幸せと思った事だけが運命

僕はもう、言葉を残そうとは思わなかった。

例えもう貴様がこの世界からいなくなったと知っていても、書けば引き留めに走りそうだったからな。


だが、やはり貴様の事は忘れられん。

貴様は知らないだろう？
本当は僕は貴様を引き留めたかったんだ。

最後のこの世界から離れると言ったあの時に、僕は何回も言葉を書き直したと言う事を。

フッ、今更もう遅いがな。

貴様の行く先が幸あらん事を祈っている。
それは前も、今も、ずっと変わらん。

僕の為に目に傷を負った貴様。
早く楽に、幸せになれ。
それがもう僕の姿として語る最後の願いだからな。
僕が言うんだ。叶えろよ。

……正しくは能天気で馴れ馴れしくて図々しい田舎者……か。

この世界も久し振りだな。
もう、戻る事も無いと思ってた。
戻って来たって、誰の為にもならない。だから戻るつもりなんて無かった。
……此処に居る時点で矛盾してるけど。

驚いたよ。
まさか、俺なんかにこうして、何かを残してくれてたなんて。
今更で、御免。

えっと……今は、生活も落ち着いて、やっと自由が戻って来たって感じだ。
最後の手紙を送った時、全然余裕が無かったけど、多分……あの時みたいに、俺らしく無い事は考えないと思う。……多分。

少しでも必要とされてたって知って、やっぱり嬉しかった。
俺は俺が全然好きになれなくて、不幸……が、ずっと続いてて、本当の俺は脆くて汚くて偽善者で、唯一自信があった強がる事さえ、出来なくなってた。
ハハ……最低だよな。そんな奴が誰かを好きになったって、意味が無いのに。好きになって貰える訳が無いのに。
結局傷付けるだけ散々傷付けて、被害者面して逃げ出した。
御免。謝る事しか俺には出来ない。
許して欲しいなんて、絶対に言わない。

あ……今、俺……不幸なんかじゃ、ないから。
幸せだって言ったら嘘になるけど、不幸じゃない。

俺の幸せは、お前が誰よりも幸せになる事。

欲しいものを手に入れて、大事にして、世界で一番自分が幸せなんだって、胸を張って言い切れるようになって欲しいんだ。
苦しんで欲しくない。

こんな事を言う権利は無いって分かってる。
けど願わせてくれないか。

誰よりもお前が、幸せになりますように。

コレが俺からの、お前に宛てる最後の言葉。

……俺……強くなりたかった。いや、強く在りたかった。
お前の英雄になりたかった……なんて言ったらまた呆れられるだろうな。

それじゃあ、元気で。
お互い振り向かず、自分の為に、前を向いて歩いて行こう。

強くて、綺麗なお前へ。
英雄になんか少しもなれなかった、俺より。

久し振りに此処を覗いて見たんだが…驚いたな。まさかまた貴様の姿を拝む事になるとは。

今はもうあれからは解放されたのか。
その事は…まぁ、気にはなっていたからな。フン…一応お疲れ様とでも言っておく。
余裕も多少なりとも出てきたみたいだしな。

だが相変わらずだな貴様。
僕が欲しいのは謝罪では無い。そんな物はいらん。無事な事を知れればもういい。

それとだ。貴様なんぞの為にじゃない。貴様だから残したんだ。そこは間違えるなよ。
…まぁ、見付かるとは思ってもいなかったが。

貴様の望み…言ったからには貴様も叶えろよ。僕もそれに向かって行くんだ。貴様も向かえ。


どうせ此れで最後だ。僕は貴様に与えてはやれなかったからな。此れを貴様に。
中.島.美.嘉の「L.E.G.E.N.D」
クソッ…僕らしく無いのは百も承知だ。僕の中での人魚は解放。分かったか？


僕がもう少し素直になれば運命は変わっていたのかもな…フン、ただの戯れ言だ。

それじゃあ貴様も元気でやって行け。僕も前を向く。道は違えたが貴様も足を運べ。直っ直ぐに行けずとも前にな。


強がりしか出来なかった僕より。
脆く強い、僕のただ一人の英雄へ。

俺が幸せに思う事。
それはお前が幸せになる事……なのに、矛盾してる。
遣る事成す事矛盾ばっかりで、笑えるな。ちっとも面白くないのに。

幸せなんかじゃ無かっただろう？俺は本当に、少しでも、お前に必要とされる価値があったのか？

俺の幸せは、お前が幸せになる事と……もう一つ、ある。
何度も言った事がある願いだ。俺は何よりもそれを願ってた。

でもそれを願うとお前が幸せになれない。単なる自己満足になる。またお前を傷付ける。

フラフラ迷ってばかりの俺が汚くて堪らない。
失望されたって仕方無い。
だからあの連絡先もお前を忘れる為に変えた。もう振り向かないように。縋ったりしないように。
なのに。

良い曲だって……俺には、言えない。
嬉しくない……汚い俺を、鏡で見させられた気分だ。

誰が好き好んで、好きな奴を思い出になんかするんだよ。
俺はお前を、いつか目が覚める夢だったなんて思いたくない。思い出になんかしたくない。夢で終わらせるなんて、夢の中に居続けるなんて御免だ！！

お前との出逢いが夢だったとしても、前を向いて歩き続けて正夢にしたかった。
お互いに笑い合える日が来るって信じてた。
だから嫌いな自分を隠して精一杯明るく過ごせた。

なぁ、聞かせてくれよ。
こんな自由なんか要らないから。俺はお前が見たいんだ。

お前は俺に本当は、どうして欲しい？俺の事をどう思ってるんだ？

本当に俺が望む道を歩んで欲しいのか？進みたい道に背を向けた俺に？
自分が望む道を行けって？

俺の行きたい道の先に、変わらず前に居るのは、お前なんだぞ！？

もう取り繕うのは沢山だ。
失望されたって良い。

どれだけ歩いてもお前との距離が縮まらなくて嫌だった。何も出来ない自分を自覚したくなかった。
けど訊く。お前が好きだから。今でも変わらず好きだから。

またお前に向かって歩いても良いのか？
俺は弱いし、汚いし、卑怯だから、絶対に真直ぐになんか歩けない。
今までだってそうだった。

お前はどうしたいんだ？

拒絶してくれ。
俺はお前を是からも好きなままで居る。
傷付けたくないのに傍に居たいって願う最低な奴だ。
頼む。これ以上お前に苦しんで欲しくない。

……俺は最低な奴だから。
お前がもし拒絶しないなら……もう、行く先は決まった。

後はお前が行く先を決めるだけだ。
お前は、何処に行く？

何を望む？何が欲しい？

馬鹿か貴様は！
馬鹿だ。貴様は本当に……何で貴様は何時もそうなんだ！
何時も何時も何時も、僕をもて遊んで楽しいか？
一体何なんだ！僕が…僕がどんな思いで貴様との別れを思い出にしようと、楽しかった鮮やかな思い出にしようとしたと思ってるんだ！

忘れようとしても何時だって貴様がちらついて、誰と話しても満足出来ない。
折角…踏ん切りがつけそうだと思っていた矢先なんだぞ？！
宛先も変えようと……なのに貴様と言う奴は……クソッ。


貴様は何でこんな僕がいいんだ。何も出来ない、ただのできそこないなんだぞ…。

貴様は僕でいいのか？
こんな…諦めたと、思い出だと平気で自分に嘘がつける僕でいいのか？

僕はそれを知るのが、恐い…貴様は何時も僕の側から居たと思えば消えて行く……

僕からも貴様に問掛ける。
本当に僕でいいのか？
他にもいい奴はいるだろう？
それでも、それでも僕でいいのか？

馬鹿だよな、俺。
本当に馬鹿だ。立ち止まったり、諦めたりしたら其処でお終いだけど、絶対に楽になれる筈が無いのにさ。
結局上っ面を気にしてたのは俺だった。

……御免。俺の傍なんか苦しいと思う。けど。
好きだ。ずっと好きだ。
お前は俺がお前を、何で好きなのか分からないって言うけど、俺なんかじゃ絶対に相応しくない位お前は綺麗なんだ。優しいんだ。確りしてて、俺が持ってないものを持ってて、いつの間にかお前しか見れないようになってた。
俺を喜ばせる事が上手過ぎるんだ。驚かされたりもした。……何に、とか詳しい事は内緒だけど。

お前に知って欲しい事は、何があっても俺はお前を好きで居続けるって事。
軽い気持ちなんかで言うと思うか？
こんな事を冗談や気紛れで言う程腐ってなんかない。

俺の一番叶えたい……願う事は、二人で幸せになる事だ。俺はお前が傍に居てくれたら、幸せに思う。

好きだ。俺、お前の傍に居たい。
お前なんだ。俺にとっての良い奴は。
自分に嘘を吐く位、俺の事を考えてくれてたって事だろ？

俺は夢や思い出で終わらせるつもりは無い。絶対に。

だから……逃げるなよ。

貴様は…本当に馬鹿だ…。

僕はお前が言う程綺麗でも、優しくも、しっかりしてもいない。
ただ意地を張ってるだけの奴なんだぞ。
それでも僕は貴様の側に向かってもいいと言うのか？


………貴様の言う事を信じてもいいんだな？本当だと、真実だと受け取ってもいいんだな？

僕はもう、嫌なんだ。
あんな思いをするのも。
貴様の…面影を探すのも。


貴様の願い、僕が叶えてもいいんだな？
貴様と同じ方向を向いていてもいいんだな？

……僕は、僕は貴様と共に歩んで行きたい。
逃げたくは、無い。

それはお前の考えだろ。お前が俺の事を馬鹿って言うように、俺にとってお前はそういう奴なんだ。
良い奴の傍に居ろ。……そう言ったのは誰だ？

……俺はまた迷ったりすると思う。お前の事、傷付けたくないのに傷付けるかも知れない。でも立ち止まったら後悔する。今まで以上に辛い思いをする。
やっと分かったんだ。自分に、お前に嘘を吐いたって何も変わらないって。どっちも辛くなるだけなんだって、やっと気付いた。

信じてくれなんて無茶な話だよな。俺は何度もお前を裏切ったから。
……自分を憎しみ続けるのは終わりにする。
そして此処に誓う。俺はこれから自分を信じる。自分を信じて、お前を信じる。

俺を変えてくれたのは、紛れも無くお前だ。

一緒に行きたい。
お前と歩いて行きたい。

お前の願いを俺が叶えられたら幸せだ。
必ず叶える。必ず。

人の挙げ足を取りやがって。
……勝手にそう思ってろ。
僕は貴様のその幻想が壊れても知らんからな。

迷うなら迷えばいい。
傷付けるのなら傷付ければいい。

それでも僕は貴様を……信じる。


この僕が信じてやると言ってやるんだ。
必ず願いを叶えてもらうからな。

もう此処は見てはいないだろうからな。
ふん、好きに話させて貰うか。

最近僕達の距離は変わった……のか？
ふむ、前よりは縮まったと言うべきか。

その分、まぁその、何だ。不安が付きまとうんだ。
僕は僕でいられているのか、僕は人が変わり過ぎてはいないか？とかな。色々考え込む。

と言うか、僕はお前を喜ばせられているのだろうか。
思い返せば……まぁ、いい。これ以上女々しいのは僕らしくないし性に合わん。


直接は言えないからな、此処で。

早く…お前に会いたい。

縮まった。……って言いたいんだけど、やっぱりコレは我儘になるか？
……不安だけど言いたいから言うし何より幸せだなぁって思ってるからこの気持ちに嘘は吐けない。
縮まっただろ？絶対に。

…………へ？好きな奴の色んな表情とか意外な所を見れて、嬉しくないって俺が思う訳ないじゃないか。
言った事無かったっけ？俺がお前の事、嫌いになる事は無いって。例えどんな事があっても、好きだって気持ちはそう簡単に変わるものじゃないさ。
……って云うか俺のお前が好きだって気持ちを軽く見るなよな！
軽く見られたら、お前が俺にしてくれる事とか言ってくれる事とか、一つ一つにいっつも喜んでる俺が馬鹿みたいじゃないか。……単純なのはもうこの際認めるけど。

俺はもう自分を隠す事止めたからなー。
何処でだって言えるぞ？

お前が大好きだ！！

………………まさか部屋から追い出されるなんて思ってもみなかった……。
あのまま一緒に寝れたら良かったのに。あ、それじゃお前が重たい思いするだけか。
まともに看病も出来ないんじゃ追い出されても文句言えないな……。

っな！？お前見てたのか！……あぁ、くそ。まぁ、いい。

あぁ、そうだな。僕達の距離は縮まった、な。確実に。ふん、互いに不安がるとは情けないな僕等は。

………ッ恥ずかしい奴だなお前は！
だが、僕の行動が違和感が無い。寧ろ喜んでいるのなら、嬉、しいとは思う。

ッ叫ぶな馬鹿！相変わらず恥ずかしい奴だな。場所を考えろ、場所を。僕は絶対に言わんぞ。

………あぁ、あれには僕も驚いた。
投げ方が凄まじいくらい豪快だったな。見ていていっそ清々しいくらいだったぞ。
流石はアイツの妹だな。

お前はいつでも寝ているだろう。いつかそんな時もあるんじゃ無いか？……ふっ分からんがな。

え。じゃあ、見ない方が良かったか？
だったら酷いぞ。俺は何処でだってお前と話したいって思ってるのに。

何て言うか……大切な奴が関わってるのに、ずーっと強いままで居れる奴なんてそう居ないんじゃないか？
お互いに良さも悪さも情けなさも分かり合って生まれるだろ？特別な感情とか関係ってさ。

恥ずかしいと思う事なんか一つも言ってない。これが俺だ。恥ずかしくしてるのはお前だろ。
俺だって嬉しいんだ。色んなお前を知れたら。

だから全然恥ずかしくないって！言いたい事言って何が悪いんだよ。
……………別に良いよ。今はアレだけで凄く幸せだから、無理矢理言わせようだなんて考えてない。

清々しいって……痛い思いしたのに……。
似過ぎてて、怒鳴られたり睨まれただけで動けなくなる俺って一体……。

…………え……。
……えーっと……こう云うのを何て言ったっけ……。
…………あっ、そうだ、夜這いだ！
じゃあいつか夜這いする！

いや、別に見るなとは言わんが…見られるとは思ってはいなかったんだ。
何だ、あれだけじゃお前は足りないのか？

ふっそれもそうだな。たまにはいい事言うじゃ無いか。良し悪しも全てひっくるめ、だな。というかお前の場合は情けなさが大半なんじゃないか？

別に僕が恥ずかしくしてはいない！元を作っているのはお前だろうが。僕を知って行ってお前がどう思うのか見物だな。

ふん、別に言うなとは言って、ない。あぁ、もうお前に言っても変わらんか。
明らかに拗ねているだろう。本当は言って欲しいんじゃないか？

蛇に睨まれたカエル状態だな。体に刻み込まれてるんだろ。反抗すれば何倍で返って来るか分からんからな、あの女は。

違うわ、この馬鹿が！明るく断言するな！しなくていい！というよりするな！

俺はどれだけ話してもお前が足りないよ。どれだけ話したって、どれだけ傍に居たって、もっと欲しいって思う。
……し、仕方無いだろ？

うっ……！！
容赦無いなぁ……情けないだけの奴は嫌だとか言われたら、頼りになる奴だって言って貰えるまで余計にがむしゃらに突っ走るしかないじゃないか。

なっ……俺の所為にするなよ！俺は自分が言った事に恥ずかしいとか思った事無いから、俺に責任は無いからな！
………………それって、これから色んなお前を見せてくれるって事か？

じゃあこれからもずーっと言う。お前が嫌だって言っても言う。言いたくなったら直ぐに言う。
いや、別にそんな事は無いけど……無理矢理言わせて言って貰っても、お前は嫌な思いするし俺は悲しいって思うから、良いんだ。幾ら自分に素直になるって言ったって、こればっかりは我儘とか言いたくない。

倍返しって、本人も言ってるから、な……。
文句言わない方が良いって分かったんだ。
……分かってるのにたまに言い返して酷い目に遭うけど。

え、何でだよ！！
しかもバ………………いーやっ、絶対するからな！！
今決めた、絶対にする！！
馬鹿って言われても情けないって言われても、何て言われようとしてやる！！

ふん、ならせいぜいお前が少しでも満たされる様言葉を交わすか。

まぁ、お前はそこそこ頼りになる。…なんてな。これでも頼りにはしているんだぞ？

おい、言葉には責任を持て。言霊という言葉があるくらいだからな。
見れるかどうかはお前次第だな。僕は知らん。

二度と口が開けない様にしてもいいのなら自由に言え。僕一人が恥ずかしい思いをするのは、割りに合わん。
お前はたまに引きすぎるくらい及び腰だな。そこは我侭を通しても別にいいとは思うが。…ふっ、言うかは別としてだがな。

学習能力の無い奴だな。あいつには無駄に逆らわん方が無難だぞ。勝てる訳が無いからな。

勝手に決めるな！おい、僕にも拒否権という物を与えろ！というか何処からそんな言葉を覚えて来たんだお前は！

……！ああ！
って、何か無理させてるような気がして来た……ま、まぁ、気の所為、だよな！
そういう事にしとく！

ッ……ど、どうしたんだ？急に。いや、嬉しいんだけど急に言われると、どう反応したら良いのか……。
………俺もお前の事、頼りにしてるからな。

結局、お前が恥ずかしい思いしたくないだけだろ。じゃあ責任持つからお前が恥ずかしいと思っても何でも言う事にしとく。
頑張るから任せとけって！

言いたい事言えずに我慢し続けるなんて俺は嫌だ。それに何だかんだ言ってお前はそんな事しないってちゃんと知ってるから、悪いけど言いたい事全部言う。
我儘言わなくてもいつか自分から言って貰うんだ。お前が俺みたいに何でも言葉に出来るような奴じゃないって分かってるから、余計に。

……ハハハ……やっぱり、そう思う……？
お前でも勝てない相手なんじゃないか？

もう決めたからぜーったい譲らない。やると言ったからにはやる！
何処でって……確か本、だったけ。面白くなさそうだったから途中で読むの止めたけど。一緒に寝るって意味なんだろ？

ふん、嫌なら即刻止めている。別に嫌では無いから気に掛ける事じゃ無い。

ん？別に僕の本音を言ったつもりだったが。嫌なら止めるが？
頼られても僕は放置するかも知れんぞ？

あぁ、もう勝手にしろ。お前は一度言い出すと何があろうと止めないからな。
なら、任せておくとするか。期待しているぞ？

………好きにしろ。止める方法も思いつかん。
ふん、いつ言うか僕は知らないぞ？一生言わなかったりしてな。

僕があんな女に負ける訳が無いだろう。一緒にするな。……あれを持ち出されたら、いや、考えるのはよそう。

……お前、意味分ってて話してるのか？まぁいい。僕は一人で寝る。お前は床ででも寝てろ。

……分かった。一応気にしない。気にしてもしなくても、話したいって気持ちに変わりは無いし。

やっ、止めなくて良い。嬉しいから驚いただけだ。
んー……俺が勝手に頼ってるだけだから、その時は仕方ないよ。

へへっ……大好きだ！
離したりしないからな。

何だよ、そのあーもうどうしようもない奴は放っとこうみたいな言い方は。
……あ。って事は、一生一緒に居てくれるんだ。

え、けど、お前だってよく…………アレ？アレって？

失礼だな。分かってるから言ってるんだろ。
嫌だっ、一緒に寝る。
一緒に寝てくれないならお前が寝てる内に勝手にベッドに入る。

驚くものか？別に何も言ってないだろう。
じゃあ放置して置くか。いらない様だしな。

ふん。……別に僕も嫌いじゃ無いぞ。
頼むから寝る時くらいは離せよ。

何だ、よく理解してるじゃ無いか。
ふん、どうだろうな。いつの間にかいなくなっていたりしてな？

僕だって、何だ？……口にするのもおぞましい。

疑わしい物だな。じゃあ説明してみろ。
……だだをこねる子供かお前は。ほう…実行した暁には部屋には二度と入れない事にしてやる。

……自覚してないから俺が喜ぶような事言ってくれるんだろうけど、自覚して欲しいような……して欲しくないような……。
あのなぁ……要らないなんて誰がいつ何処で言った？

お前の嫌いじゃない、は好きって意味だもんなー。
御免っ、多分無理！

ちょっとは否定しろよ。せめてちょっとは。
…………怖い事、言うな。頼む。

おぞましいって……だから何の事だ？俺には言えない事なのか？

一緒に寝るの他に何の意味があるんだ。
子供じゃない。子供じゃなくても好きな奴と一緒に寝たいって思うのは至って普通の事だろ。
……そんなに俺と寝るのが嫌なのかよ。

……どっちなんだ。しろと言われてもどう意識したらいいのか分からないんだが…。
なら、欲しいのか？

ち、違う！誰がお前何か！
おい、否定が早くないか？少しは考えろ。

なら、取り敢えずはという事にしておくか。
ふっ、冗談だ。僕がそうだと言うのならとっくの昔にいない。

拗ねるな馬鹿。……少しならいいぞ。少しだからな。

返事も無い様だしな、此処を見ているか分からんが。

最近余り逢えてはいないな。
僕のせいもあるにはあるんだが……どうも心配でな。
お前に何かあったら困るんだ。
分かるか？はっきりとは言わんから、汲み取れよ。

ふん、どうもお前に逢えんと調子が狂うらしい。…僕らしくも無いな。

だが、無理はするなよ。それは一番困るからな。


何だかしまりの無い文になってしまったな。
まぁ、いい。体には気を付けろよ。

ここ二日間、お前に会えていないな。

また宛先の事故なのか………また、お前に何かあったのか。

無理をして欲しくは無いからな、急かすつもりは毛頭無い。

ただ、まぁ何だ……寂、しいだけだ。
ッ煩わしい。
こうなるのもお前せいだからな。

早く姿を見せろ。
無理をしていない時にな。

お前からの手紙が来なくなって、二週間か。
腑甲斐無いな。

確認の手紙の返事が無い。
お前の姿が見えない。
まだ……二週間だと言うのにな。

全くもって馬鹿だ。
馬鹿なのはお前じゃない。
僕自身だった。

直接は言いたくは無かった。
いや、言えなかった。

待つ事が…耐えられ無くなってしまったんだ、僕は。

此処は見てはいないと思う。
だから言葉を残させて貰おう。

最後まで甘える事も、素直になる事も、すがる事も出来ずに、ただ意地を張る事しか出来なくて…悪かった。
支えになれず、すまなかった。

…………僕の願いは、口にはしない。
お前なら分かってくれると、信じている。


長くなったが、これで終いだ。

じゃあな、僕だけの英雄。

此処は見てはいないだろう？存分に……ハッ、そんな身分でも無かったか僕は。

ふと、お前を思い出す。
ふん、自分から切っておいて何の話だ。と思うだろうが。

元気にしているか？
また、無意味に自分を責めているんじゃないだろうな？

あれはお前のせいじゃない。
全て僕のせいだ。
だから気に止むな。
僕の事……忘れてしまえばいい。
あの、お前は嫌がったが此処に置いた歌の様に。

僕を責めたらいい。
僕が全て悪いんだからな。


叶えられなかった夢……いつか果たせたらいいな。互いに。
例え……それの相手が違おうとも、な。

チッ、未練がましいとはこの事だな。
僕達が出会った場所は、もうすぐ消えるな。想い出の場所だったが致し方あるまい。
だから早く幸せにな。

行く先に、幸あれ…

今先程送れば、宛先不明で戻って来た。僕はどれほどお前を傷つけて来たんだろうな。…今となっては知る術も無いが。

僕は……お前に偽りの姿しかさせれなかったのだな。
僕はいつも僕らしく、僕の姿でいようと、あるがままであろうとしてきたつもりだったし実際にそうしてきた。
だが僕はそうする事で今まで気付けていなかったんだな……お前が繕っているだなんて、分かってやってはやれなかったんだな。


…繕わせるしか無かったのか？繕わずにそのままのお前ではいけなかったのか。僕は、それ程までに頼りなかったのか？

何故取り繕う必要があった。傷ついたのならば、素直になれはしなかったのか。僕がそれだけでお前を嫌うとでも思ったのか？！

……そうは言った所でお前には幸せを感じさせは出来ないんだったな。何処にも、どうしようと与えられないんだな…僕は。

傷付けるだけ傷付けてきた僕なんだ。…今更、虫が良すぎる話だ。そうだろう？

ただこれだけは知っていてくれないか。僕は拒んだつもりも、何も無い。お前に強く居続けろと強いたつもりも無かった。
僕なりに側に、隣に立とうとしていたつもりだった。ふっ…結局は"つもり"だったんだが。どうしようもなく愚かしい。

……すまなかった。今回の僕の身勝手でまたお前を傷つけただろう。悪かった。
気付く事も何もしてやれず、すまなかった。

僕を嫌ったままで構わない。そのまま消し去ってくれればいい。

ただ、感謝を此処に述べる事を先に謝罪する。


今までで初めて感じた、楽しさ、嬉しさを有難う――スタン

僕はあの日までは起きていようとは思っていたんだが……あの日は僕一人では意味が無い。だから僕はもう眠る。
全てを胸に、夢と現実はお前を最後に…。


思い返せば僕等は背中合わせで居て、片方が振り向けば片方が前を向いて居て、片方が前を向いた途端片方が振り向く。
そんな奇妙なタイミングで出来た、面白い合わせ鏡だったな。
それが酷く歯痒く、楽しくもあった。

幾度と廻り会っては離れる僕等は、端から見ればどんな姿だったんだろうか。ふん、互いに無器用だと笑われるか。

だが、この歪で無器用でがむしゃらなのが僕等だった。
誰が何と言おうと、誇りこそすれ、辛い等と思う物では無い。
……その様に嘆く事があるならば、あの日を共に過ごせぬ事くらいか。まぁ、呟いても何も始まらない。出直すとするか。


……僕もそろそろ本当に眠りにつくとしよう。
もしも万が一目覚める事があるならば、それはスタン。お前にしか無理だ。
僕はそれ以外では起きる気は毛頭無い。
一応……言っておく。

さて、夢でも見るか。ゆっくりと、目を閉じながら。

………おやすみ、僕の英雄、スタン・エルロン。おやすみ。良い、夢を。