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1 Swords

宛てない手紙。

――もう、こんな時間か…。
書いては丸めて捨てて、書いては丸めて捨てて。
ゴミ箱から紙屑が溢れてるんだけど。
これ全部、僕が片付けなきゃならないわけ?
しかも燃えるゴミって今日じゃないか。
寝てないのに、これからやれって事?

……もういい。
詩を書くわけでもないし、今は上司でも何でもないんだから、
言葉なんか飾らなくたっていいだろ。


頭が痛くなるくらい君の事を考えてる。
どうしたら君を傷付けずに、これだけの気持ちを伝えられるのか、
こんなにずっと考えてるってのに、一向に答えが出ない。
ほぼ毎日一緒に居るのに、全然伝え切れてない。
今だって苦しい。涙が出そうになるくらい、苦しい時だってある。
だからって離れたいなんて思えないし、離れる気なんかない。
もしかしたら、この気持ちが全部君に伝わったって、
苦しくなくなったりはしないのかも知れない。
それでも別に、君にどうにかして欲しいわけじゃなくて
ただ、

ただ…、君に…会えて、声が聞けたら、

ほんの少し触れてくれたら、それで十分過ぎるくらい、
満たされる…し、嬉しいと…、思う…。


……少しは、落ち着けた気がする。
紙とインクと時間を消費した甲斐は、あったかもね…。

この名前なら、分かる可能性の方が低いんじゃない?
気付かなくてもいいし、万が一気付いたとしても、
気付かなかった事にしたっていいよ。

気が済んだから、僕はもう寝る。
じゃあね、おやすみ…。
2 sickle
……馬鹿が。
「お前」の言葉がわからないほど、鈍くはない。
名前のせいで確証を持てなかったのは、認めるけど…。

毎日の時間を共に過ごしていても足りていないのは、此方も同じだ。
……「おやすみ」を告げたその後に、お前の寝顔を見つめていてすら、もっと声を聞きたいと思うし、もっと触れたいと思う。
贅沢な話なんだろうがな?
お前の気持ちを知ったところで傷付く筈なんかない、と断言したいところだけど、それでも躊躇うと言うのなら、幾らでも待つ。
待つのは得意なんだ。知ってるだろう?
……とうとう「離れない」と言わせたんだからな。
これからも全力で待ち続けるし、構い続けるつもりだ。
寂しいとか足りないとか、一人で抱え込んでいるなどと、ゆめゆめ錯覚しないように。


追伸:公開処刑もほどほどにしてくれ……。
3 Swords
(1/2)
タロットのSwords。
元素に馴染みがあったから…深い意味なんてないけど、何となくさ。
君こそあからさまというか、単純というか…
取り合えず名前が何であれ、間違いなく君だって事は
その偉そうな冒頭からして丸分かりだから、特に問題はないよ。

……幾らでも待つ、か。
そんなのは君が決める事だから、断言も後悔も撤回も、好きにすれば良い。
そう、言いたい所だけど…僕が"それ"を言うまで、本当に年単位で待つなんてね。
君こそ、馬鹿じゃないの?

何度も、考えた。
僕じゃ駄目だ。君にはもっと、相応しい誰かが…って。
だって僕は、君とずっと一緒に居る気なんてなかったんだから。

自分で歩くと決めた道を、踏み外す様な真似は出来ない。
そしてその道に、君を連れては行けない。
かといって歩く事を止めてしまえば、君の瞳を二度と見られなくなる。
君の前で、背筋を伸ばして立っている事すら出来なくなる。
顔向け出来ない、っていうのかな。
そんな風には、僕自身が、なりたくなかった。
……恥じない自分で在りたかった。
僕にとって「離れない」って言葉は、
その「なりたくない自分」に、直結するものだったから。
そう簡単に頷くわけには、いかなかったんだ…。

何もかも忘れて、君と過ごせたら…
それはどんなに幸せなんだろうって、考えた事もあった。
……自分が弱くなっていく気がして、ずっと…、怖かったよ。

だから何時かは、君から離れる。
そう思いながら、黙って一緒に歩んできて…。
――あの日、まで。
4 Swords
(2/2)
……はぁ…。
あんなに欲のなかった僕は、何処に消えたんだか。
離れたりなんか、もう出来やしない。
1日会わないだけでも、君の気配を探してしまう。
頭の中から君が出て行ってくれない。
本当に厄介で…どうしようもない。
それを全く嫌だと思わない僕が、一番どうしようもないのかも知れないけど。

まぁ、これから先も実際に戦になったら、君一人になんか構っていられないし。
自分の身くらいは自分で護ってよね。
離れるな、なんて言っといて……勝手に死んだりしたら、承知しないから。
嘲笑われたくなければ、死ぬ気で生き残って、僕の傍に戻れ。
僕からの要望は、現時点では…そんな所かな。

何処まで行けるか…ちゃんと、見ていてよ。
僕も見ていてあげる。最後まで…、ずっと。
寂しいとか足りないとか、一人で抱え込むなんて御免だからね。
大体そんな錯覚をするわけがない。
君がさせてくれない…、そうだろ?


追伸:
ふぅん、そんなに苦手なんだ。でも却下。
理由?そんなの、僕が嬉しいからに決まってるじゃないか。
…自分の中に在るものを整理する目的も兼ねて書いてるから、
無駄に長くなった事だけは、先に謝っておくよ。
5 sickle
単純で悪かったな。
お前こそ、その偉そうな物言いを如何にかしたらどうなんだ。
ついでに、馬鹿って言うな。

……感情に反比例して、言葉が出てこない。
伝えたい思いは山ほどあるのに、伝えられる言葉が出てこないんだ。
昔も、こんなことがあったな。
覚えてるか?
お前に初めて噛み付かれた後のことだ。
器用な方ではない……と、いうか、不器用だし、鈍いから、お前にはいつも辛い思いをさせていると思う。
一応、その自覚はある。
もっと相応しい誰かが、なんて、こっちだってもう数えきれない程思ってる。
正直、今でも。
それでも、手離したくないのも本音で、我ながら醜いと、思う。
他の誰かの方が、お前を幸せに出来るかもしれない。
だけど、お前を幸せにするのが他の誰かだなんて、きっともう耐えられない。
もう……否、きっと、出会って数度言葉を交わしただけで、無意識にそう思っていたんだ。

だからこそ、望みはすべて伝えて欲しいし、我儘は全部叶えてやりたいと思うんだ。
必死なんだよ、これでも。
俺の、全部なんて…――とっくに、お前のものだ。
6 sickle
一晩。
たった一晩がこんなに長いとはな……。

早く、声が聴きたい。
7 Swords
此処で先に馬鹿って言ったのは、そっちの癖に…。
何で僕が、ついでなんかでそんな事言われなきゃならないのさ。
……まぁ、どうでも良いけど。

君が鈍いのは、出会ってから数回話した時点で気付いてた。
分かってる事に対して別に辛い思いなんかしないし、
今でも十分鈍いけど、偶にうんざりするくらいで
それを全部直せなんて言った覚えはない。
君が「そう」なんだから、それでいいよ。
そのままで。

最近は特に、望みなんて…伝えないうちから、叶えてくれてるから。
――15日に残してくれた、一言…も。
僕は何でもない顔をして、何時も通りに君の待つ部屋へ戻るだけだけど。
だからって、会えない日に、何も思わないわけじゃない。
…そんなわけがない。
言わなくても通じるだとか、そんな甘い事を考えてるわけでもない。
ただ、君が求めてくれるから、応じられる…そんな風に、
甘やかしてくれる所に、甘えてる自覚は、あるんだ。これでもね。
例えば、今夜も。
偶に会えない日に、何をしていたとしても。
応じられるって確信したから、僕は約束したじゃないか。
信じろとは言えなくても、これだけは言わせて貰うよ。

君から、離れない。
君が何処に居ても、僕が何処に居ても、それは変わらない。
あと、君じゃなきゃ嫌だし、声だけじゃ足りない。

次に会えた時は、覚悟…しておいてよね。
8 Swords
言いそびれた…から、
此処で。

4日で、良いのかい?
僕は構わないけど、だって4日は…――


君の温もりを感じながら、このまま、眠りたい…。
でも、出来ない。
癪だけど、体調管理くらい確りしろって言われても、仕方ないかも…ね。
9 sickle
……参ったな。
気が付かれていないと思ったのに、知っていたのか……。
図々しいにも程があるけど……まぁ、そういうわけだから、出来れば……その日に会いたい。

と、いうか、返事を書こうとする度に、先を越されるな。
実は何か特殊能力でも持ってるんじゃないだろうな?
声だけじゃ足りないのには同意するけど、余り贅沢は言わないことにする。
殆ど毎日会えているだけで十分に贅沢だろう?
それでも足りないなんて……どれだけ我儘なのかと自分に呆れる。
だけど。
……お前も、少しでもそう思ってくれているのならば、嬉しい。
10 Swords
特殊能力なんか、持ってるわけないだろ。
僕が持ってるのは…
――本当に僕のものだって言えるのは、少ないかな。
君への気持ちは、その中の一つ。

普段、「仕方ない」って、よく言うけれど…
本当に拒みきれないのは、君じゃない。
僕の中に在って、子供みたいに君に手を伸ばしたがる…厄介な感情だよ。

どうか…この想いが、
君を傷付ける事のない様に。
だってそんなの、僕が嫌だからさ。


――…好き。
ねぇ、今夜は…

僕が目を覚ますまで、
離さないでいてよ。
11 sickle
前言撤回。
馬鹿はこっちだ。
贅沢は言うまいと言ったこの口で、
お前を酷く傷つける言葉を吐いただろう。
一分でも一秒でも早くお前の声が聞きたいと思うのは確かだが、
その感情が先走る余りにお前を傷つけるのは本意ではない。
……贅沢に満足を覚えることはないらしいな。

多分、お前が考えているより、
お前のことを……その、想っているということだけは、
此処に書き残しておく。
枕がないと安眠出来ないからな、
離さないのは当然だ。


追伸:そろそろ秋桜の季節だな。
12 sickle
――約束、というほど大したものじゃないけど、少しずつ慣れると言った手前……努力をしていることだけは伝わることを願う。

感情を伝えるには情けないことに語彙が……乏しい気がする。
好きだとか愛してるとか、簡単に口に出来る性分ではないし、
毎度毎度そんなことを言わないとならないのかと思うと、
少しばかり……気が滅入る。
第一、似合わないだろう?

取り敢えず今は……眠れそうにない。
悪い意味ではなく、な。
このままずっとお前の寝顔を見ていられたらと思う。
まぁ、そのうちいい加減に起きろとか勝手なことを思うんだろうけど。
眠るのが惜しい。

おやすみ……良い夢を。
13 Swords
そんな事で前言撤回されても、嬉しくないんだけど。
君が思う程、僕は軟弱じゃないからさ。
傷付いてなんか居ないよ。見くびらないでよね。
だから、これからも…迷わずに言ってくれたら良い。

…謝るべきは、僕の方。
でも、謝罪の言葉だけを繰り返すよりも、君に伝えたい事は他に沢山ある。
そして伝える手段は、言葉だけじゃない。
これから…まだ、僕達には時間があるだろう?
焦って無様な姿を晒すのは、御免だからね。
少しずつでも、応えていきたいと…思ってるんだ。

秋桜が咲いてる場所を見つけたら、…連れて行って、くれるかい?
君と見たいから。

あと、何か君、最近隈が出来てない?
ちゃんと寝てるんだろうね。
体調を崩したりしたら、また苦い薬を飲んで貰うよ。
苦いのは嫌、なんだろ?
くれぐれも、体調管理には気を配る様に。
…まぁ、これに関しては、僕も。

少し、風が冷たくなった。
湖を渡る風は、熱くなった頬を冷やすのには最適だけど…。
そう何度もそんな台詞を気軽に吐かれたら、僕だって困るんだよ。
君の言う通り、似合わないしね。
眼差し一つでも触れてくる温もりからも、十分過ぎるくらいに…感じているから。
きっと…
この気持ちの事を、ひとは幸せと呼ぶんだろう。

ねぇ、…ああ、此処では名前は呼べないんだっけ。
僕はひとじゃないけど…
生まれて来られた事には、感謝しているよ。

だって、君と、会えた。
14 sickle
ありがとう。
今日、会えて良かった。
15 Swords
…はぁ、全くもう。
君にはいつも、嫌でも自覚させられる…。
君の背を見送りながら、僕がどんな気持ちでいたか。
絶対に…教えてなんか、やるもんか…。

らしくないって、笑われるかも知れないけど。
…――おめでとう。
今日という日に、祝福を。それと…、
君の生に感謝を。

…ありがとう。
16 Swords
今日のうちにまた会えるって、分かってるのにね。
…少しだけ。

最近、甘えて…ばかりで、…その、
だから、……ごめん。
離れてから気付く程、馬鹿にはなりたくない…。

前から話してる計画の事だけど、あそこで会った日から数えて三年を迎える前…位までにはどうかって、考えてるよ。
でもそれが難しければ、別にいつだって良い。

その計画が現実になるのを思うだけで、
……泣きそうに、なる…なんて。
言ったら、笑うかい?

いつから、こんなに…

昔…ヨメにしてあげても良いって言った時、君には、姑が怖いから遠慮するって断られたっけ。
僕の師を姑呼ばわりしてくれた非礼は、はっきり覚えてるけど、今はまぁ…置いておくとして。
あの頃はもう、とっくに惹かれてた事…鈍い君は、気付いてなかったんだろうね。

ああ…、つらつらと書いてたら、もうこんな時間じゃないか。
少し経ったら、君に鳩を送るから。
それじゃ、後でね。
僕の、

ぼ…、僕、の……

――何でもない…!
17 sickle
何故謝られるのかが、わからないんだが?
大体、お前が少しでも甘えるようになるまでに、どれくらい辛抱したと思っているんだ。
大人しく甘えておけ。
迷惑だなんて微塵も思っていないし、まして離れるだなんて、寝言は寝てから言うんだな。
ああ、寝言で言おうとしても、その口を塞いでやるけど。

それについては、此方も同じように考えていた。
厳しいのは此方の方だけど、何とか実現したいと思う。
泣きそう、にはならないけど……待ちきれないのは同じだと思う。

鈍くて悪かったな……図星だよ。
だけど、お前だって、俺がお前のことを気に掛けていたなんて、知らなかっただろう?
お互い様じゃないか。
……何を言いかけたのか知らないけど、ヨメはお前だろう?
まさか、否定なんてしないよな。
18 sickle
最近の夜は冷え始めてきたから、お前が風邪を引かないか心配だ。
ただでさえ、お前の体力値は頼りないからな。
……あたためてやるから、しっかり寄り添うように。


俺はお前の為に何が出来るだろう。
己のいたらなさをもどかしく思うときもある。
一つだけ、確かに言えることは。
お前が少しでも喜んでいたら嬉しいし、お前の微かな笑みが見られただけでも幸せだと思っている。
……その…お前は、特別だから。


おやすみ……愛しい―――。
夜が、明けたら、また。
19 Swords
……頭が、痛…い。

この言葉は、君を、
傷付けるだろう。


君に……喰われたい。

それでも、傍……に…
20 sickle
…――傷付いた、と言えば満足なのか?


お前はそれなりに望みを口にしてきた。
言葉として紡がれた望みがお前の望む全てだとは思わない。
だから「それなり」だ。
俺はいつも我儘を言えと言ってきたのだから、それで良いと思う。
お前が何かを望む度に、大半のことには俺は応えてきたと思う。
中には無理なこともあっただろう。

俺は、俺が応えたいから大丈夫だと言ってきた。
お前が欲しいからお前の望みなら全て叶えたいと思った。

互いに不安を告げる夜もあっただろう。
それでも俺は、少なくとも今はお前が俺を求めてくれているのだと思っていた。
此方の口数が少ないことは申し訳なく思う。
伝え切れていない己の責任でもある。
…――だが、この段になってまで、こんなにもお前を求めていることが、確認されなければお前に確証を与えられないとは、情けなさを通り越していっそ涙が出てくる。

嫌だから苦しんでいるんじゃない。
お前が好きだから苦しんでいるんだ。

……俺は…お前に我慢して「もらって」この場所に立っているのか?
――……ハハ、情けないにも程があるな…。


傷付いたというなら己の未熟さ故だな……自業自得だ…。
お前が本当に、使命も全て投げ打ってでも喰らわれたいと言うのなら……――その時は、喰らってやる。
この闇は、お前を決して逃がさないだろう。
21 Swords
――君の、幻を見た。

目を閉じても、瞼の裏から消えないんだ。

君の瞳の…赤、だけが。

…僕は、僕のままで、
君の傍に…居たい。

甘える事は難しくて、
何年経っても、上手く出来ないけど…


今の望みは、
たった一つだけ。

僕一人じゃ…叶えられない。

抱き締めて、…眠らせて。
もう…


君が居ない悪夢は、
見たく…ない。
22 sickle
なんだ、「枕がいなくなるな」と呼び出されたのかと思えば。
生憎、お前の夢の内容にまで責任は持てないな。
ただ…俺が傍にいることでそんなくだらない夢を見なくて済むというのなら、いくらでも。

腕枕でも抱き枕でも、お前の好きにしたらいい。
…――いつでもお前の傍にいる。
23 Swords
一言だけ、君に。

…――何処にも行かない。

それだけ。
じゃ…、おやすみ。
24 sickle
…――寝ても覚めても
お前のことばかり考えている

末期症状だな…
25 ルック
やけに良い天気だったから、何となく気が向いた。
そもそも、別に伏せる必要も無いしね。

昨日は…ありがと。


例えば。
…戦が終わって、また君が旅に出るなら、僕は黙って見送れるだろうか。
同じ空の下に君が居るだけで、…それだけで良いと、今でも思えるだろうか。

並んで歩く道は、いつか、何かに隔てられる日が来ると思うかい?

今は、今はと…現状に甘んじてばかりで、離れないって言葉をどうしたら本当に出来るのか、時々考える。
…時々、ね。

共に在るだけじゃ、駄目な気がするんだ。
…考えて考えて、疲れても分からなくて、自分がどうしたいのかさえ…見失いそうになる時もある。

何度も、人形に戻りそうになる情けない僕を、君だけが知ってる。

知ってる癖に離れない君を、僕は、その度に思い知る…。


……そろそろ行かなきゃ。暇じゃないのは、ある意味助かってるよ。
今夜も僕が帰る頃までには、暖炉に火を入れておいてよね。

鈍い君は、暖かい部屋より何より望んでるものなんか、口に出さなければ気付きもしない。
そんな時の、不思議そうな顰めっ面見てるの…わりと好きなんだ。
言わないけどさ。

それじゃ、また夜に。
26 sickle
手を離したくなったら、そうしてくれて構わない。
俺が今言えるのは、お前からそうされない限り離れるつもりはないということだけだ。
行く手を阻まれたら、乗り越えるなり迂回するなりすれば良いだろう?


次は三本目。
今年は四本目を灯したらすぐにクリスマスだな。
アドヴェントクランツの蝋燭をすべて灯すまでには、お前に似合いのプレゼントを用意しておこう。


余談。
此方から日付を指定するのは少々緊張したが、空いていて良かった…空けてくれて有り難う。
27 sickle
1883100

今日に限って…。
お前にやる、おめでとう。
28 Swords
部屋を暖める暖炉の、炎の明るさも。
増えていく蝋燭の、柔らかい灯も。
煩いだけだと思ってた、この季節特有の、
華やかな飾りの数々も。

今は煌めいて見えるのは、何故だろう…?

君が…居ないと、
…全てが色褪せる。

錯覚なんかじゃなくて、
これは事実だからね。
認めるよ、…仕方ない。

もっと見ていたいんだ。
綺麗なだけじゃない、この世界を…

君と、一緒に。


…今日は、ありがと。
ゆっくり休みなよ?

おやすみ。
29 sickle
……信じて良い、のか…?
30 Swords
昨日は少し疲れてて、部屋に転移する余力がなかっ…
…勿体なくてさ。
鳥を飛ばす前に、寝ちゃったんだ。
余計な心配をかけたようだね、……ごめん。
大丈夫だから。
信じる信じないは君の自由だけど、会えるなら、今夜…待ってる。
31 sickle
……結局おちおち眠れなかったわけだが。


「送った鳥には必ず返信を持たせること」とはお前が言ったことだったよな?
俺はすべての鳥に返信を持たせろとは言わない。
だけどせめて、送ると言った物を送らなかったり、中途半端に途絶えさせることについては少しばかり考えててもらえないだろうか……?
少しは待つ方の身になって考えて欲しい……それだけだ。
送れそうにないのなら、そう一言寄越すだけで良い。
それさえも送れない状況というのなら、まぁ仕方がないが。
一度だけではなく、過去にも何度か繰り返されていたからな……苦言、かもしれないが、聞くだけは聞いて欲しい。

俺達の遣り取りにはそもそも鳥は使っていないのだし、鳥を使って反って不具合が生じるのでは、本末転倒じゃないか?
こういう言い方をすると、またお前はもう送らない方が良いのかなどと言い出しそうだが、そういう意味では断じてない。
……俺も人間だってことだ。


せめて、お前がよく眠れたことを祈る。
32 sickle
何度目かの雪景色。
そういえば、今年はまだ二人で雪を見ていなかったな…。

夜は冷え込むのが難点、か。
33 Swords
雪が降ってれば、昼間だって寒い。
汗掻くよりはマシだけどさ。

寒いのなんか、慣れてた筈なのに…、

ああもう、寒いってば。
…早く。
戻って…くる時、ついでに薪を取ってきてよね。
あれ、見た目より重いんだから。
34 sickle
お疲れ様と、おかえり。
頑張ってきたみたいだから、ご褒美も弾まないとな。

此方にしたのは…少し、驚かせたかったから。
35 sickle
……あんなに喜んでもらえるとは思っていなかった。
いや、お前の言葉を軽く受け止めていたわけではなく、その…俺の言葉で、お前が喜んでくれることがただ純粋に嬉しかったんだ。
言葉を残すことは苦手だけど……お前が喜んでくれるなら、悪くない、かもしれない。
36 Swords
……!
こんな所に、何度も…ッ
ぅ…、煩いよ…!
喜んだ喜んだって言うけど、君の言葉で僕が喜ぶのがそんなに珍しいわけ?
確かに、あんまりはっきり言った事は、今迄なかったかも知れない…、けど…。
…――とにかく、
もう…何年一緒に居ると思ってるのさ。そんなの、今に始まった事じゃない。
その鈍い頭に、叩き込んでおいてよね…!

全く、君のせいで寝るのがちょっと遅くなっちゃったじゃないか。
まぁ、横になっていたって寝付けない時間を長々と過ごすよりは、よく…眠れそうでは、あるけどね。

それじゃ、おやすみ。
37 sickle
「鈍い頭に叩き込め」って、なかなかの暴言じゃないか?

やれやれ、現実を認めようとしないのはどうかと思うな。
ちょっとじゃないだろ、ちょっとじゃ。
一度現実を思い知らせてやった方がいいみたいだな?

……早く、帰ってこい。
38 sickle
まだ、頭が痛い。
お前の声が聞けたらなぁ、なんて、
少しだけ思ってみたりして。
39 Swords
…一体どうしたのさ。
心当たりはないわけ?
ちゃんと回復に専念してるのかい?
暖かくしてるなら良いけど…食事もしっかり食べないと、治るものも治らないよ。
苦い薬も、見ない振りしてないでちゃんと飲む事。
文句を言ったら、僕がその口に突っ込んでやる。
あとは寝てれば?
それが一番…、
………。

…――さっさと治せ。
君が治るまでは、僕まで……その、色々と、我慢しなきゃならないんだから。


じゃあ、会えたら…夜に。
40 Swords
ほんの数時間前に…、なのに、

今、君の声が聞きたい。

……我儘にも程があるって?
本気で叶うと思ってるわけじゃないから、放っといてよ。

言わせて…おいて。
此処でだけ。
41 sickle
お前…念力で人を起こせると思ったら大間違…ZZZ


数時間前とか関係なく、いつだって声を聞きたいと思ってる。