うと言う事がよくわかりましたよ。

…おっ？見つけたか‥これも又運命、と言えりゃあ良いんだがな。

…しかしまあ、何だ？俺の姿で来るとはな、捻くれ者め。…‥否、其れは俺の方だったな。


戯言上等だ、寧ろ俺には其れしか言えん。

俺を捕らえるのは容易ではないぞ、いつ何時又すり抜けるかもしれん…其れを自覚しているから文を躊躇う。これ以上傷付けたくはないからな。…赦せとは言わん。


身体の方はお前の予想通りだ‥下手すりゃ待医の世話にならねばならん、厄介なもんだ。

精神面はなー…上手く軌道に乗らん。そこかしこで脆さを露呈しまくりだ。…だが過去形を使った所を見ると、今は違うみたいだな？


…っはは、お前が大人に成り切れないなら俺はどうなる？…思惑が通らないと駄々をこね泣き叫ぶ…妥協も出来ずに一切を拒む、まんま餓鬼だ。…歳ばかり重ねて中身が全く伴わん、何で大人になんかなっちまったのかね‥。

運命、ですよ。
貴方が言ったのでしょう?そして私に信じさせた。
泡沫の夢の様な言葉…本当は信じたくなかったのですが‥
貴方が言うからには…
信じるしか無かった。


褒めて下さりありがとうございます。捻くれ具合は貴方の半分程度なのでご安心を


容易ではない事など連絡を取り合ってる時から知って居ましたよ。だから赦すも何もないでしょう。
私が選んだ道、ですから


やはりそうでしたか…まったくそんな予感がしていましたよ。元々身体が強い方ではないんですから無理はしないで下さい


軌道には‥貴方と離れた時点で外れていた様な気がしますよ。しかし違う軌道に乗せてくれる方が居た、には居ました。
その方のお陰で今はヘロヘロからクタクタに変わったとでも言っておきましょうかねぇ?


それが人間ってもんですよ、私だって気を抜けばすぐに醜態をさらけ出してしまう。

その気の抜き所も必要ですよ…?

おいおい、幾ら俺が言ったからとてそう端っから盲目的に信じる必要なんざ有りはしねぇぞ？
…それしか道が無い訳じゃあるまいし、俺が描いた道をなぞって‥それでお前は幸せか？…‥底意地の悪い質問をしたな、流して構わん。

本人目の前にしてよくもまあ抜け抜けと言ってくれるな、…だが否定も出来ん。

まあな、そして其の言葉通り…‥俺はお前の腕の中からすり抜けた。

そう言ってくれるな、誰も好きでこんな爆弾抱えてる訳じゃない。無理も無茶も俺の専売特許だが、今はそれなりに控えてるつもりだ。


…軌道修正とは行かないまでも俺の不安定な精神状態を救ってくれた奇特な奴が居てな、…‥だからこそ此処に出向く事が出来ている、そうでなければ俺は完全にこの世界から去っていただろう。
だが解せんな、ヘロヘロからクタクタでは向上しているとは微塵にも思えん。何処に軌道修正されちまったんだ？…何て、俺に聞く権利は無い。


人間ねぇ…此ほど複雑怪奇な生物は先ず居ないだろうな、…‥いっそのこと空に溶け込んでしまえれば。


おっと、如何な…放棄するには些か早計って奴だな。

本当に嫌な質問ですねぇ…
‥私は貴方になぞられた道ならば喜んで通りますよ。
ただそれはこの頃幸せがよくわからなくなっているから、かも知れませんね…
それにそんな質問をすると言う事は貴方なら幸せではない、と言いたいのでしょう?


しかしまた目と鼻の先にいる。
きっと無理に手を伸ばしてきつく抱き締め様とも貴方は私の腕を切ってでも抜けて行ってしまう…違いますか?


控えているならいいですが‥
心配する者がいる事くらいは覚えていて下さいよ?


そんな方が‥いらっしゃったのですか‥
ふふっ…馬鹿ですね、私は。それですら嫉妬してますよ

何処に‥と聞かれると困りますねぇ。簡単に言うなら‥妥協の暗闇とでも言いましょうか…変わった様に見せているだけに過ぎないのかも知れません。


空に逃げるなんて私が赦しませんよ。
一番簡単で一番踏ん切りがつかない方法を取るなんて‥狡過ぎですよ。

誰かの後をついて行くのは易い、全てを相手に委ねる…自分に何ら責はない…‥此ほど緩慢で居心地の良い場所はない。
仮初めの指針となる事は出来ても歩くのは基本己自身だ、其れだけは間違えるな…道は拓けるモンじゃなくて自分の手で拓かせるモンなんだよ。

歩みを進める為に不必要な足枷になるのは御免だ…‥っとと、何やら説教臭くなっちまった…ったく、年は取りたくねぇな。
此が俺の考え、って奴だ。気分を害したか？


俺は非武装派だぜ？ンな物騒な事はせん、だからとて…其れがすり抜けない保証‥って訳でもないがな。

…ああ、其の旨しかと肝に命じておく。


嘘を吐くよりはマシだろう、だから敢えて口にした…他意はない。支えがなければ舞台に上がれぬ程俺は疲弊している…‥其れが現状だ。
嫉妬…か、お前は相変わらず直情径行が強いな。


妥協ねぇ‥其れが出来なくて足掻いた結果のクタクタか。ま、解らんでもないがな…事実俺も漆黒に身を委ねた…‥絶望と言う名の漆黒にな。


羽ばたこうにも生憎俺の背には翼が無い、在って精々神話並の出来損ないだ。

…狡猾なのは自覚済み、だからこそ地を這いつくばって醜態を晒しながらも此処に居る。‥違うか？

『時』が全てを解決する。

今、何をしなければあらないか。
今、何をしてはならないか。
今、どうしたいのか。
今、どうするのか。

どの時を選んで、動き出すの？
あなた次第でしょう、全て。

ならば俺の取るべき道は一つに絞られた。

それは古い歴史を内側から打ち崩し新たな歴史を紡ぐ事だ。
此は俺一人でやらないと意味が無い、誰の手も借りる事は赦されやしない。

故に俺は居心地の良い場所から去る、総てを一から築き上げる為に総てを棄てる。

此が俺の答えだ。

『時』というものは、継続しています。今、この瞬間も…。
途切れる事無く、続くのです。

次の『時』を迎える迄の間に、重要な決断をするのならば
『時が十分に満ちている』かを、冷静に落着いて考える事です。

独りではなく、複数の視線で…。
その道を、知る者と共に…。
『知る者』と共に歩めば
あなたの望む場所へ、必ず連れて行ってくれるでしょう。
その者は、あなたの導き手ですから。
そして、役を果たし終えた時には
少しずつ控えて行くでしょう、共に歩む事を。


焦燥感に駆られ、困惑に翻弄された中での決断は
とても危険です。

現状を乗り越える為にも、
未来を得る為にも、
今、慌ててはなりません。

早急な決断よりも、心静かに『待つ』事を学ぶのです。

『満ちた時』というのは、必ずわかります。
絶望や困窮の中で、掴み取るものではありません。
事態に翻弄されている時には、決して観得ません。
だから、迷うのです。

『急いては、事を仕損じます。』
心に刻みなさい、この言葉を。

もう少し、『待つ』のです。
最終決断を出すのは、時期尚早ですよ。

未だ、『時』は満ちておりません。

どうか、まだ間に合いますように。
あなたがもう一度、此方を振り返って下さる事を願いつつ。

あなたの導き手を、切実に願う者より…。

……貴方はまだ私にそんな言葉を掛けてくれるのですか？

有り難いやら何やらで…胸が痛いですよ‥とてもね。

ですが、全てを棄てる事を止めるつもりはありません…赦して下さい。

そして…振り返るのは此でお終いです、繋がりは全て断ち切らせて頂きました。

最後の最後に漸く本来の姿で此処に来ましたが、貴方に面と向かって謝る事も出来ない…結局私は狡いままですね、こんな私の事など‥どうかもう忘れてしまって下さい。

そうすれば、貴方が真に導きたい者も見つかるでしょう。全てを棄てて逃げ出してしまう私などより、貴方を必要とする人の導き手になってあげて下さい。


こんな事を言える義理はありませんが…貴方に再び会えた事実は嬉しかったですよ。…独断で決めてしまった事、貴方の元に還れない事‥何度謝罪しても足りません。


…‥異国から来た優しい神子、貴方は私には勿体無い位の良い人でしたよ。

kwsk

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