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1 瓶底眼鏡悪魔

…少女へ。

……もしかして見付かっちまった?
ただ、此処を覗いたって事は…一人ぐらいしか居ねェだろうな。


区切りの手紙も送らずに其儘にして、……本当に、御免。

何て言ったら一番伝わるか解んねぇ。…無論、もうとっくの昔に愛想は尽かされてるかも知れねェけど。


本当に、本当に…御免な、ハルヒ。


罪悪感だけが痼みてーに固まって取れなくて、情けねぇし申し訳も無い。今更手紙何て飛せなくてよ。…だから、此処に残して行く。

もう絶対途切れ何てさせないって決めてた。…其すらも守れて無い何て、…本当笑えるよな。


オレの他に相手、見付かったのか?
それともオレの汚ったねェ字の手紙を待ってた?

馬鹿な事ばっか言ってて御免。…もし相手居るんなら、そいつの手は手放すなよ?


最後の最後に。
本当に御免…それと本当に有難うな。


追伸.
お前と居た日々が一番楽しかった。伊太利、また逢えたら連れてってやるから。
2 涼宮ハルヒ
━━…馬鹿。

もう此の言葉に尽きるわ。
勿論貴方にじゃない、未だ貴方の事を待ち続けてたあたしに。


あたし…ずっと待ってた。
心の何処かで嫌われた、愛想尽かされたって結果を知って居ながら其れを必死に否定して、待ってた。
━━本当、滑稽よね。


捜すのも勇気が無くて、重荷に成りたく無くて、ハッキリ別れを告げられるのが恐くて…

暫く忘れる為に此の世界から離れてたの。だから新しい相手何て……━━アンタを待ってたのに作れる訳無いじゃないッ。

だから今日は偶…ううん、もう奇跡の領域で貴方を見付けたのよ。嬉しい反面、凄く驚いた。貴方こそもう可愛らしい娘でも見付けてるって思ってたから。


貴方を見付けちゃった以上、最後何て淋しい別れはしたく無いし離したく無い…って言うのは唯のエゴイズム。唯の呟き。

こうやって言葉をくれた以上私は怒らない。団長様の心の広さを見せてあげるわ。だから、御願い。もう責任何て、感じないで…?


私こそ、どんな不思議な宇宙船拠り大きい有難うをアンタに。
出来れば伊太利も肝試しも、貴方と過ごしたかったな。

柄じゃないけど、きっと私…ティッキーの事好きだった。大好きだった。


又貴方と過ごしたい何て夢はもう絶対叶わないわよね…━━━
3 ティキ
―――…参った。
まさか、返事が来てるとは思わなかった…ずっと見るのを躊躇ってた。…遅くなって御免、な?


…滑稽何て言葉、団長サンには余りにも不釣合いだと思うけど。
それに、オレの所為でハルヒを傷付け待たせてたンだ。言う成らオレに向って言ってよ。


すっげェ嬉しいけど、其と同じぐらい申し訳ねェ…悪ィ。
オレだって作れる訳ねェよ、ハルヒがずっと頭から離れなかったし、お前以外は厭だったから。

――お前は何時も、オレが欲しくて喜ぶ様な言葉を呉れるンだな。利己主義何かじゃねェと思う、オレもハルヒと同じ思いだから。

っ……サンキュ。流石の団長サン、今の言葉は胸に来た。全くは無理かも知れねェけど肝に銘じるよ。


肝試しも伊太利も、まだ間に合うか…?――何て、織り姫と彦星にだって叶えられ無い小言だな。

照れっから言うの迷ってたけど、此の際言っとく。
オレも…ハルヒの事、大好きだったぜ?


オレにはお前を引止める資格は無い。…勿論、再び笑い合える時が来るのは望んでるけど、な。
4 涼宮ハルヒ
遅刻は罰金百万円!
――…って言いたい処だけど今回は見逃すわ。来て呉れただけで良しだし私も少し遅れたし。


不釣り合いだからこそ滑稽だと思わない?全ッ然、あたしらしく無い。
…良いの、あたしが勝手に待ってたんだし。認めたく無いけど結局あたしが糸を繋げておけなかった…って事でしょ。団長様が見逃すって言ってるんだから甘んじなさい!


―――…ねぇ、ティッキー。

あたし以外が厭って言うの成ら。
あたしと同じ想いを胸に抱いて呉れて居るの成ら。
あたしが肝試しも伊太利も未だ全然間に合うって言ったの成ら。


貴方は七夕の奇跡位無茶な願いを叶えて呉れる…?

貴方は未だ一緒に居て呉れる…?


我儘なのは知ってる。
だけど望んじゃったんだから仕方無いじゃない。離したく無いし、別れたくも無いって。

一度しか言わないからちゃんと聞いておきなさい。
私は瓶底眼鏡の悪魔サンが好きよ。好きだったは強がり。本当は、好き。


所詮同じ人間が人間一人の自由を奪える訳無い。
だから其の代わり答えて頂戴。如何な答えでも受け止めてみせるから…―――

ねぇ、あたしの愚かな願い事は叶うかしら?
5 ティキ・ミック
百万何て大金、今直ぐは無…――相変わらず洒落が上手だな。
その事に関して寛大な心に有難うと、ゴメン。


ハルヒらしい、って?オレが言える事じゃ無いけど、人なら誰しも持ってるモンだと思うから非難する事ねェと思う。
…じゃ、御言葉通りハルヒの善意に素直に甘えさせて貰うわ。


―――今日は…生憎の雨だ。

七夕は過ぎちまったし、今の空は雲に隠され星何て見えやし無い。

それでもオレの願いが叶ったのは奇跡って言うのか?其ともオレが唯、夢見てる?
何方にしても、願わなくったってオレはお前の隣に居座って遣るよ。意地でも、な。


――…やっぱ夢か?
夢にはしたくねェけど、其言葉確り聞き止めた。
……オレも団長サンの事、好きだ。前過去形にしたのは…お前に迷惑掛けたらいけないと思ってよ。


――此がオレの精一杯の答え。
6 涼宮ハルヒ
だぁーかぁーらぁー
謝らなくて良いってば。見逃すって言ってるんだからね、素直に受け入れなさいっ。そんなんじゃ本当に百万請求するわよ?


…有難。でも此んな団長じゃ団員が困るわ、だから私は早く元通りに成らなきゃね。


夢じゃない。
夢じゃない。
夢じゃない。


――…此れ位言えば理解出来る?
若し此れでも駄目なら顔貸しなさい。ビンタでも頬っぺたつねるのでも痛い位現実だ、って思い知らせてあげるんだから。

…取敢えず答え有難。
あのね、寧ろあたしの方が疑わしい現実なのよ。驚いて無いって言ったら正直嘘に成るもの。
でも其れはどんな不思議因り嬉しくて、どんな不思議な物を見る因り満たしてくれる。


夢、じゃないよね。
信じて良いのよね。
だったら…――あたしの隣は今、貴方の為に空けてあげるんだからちゃんと一緒に居てよねッ。


貴方の居場所は変わってしまったかも知れないけど、あたしの居場所は前とずっと変わらない。

ねぇ、若し本当の言葉なら逢いに来てくれないかしら。
約束よ。もう今度は絶対離してあげないから。

本当は又逢いたいだけなんだけど、ね。