Write
1 傲慢な獣

愛しい小鳥へ

 
此方に言葉を残すのは敢えて、だ。
向こうじゃ直ぐに気付きやがるだろうしな…其れに、此処は俺に取っては特別な場所になってるらしい。御前の欠片が残ってる場所で、俺が御前に呼び掛けるのも面白そうだったしよ。

一つ、教えてくれ。
御前は今…幸せか?

俺が感じてる幸せと同じ物を御前も感じてくれてるか。其れだけが気掛かりだ。
中毒になっちまってるのは俺の方かも知れねえな。
御前を見る度にハマってる、今にも増して欲しくなる。
厭きられてるだの何だのは何処から思い付くんだ?俺は其処まで薄情そうか。

良い子でなんぞ居るなよ。御前なら我が儘も可愛い。
駄々を捏ねて困らせろ、見返りは御前だけで構わねえから。

もう二度と俺から籠を開ける気は無い。
俺に御前を逃して遣れるだけの度量は無えらしいぜ、情けねえ事にな。
逃げたきゃ自力で何とかしろ……なんて虚勢も今更か。
其の前に、御前の羽根を手折って仕舞えれば良い。

愛してる。
…許せよ。
2 飛ばない小鳥
此処に綴られる等想っても無かった。でも半分は嘘。
ずっと貴方の言葉を待って居たと言ったら貴方を困らせてしまうでしょうか。でも、此処に其れを吐露して居る時点で私は悪い子です。

薄情なんて。
只、貴方の枷に成りはしないかと心配なのです。私は貴方に見合うか否か。私が、煩わしく無いか否か。
聞けずに居ました。
否定される言葉が怖くて、肯定も無い代わりに曖昧な侭を望んだのですから。
切れてしまった細く脆い糸を幾度手繰り探したか、御存じでしょう。故に欲するばかりは私だけと勘違いしてました。


―――在の日迄は。


呼び止められ聞いた言葉に、我が儘と知りながら延ばした指先を捕まえてくれた手が、嬉しかった。
陳腐な言葉でしか言葉を飾れ無い今は未だ伝わらないかもしれ無いけれど。
何時か残した欠片の時の侭、未だ変われずに空を見上げるしか出来ない此の名前が、貴方が問うた答えに成りませんか。
手折られる痛みも愛しさに感じて私はきっと喜ぶでしょう。いっそ食されて餌に成っても良い。
貴方の糧に成れるなら。

沢山言えないけれど、叶えてくれるなら私は貴方の我が儘を聞きたいのです。
此れが私の我が儘。此れじゃ、駄目ですか?

愛しい人。
貴方が私の心の幸いなのですよ。
3 亮司
 
どうやら俺は御前の言葉を見付けるのが天才的に上手いらしいぜ。

見事なタイミングで返事をしたが、向こうの書き込みを見たのは送った後だ。
御前の事だ、書き込みが催促になったんじゃ…なんて思い兼ねないからな。其れで控えられたら堪らねえ。
場所を敢えて此処にしたのは、俺も見付けて欲しいと思ったからなんだろう。文句も言い易いだろ?早く迎えに来い、だとかよ。

不安になってるのは薄々知ってた。なのに曖昧なまま続く関係に勝手に納得して、割り切れると考えたのは俺のミスだ。
信じろなんて言えた義理じゃねえが、切れた糸を結び直した事は答えにはならねえか?

御前が俺に手を伸ばすなら見逃さずに捕まえてやる。御前が逃げる事が有るなら、望み通り全てを俺の物に。
ああ、良い子にしてた御褒美もやらなきゃな。何が良いのか考えてろよ。

御前の我が儘は献身的過ぎる。遠慮する癖は相変わらず…って、最初が最初だけに仕方無えか。
そうだな、なら差し当たり……甘過ぎるのは勘弁してくれ。口移しで喰わせてくれるって話なら、何だって文句は言わねえが。

待たせてばっかで悪い。
只、俺が帰る場所は御前だけだ。其れだけは忘れるなよ。
4 亮司
 
うちの可愛い御人形が好きな俺は、何時も強くて格好良い───らしいな?
だとすりゃ、今の俺は相当御気に召さないだろうと思う。

今に始まった事でも無いが俺の身勝手さは筋金入りだって思い知ったぜ。
此方から待たせる時には馬鹿程待たせる癖、たった半月で心配になるなんてよ……弱気なのは自信が無えからか。柄にも無くて笑えねえ。
毎度こんな思いさせてたんなら、本気で御機嫌取りの方法を考えるべきだな。甘い菓子か、其れよりもっと甘い台詞か。どちらでも御前の望む侭に。

忙しいだけなら良い。
何より大事なのは御前自身だ、空いた時間は休息に充ててくれた方が有り難い。
そう思うと下手に連絡も出来やしねえ。…ったく、何処で何を間違ってこんな女々しい思考になったんだ。万が一にも奴等に知られたら延々揶揄われるかと思うと寒気が走る。

気付いても無理はするなよ。少し、御前に対する感情を持て余しちまいそうだってだけだ。
我が儘を言わせて貰えりゃ、どうしても我慢出来なくなったら逢いに行きたい。其れ位は許してくれるか?

其の間に此処を埋めるってのも面白いだろうがな。
……何時か御前が見た時に笑えば良い。
5 陽気な狐
ひょっとして凄い物見つけてしもうた?
槍でも降りそうな。
天変地異の前触れとちゃうやろか。嗚呼、でも、此れ以上言うと弱々しくて可愛い獣ちゃんに殴られて俺の血の雨が降りそうやから大人しく口閉じとこ。

取敢えず、其のプルプルしてる拳しまいや。何せ、僕ゥ、今日は愛のメッセンジャーやしィ?手荒に扱うの禁止な。―――――なんて、ふざけもうてスマンかった。御前には謝っても謝りきれへん。
見てるか分からんのに、待っててくれるて書いててくれたんは姫さんめっちゃ嬉しそうにしてた。
多く言わん。下らない言い訳と情けない御託しか吐けそうにあれへんから。

今日には御前の所に姫さん返したる。
俺が言うと気色悪ィて言いそうやけどな、伝言や。


『貴方に逢いたい。』
6 亮司
 
暫く此処は見てなかった。

多少仕事が立て込んでたってのも有るんだが…其れより、我ながら気持ち悪ィ位に書き込んじまいそうなのを抑える為にもな。
何処の誰とは言わねえが、ロリコンでストーカーだとか言い出しても可笑しく無い野郎が居やがるだろ。笑いのネタを提供してやる程親切じゃねえんだ。
それでも、桜が咲いてんの見たら御前に逢いたくなってよ。名前の所為か?直ぐ思い出しちまう、重症だよな。

なあ、やっぱり御前の言葉だけは見付けてやれるようになったらしいぜ。
今迄一人で綴らせてた分、全部見ててやりてえと思う。其れ以上を返してやりてえと思う。
見るかどうかは問題じゃないと思ってたが、御前が喜んだのなら上々だ。

…自称「愛のメッセンジャー」とやらの存在は見なかった事にしてやろうかと思ったが、其れでも御前の事連れて来るのは確かだろうからな。
今回だけはあの馬鹿を殴り倒すのは止めにして置く。……次は無えけどよ。

言い訳でも御託でも何でも良い。
んなもんどうだって構わねえが、御前が言いたいんなら何だって聞いてやる。
だからとっとと戻って来い、好い加減禁断症状でも出そうだ。

御前の声が聞きたい。
7 亮司
 
久々に聞いた声に俺がどれだけ狼狽えたかなんて、御前は想像もしねえんだろうな。
此の侭で御前に返事したら話の流れも何もかもお構い無しに甘やかすばっかりになっちまいそうだ……って事で、先に此処で落ち着いてから御前の処に行こうと思う。

無理をさせたいと思ってる訳じゃ無えんだけどな。其れでも御前の姿が目に付く場所に在るのは嬉しい。
御帰り、春。
………偶には俺が言うのも悪くは無えだろ?

今夜には逢いに行く。良い子で待ってろ。
8
驚嘆しました。
じゃあ、貴方の声を見つける度に酷く浮かれてる私は御存じじゃ無いでしょう?
落ち着くなんて貴方らしいですが、何度私の頬を緩ませるつもりなんでしょうか。

無理なんてしてません。ずっと甘えた侭に居たのに。
御帰り、と言われるとくすぐったくて。貴方もこんな感じだったですか?

――――!あ、えと、此処にずっと居ると悪い子になりますか。
良い子で待たなきゃですから、ね。大人しくしないと。
9
もう泣いてしまいそうです。
幾度繰り返せば良いのか、自分の不甲斐無さに涙が出ます。空廻るばかりで埋まる暖かい場所に帰りたいと言うだけなのに。

此れを見つけたら笑われるでしょうか。其れとも呆れてられてしまうでしょうか。
好意に甘えている私は本当にイヤな子です。

もう、少しだけ。
きっと直ぐに貴方の手に戻りますから。
10 無名さん