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1 二つ名は紫陽花

私だけの魔法遣い≠ヨ

御前が気付いて呉れるかは判らない。


だけど、気付いて欲しいと思う。


―…魔法は、傍に居る限り永劫と続く。


だけど少し、…―ほんの少しだけ怖いんだ。

御前に私≠ヘ相応しくないんじゃないか、と――不安に成る。


綺麗な御前にはきっと、私は似合わない。


――でも、忘れられないの。


甘い甘いココアの味も、…御前が掛けた優しい魔法も。
2 魔法遣い
俺が気付かない訳無いでしょ。

だって俺は、─…キミの魔法遣いなんだから。


──似合うか似合わないか、其れを決めるのはキミじゃないよ。

俺の気持ち無視してそんな風に思うなんて絶ッ対駄目!


俺は“キミ”じゃなきゃ駄目なんだから、さ。


相応しいとか、そんな事は関係無い。


──俺にはキミしか居無い。
…其れだけで充分、だろ?


──なあ、潮。


俺にとって、潮以上に綺麗で大切なモノ何て無いんだ。


だから、自信持って?
3 魔法遣い
忘れられ無い。


キミの温もりも

声も

笑顔も

──交わした約束も。


総て俺の中に、鮮明に残ってる。


何時か魔法は解けて、無に還る。

─…其んなの判ってる、判ってた。

でも其の“何時か”は今じゃ無いって信じてるよ。


だって、“キミ”は“キミ”だから。


若しも何かが在った成ら、…寄り掛かって良いからさ。


叶う成ら、
──此の想い、君に届け。
4 紫陽花
 
 
―…心が叫ぶんだ。

独りには慣れて居た筈なのに。


くるしい≠ニ、
…――心が叫ぶの。


手を、延ばしても良いか?

傍に居て≠ニ、

―…願い事を口にしても構わない?


一度だけで、良いから―…。
5 魔法遣い
俺はキミの傍に居るよ。

何時だって、傍に居る。
何処にも行か無い。


例えキミが暗闇の中に迷い込んで何も見え無く成ってしまったとしても、俺はちゃんと此処に居るから。

どんな時も、手を伸ばせば直ぐに触れられる位置に居るから。


独りに慣れる必要なんて全然無い。
だって、─…俺が独りにさせてあげないからね。


キミのペースで、ゆっくりで良いから…──俺の傍に来てよ。
6 紫陽花。
永遠の、魔法遣い。


…だけど願いを叶えるのはきっと、魔法じゃ無い。


必要なのは小さな勇気?

…判らない。


だけどきっと、手を伸ばせば掴めると信じたい。


…私の願いは、叶うことを諦めてしまったけれど。


だけどもう少しだけ、…望んで居ても良いか?


…果ての無い望みを、此の胸に抱いて居ても構わない?


私の、…魔法遣い。
7 魔法遣い
愛しさ
切なさ


喜び
哀しみ


不安
安堵


──…全部、キミに繋がる。


キミが居る世界は、輝いて居て…──とても、愛おしい。


俺はね、キミが呼ぶん成ら何処へでも行って其の手を掴むよ。

喩え、其処が果てしなく遠い場所でも。
8 紫陽花
──寒くて暗い深海の果て、私はたった独りで“光”を恋う。


からっぽ、なの。

満たされない感情が切なくて、…──誰でも良いから抱き締めて欲しかった。


だけど、ホントは違う。
“誰でも良い”─…なんて、嘘。


暖かな眼差しで愛を囁く御前が恋しかった。

真っ直ぐな其の心が痛いくらいに眩しかった。


──…優しさに満ちた温もりが、愛しかった。


ねえ。

─…逢いに行って、良い?
9 魔法遣い
全く…──今更、何で態々そんな事訊くかなー。


──…おいでよ。逢いに、来て。


云っただろ?
ちゃんと此処に居るって。
待ってるって。


抱き締めて、離したく無い。


───愛してるよ。
10 紫陽花
…欲しかった、から。


ちゃんとした言葉を、御前の口から聴きたかったから─…。


だから訊いた。

──ダメ、だった…?


今夜、…逢いに行くから。


待ってて。
11 魔法遣い
駄目、なんて云える訳無いでしょ。
そんな可愛く訊かれたら、さ。


不安に成ったら何時でも何でも訊いて良いから。

だから、独りで抱え込むのはナシ。
俺にちゃんと云う事。

─…判った?


──楽しみにしてるからね、キミに逢えるの。
12 無名さん