1 無名さん
半なりってなんぞ
なんぞ
2 ◆a9PA
一、以下の文章は一部を除き、昭和54年11月13日〜平成22年1月20日までの
当時のメディア・文献・証言を元に、未だ未解決である、通称「阿嵩埼(あがさき)事件」編集・再構成したものです。
一、事件の文献が膨大だった為、非常に長文となっております。
また事件の概要を詳しく知ってもらう為に、一般的に適切でない表現が多々あります。
参考にさせていただいた文献は、諸事情により名前を一部伏せさせていただきます。
一、血液、暴力シーン、グロテスクな表現が苦手な方、霊的感受性、同調性が高い方はご遠慮頂きますようお願いいたします。この文章によって発生した如何なる人的・霊的被害、損害に関して、編者は一切の責任を負いかねます。
当時のメディア・文献・証言を元に、未だ未解決である、通称「阿嵩埼(あがさき)事件」編集・再構成したものです。
一、事件の文献が膨大だった為、非常に長文となっております。
また事件の概要を詳しく知ってもらう為に、一般的に適切でない表現が多々あります。
参考にさせていただいた文献は、諸事情により名前を一部伏せさせていただきます。
一、血液、暴力シーン、グロテスクな表現が苦手な方、霊的感受性、同調性が高い方はご遠慮頂きますようお願いいたします。この文章によって発生した如何なる人的・霊的被害、損害に関して、編者は一切の責任を負いかねます。
3 ◆a9PA
───────────
「 阿 嵩 埼 事 件 」
───────────
「 阿 嵩 埼 事 件 」
───────────
4 ◆a9PA
昭和54年11月13日 ××新聞社会面より
「不明の会社員、遺体で発見」
13日午後5時45分ごろ、千葉県阿嵩埼市のごみ捨て場に男性の遺体があるのを近所の小学生が見つけ、阿嵩埼市中央署に通報した。阿嵩埼市中央署は遺体を10日夜から行方が分からなくなっていた会社員久我利彦さんであるとみて、死因を調べている。
久我さんは10日夜に会社を出た所から行方が分からなくなり、警察は久我さんが何らかの事件に巻き込まれた可能性もあると見て行方を捜索していた。
久我さんの遺体は半透明のビニール袋に入れられており、体には暴行を受けた形跡があったことから、殺人事件として慎重に調べを進めている。
「不明の会社員、遺体で発見」
13日午後5時45分ごろ、千葉県阿嵩埼市のごみ捨て場に男性の遺体があるのを近所の小学生が見つけ、阿嵩埼市中央署に通報した。阿嵩埼市中央署は遺体を10日夜から行方が分からなくなっていた会社員久我利彦さんであるとみて、死因を調べている。
久我さんは10日夜に会社を出た所から行方が分からなくなり、警察は久我さんが何らかの事件に巻き込まれた可能性もあると見て行方を捜索していた。
久我さんの遺体は半透明のビニール袋に入れられており、体には暴行を受けた形跡があったことから、殺人事件として慎重に調べを進めている。
5 ◆a9PA
昭和54年11月15日 週刊××より
「残虐極まりない犯行!阿嵩埼市殺人事件の恐るべき拷問」
13日千葉県阿嵩埼市のごみ捨て場で無残な他殺死体で発見された会社員の久我利彦さんだが、捜査関係者の話からその残虐な手口が少しずつ分かってきた。なんと久我さんの遺体には“拷問”された跡が残されていたというのだ。
(略)
まず久我さんの両腕と両足は鈍器のような物で骨が砕かれていたという。逃げ出さない為とも思えるが、足の骨は膝からつま先に至るまで、腕の骨は肘から指先に至るまで粉々に砕かれていたという。発見された久我さんの両手両足はタコやイカのように曲がりくねっていたと推測される。
また、久我さんの両目には瞬間接着剤が流し込まれ、瞼と眼球が完全に固着していたという。更に久我さんの両耳にはカテーテルのような器具が挿入され、鼓膜が破壊されていたというのだ。何も見えない暗闇と何も聞こえない静寂の中で、久我さんは両手両足を生きたまま粉々に砕かれた可能性も否定できない。
それだけではない。一部報道によると久我さんの舌には注射器の針でつけられた思われる穴が何百箇所も空いており、そのすべてが生きたまま付けられた物であると判明したのだという。
ちなみに、久我さんの体からは一切、麻酔等薬品は検出されてはいない。つまり、彼は生きたまま、失踪した10日の夜から死亡推定時刻と思われる13日の昼まで麻酔も打たれずにこの拷問を受けつづけていたという事になる。これではまるで生体実検である。
(以下略)
「残虐極まりない犯行!阿嵩埼市殺人事件の恐るべき拷問」
13日千葉県阿嵩埼市のごみ捨て場で無残な他殺死体で発見された会社員の久我利彦さんだが、捜査関係者の話からその残虐な手口が少しずつ分かってきた。なんと久我さんの遺体には“拷問”された跡が残されていたというのだ。
(略)
まず久我さんの両腕と両足は鈍器のような物で骨が砕かれていたという。逃げ出さない為とも思えるが、足の骨は膝からつま先に至るまで、腕の骨は肘から指先に至るまで粉々に砕かれていたという。発見された久我さんの両手両足はタコやイカのように曲がりくねっていたと推測される。
また、久我さんの両目には瞬間接着剤が流し込まれ、瞼と眼球が完全に固着していたという。更に久我さんの両耳にはカテーテルのような器具が挿入され、鼓膜が破壊されていたというのだ。何も見えない暗闇と何も聞こえない静寂の中で、久我さんは両手両足を生きたまま粉々に砕かれた可能性も否定できない。
それだけではない。一部報道によると久我さんの舌には注射器の針でつけられた思われる穴が何百箇所も空いており、そのすべてが生きたまま付けられた物であると判明したのだという。
ちなみに、久我さんの体からは一切、麻酔等薬品は検出されてはいない。つまり、彼は生きたまま、失踪した10日の夜から死亡推定時刻と思われる13日の昼まで麻酔も打たれずにこの拷問を受けつづけていたという事になる。これではまるで生体実検である。
(以下略)
6 ◆a9PA
昭和54年11月16日 ××テレビの番組より
こちら阿嵩埼市中央署前の──です。先ほど阿嵩埼市中央署により久我さんの遺留品が取材陣に公開されました。公開されたのは久我さんの財布、手帳、ハンカチ等で、すべて久我さんの上着から発見されたという事です。ただ、久我さんは奥さんから渡されていたお守りを肩身離さず持ち歩いていたという事で、今回そのお守りが見つからなかった事から、犯人が持ち去った可能性もあるとみて、引き続き調べを進めていくとの事でした。
また、これは捜査関係者から聞いた話なんですが、久我さんは失踪後の12日の昼、自宅の留守番電話にメッセージを残していたという話を聞く事が出来ました。それを踏まえ久我さんの身内へのインタビューを行ったところ、確かに本人の声で「まだ私は生きていますか?」とのメッセージが残っていたとの事です。このメッセージが家族に向けられた物なのか、それとも久我さんが自分自身に当てたものなのか。また録音されたテープには他にも女性の悲鳴が入っていた──との証言もあり、余りに不可解なこの事件の早期解決が待たれます。
こちら阿嵩埼市中央署前の──です。先ほど阿嵩埼市中央署により久我さんの遺留品が取材陣に公開されました。公開されたのは久我さんの財布、手帳、ハンカチ等で、すべて久我さんの上着から発見されたという事です。ただ、久我さんは奥さんから渡されていたお守りを肩身離さず持ち歩いていたという事で、今回そのお守りが見つからなかった事から、犯人が持ち去った可能性もあるとみて、引き続き調べを進めていくとの事でした。
また、これは捜査関係者から聞いた話なんですが、久我さんは失踪後の12日の昼、自宅の留守番電話にメッセージを残していたという話を聞く事が出来ました。それを踏まえ久我さんの身内へのインタビューを行ったところ、確かに本人の声で「まだ私は生きていますか?」とのメッセージが残っていたとの事です。このメッセージが家族に向けられた物なのか、それとも久我さんが自分自身に当てたものなのか。また録音されたテープには他にも女性の悲鳴が入っていた──との証言もあり、余りに不可解なこの事件の早期解決が待たれます。
7 ◆a9PA
昭和54年11月16日 被害者の財布から発見されたレシートより
コンビニエンスストア××××
阿嵩埼三上店
1979年10月3日18:56
─食料品 18点
─文房具 3点
─文房具 7点
─乾電池 5点
計17690円
コンビニエンスストア××××
阿嵩埼三上店
1979年10月3日18:56
─食料品 18点
─文房具 3点
─文房具 7点
─乾電池 5点
計17690円
8 ◆a9PA
昭和54年11月16日 阿嵩埼市役所の防災行政無線放送より
─こちらは広報阿嵩埼市役所です。
行方不明者の放送をしています。
69歳の男性が、本日阿嵩埼市長井下の自宅を出たまま、行方が分からなくなっています。
身長は155cm、痩せ型で髪は黒く、
不明当時の服装は上下紺色のジャージで、緑色のサンダルを履いていました。
心当たりの方は最寄りの交番、警察署まで連絡をお願いいたします。
─こちらは広報阿嵩埼市役所です。
行方不明者の放送をしています。
69歳の男性が、本日阿嵩埼市長井下の自宅を出たまま、行方が分からなくなっています。
身長は155cm、痩せ型で髪は黒く、
不明当時の服装は上下紺色のジャージで、緑色のサンダルを履いていました。
心当たりの方は最寄りの交番、警察署まで連絡をお願いいたします。
9 ◆a9PA
昭和54年11月22日 週刊××より
「事件解決の鍵を握る?同僚Zの不可解な行動!」
あの阿嵩埼市の猟奇殺人事件から9日、事件は大きく動き出そうとしています。我々の取材で浮かび上がってきた久我さんの死に何らかの関与を持つといわれる同僚Z氏。彼は久我さん失踪の直前まで久我さんと一緒に居た事が判明しており、また二人の間で何らかのトラブルが発生していたという証言も我々の取材で明らかになってきました。このZ氏とはどんな人物なのでしょうか。
Z氏の両親は三ヶ月前に事故で死亡しており、それまではZ氏を含めた三人で阿嵩埼市で寺を運営しており──(略)
──最近は久我さんと仕事帰りには必ず二人で何処かへ立ち寄っていたとの話もあり、以上のことからZ氏が事件に何らかの関与を持った事はほぼ確実と思われ、より一層、捜査に注目が集まっています。
「事件解決の鍵を握る?同僚Zの不可解な行動!」
あの阿嵩埼市の猟奇殺人事件から9日、事件は大きく動き出そうとしています。我々の取材で浮かび上がってきた久我さんの死に何らかの関与を持つといわれる同僚Z氏。彼は久我さん失踪の直前まで久我さんと一緒に居た事が判明しており、また二人の間で何らかのトラブルが発生していたという証言も我々の取材で明らかになってきました。このZ氏とはどんな人物なのでしょうか。
Z氏の両親は三ヶ月前に事故で死亡しており、それまではZ氏を含めた三人で阿嵩埼市で寺を運営しており──(略)
──最近は久我さんと仕事帰りには必ず二人で何処かへ立ち寄っていたとの話もあり、以上のことからZ氏が事件に何らかの関与を持った事はほぼ確実と思われ、より一層、捜査に注目が集まっています。
10 ◆a9PA
昭和54年11月29日 週刊××より
「先日掲載された[事件解決の鍵を握る?同僚Zの不可解な行動!]について、
取材、裏付け不足の部分が多々あり、関係者様、読者様にお詫びを申し上げます」
「先日掲載された[事件解決の鍵を握る?同僚Zの不可解な行動!]について、
取材、裏付け不足の部分が多々あり、関係者様、読者様にお詫びを申し上げます」
11 ◆a9PA
昭和54年12月3日 ××テレビの番組より
こちら阿嵩埼市中央署前の──です。先ほど警察から久我さん殺害事件について新しい情報が公開されました。阿嵩埼市中央署によると、久我さんの胸にはメスのような物で切り開かれた形跡があったという事です。また、久我さんの額にも同じく、メスのような物で傷つけられた痕が付けられていたという事です。また額の傷については何らかの記号が書かれていたという話もありましたが、捜査上の理由からその記号がどのような物であったかは公開されませんでした。警察は以上の事から市内の医療関係者等に──(略)
こちら阿嵩埼市中央署前の──です。先ほど警察から久我さん殺害事件について新しい情報が公開されました。阿嵩埼市中央署によると、久我さんの胸にはメスのような物で切り開かれた形跡があったという事です。また、久我さんの額にも同じく、メスのような物で傷つけられた痕が付けられていたという事です。また額の傷については何らかの記号が書かれていたという話もありましたが、捜査上の理由からその記号がどのような物であったかは公開されませんでした。警察は以上の事から市内の医療関係者等に──(略)
12 ◆a9PA
昭和55年4月13日 ××スポーツ新聞より
「阿嵩埼市事件 第一発見の小学生殺される」
13日午後7時15分ごろ、千葉県阿嵩埼市阿嵩埼駅に設置されたロッカーに子供の遺体があるのを帰宅途中の会社員が発見し、阿嵩埼市中央署に通報した。阿嵩埼市中央署は遺体を11日昼から行方が分からなくなっていた日野豪君であるとみて、詳しい死因を調べている。
日野豪君は去年11月に阿嵩埼市内で発生した久我利彦さん殺害事件の、第一発見者であり、警察は久我さん殺害事件との関連も視野に入れて慎重に調べを進めている。
日野君は11日昼頃、同級生の水谷昭君と一緒に遊んでいるのを近所人に目撃されたのを最後に水谷君共々行方が分からなくなり、警察は誘拐事件として捜査を進めていた。翌日、水谷君のみが近所の空き地で倒れているところを発見され保護、
しかし近辺を捜索するも日野君の姿は見つからず、13日夜に悲しみの発見となった。
日野君の遺体は荷物預かり用のロッカーの中に押しこまれており、体には暴行を受けた形跡もあったことから、警察は殺人事件として慎重に調べを進めている。
「阿嵩埼市事件 第一発見の小学生殺される」
13日午後7時15分ごろ、千葉県阿嵩埼市阿嵩埼駅に設置されたロッカーに子供の遺体があるのを帰宅途中の会社員が発見し、阿嵩埼市中央署に通報した。阿嵩埼市中央署は遺体を11日昼から行方が分からなくなっていた日野豪君であるとみて、詳しい死因を調べている。
日野豪君は去年11月に阿嵩埼市内で発生した久我利彦さん殺害事件の、第一発見者であり、警察は久我さん殺害事件との関連も視野に入れて慎重に調べを進めている。
日野君は11日昼頃、同級生の水谷昭君と一緒に遊んでいるのを近所人に目撃されたのを最後に水谷君共々行方が分からなくなり、警察は誘拐事件として捜査を進めていた。翌日、水谷君のみが近所の空き地で倒れているところを発見され保護、
しかし近辺を捜索するも日野君の姿は見つからず、13日夜に悲しみの発見となった。
日野君の遺体は荷物預かり用のロッカーの中に押しこまれており、体には暴行を受けた形跡もあったことから、警察は殺人事件として慎重に調べを進めている。
13 ◆a9PA
昭和55年4月15日 ××テレビの番組より
こちら阿嵩埼市中央署前の──です。阿嵩埼市中央署は先ほど、日野豪君が殺害された事件に関して、去年の11月に発生した久我利彦さん殺害事件と同じ犯人よる犯行であるとほぼ断定しました。それについての情報公開はありませんでしたが、おそらく久我利彦さん殺害事件に残されていた何らかの物証と、今回、日野豪君殺害事件で残されていた物証とが一致した物かと思われます。
また今回、日野豪君が所持していたはずのランドセルや身につけていたはずの衣類が遺体発見現場となったロッカーからは発見されなかった事から、犯人が持ち去った可能性もあるとみて引き続き捜査が進められるようです。
第一発見者の女性会社員へのインタビューによると、ロッカーには鍵は掛けられておらず、最初、動物の死体が入っていると思った──との事です。
こちら阿嵩埼市中央署前の──です。阿嵩埼市中央署は先ほど、日野豪君が殺害された事件に関して、去年の11月に発生した久我利彦さん殺害事件と同じ犯人よる犯行であるとほぼ断定しました。それについての情報公開はありませんでしたが、おそらく久我利彦さん殺害事件に残されていた何らかの物証と、今回、日野豪君殺害事件で残されていた物証とが一致した物かと思われます。
また今回、日野豪君が所持していたはずのランドセルや身につけていたはずの衣類が遺体発見現場となったロッカーからは発見されなかった事から、犯人が持ち去った可能性もあるとみて引き続き捜査が進められるようです。
第一発見者の女性会社員へのインタビューによると、ロッカーには鍵は掛けられておらず、最初、動物の死体が入っていると思った──との事です。
14 ◆a9PA
昭和55年4月17日 週刊▲▲より
「繰り返された拷問殺人!快楽殺人による犯行か」
去年、私達を恐怖のどん底に突き落とした阿嵩埼市久我利彦さん殺害事件。その凶行が再び──今度は幼い子供にその牙が剥かれました。殺害されたのは地元の小学校に通う小学四年生の日野豪君、彼の遺体は全裸の上、無造作にロッカーの中にバラバラにされ押し込められていました。遺体は死後半日ほど経過しており、誘拐されてから約二日間、拷問されていた可能性が高いという事です。
警察からの発表はありませんが、関係者の話によると殺害された日野豪君の遺体には先月殺害された我利彦さんとほぼ同じ拷問が加えられており、警察は同一犯の犯行だと断定しました。
あの恐るべき拷問が、今度は幼い小学生の身に行われたかと思うと、背筋が凍るだけではすみません。近隣住民は震え上がり、現在、子供の外出を自粛している家庭も多くあります。
しかし、それだけはありません。日野豪君の遺体からはもっと恐るべき凶行の傷跡が生々しく残されていたのです。警察の調べによると、日野豪君の遺体は頭、左腕、右腕、右足、左足、胴体の6パーツに分けられ、そのうちの胴体を解剖した結果、胃の中から8枚のカミソリの歯が発見されたのです。胃の中はカミソリ以外は空っぽで、喉から食道にかけてカミソリの歯で傷ついたと思われる裂傷がいくつも確認されたという事です。また胃と食道以外の内臓はきれいに取り除かれており、現場からもそれらは発見されず、専門化は犯人が持ち去った可能性もあると分析しています。
また遺体の切断面は荒く、ノコギリのような物で切断されたと警察は見ているようです。
「繰り返された拷問殺人!快楽殺人による犯行か」
去年、私達を恐怖のどん底に突き落とした阿嵩埼市久我利彦さん殺害事件。その凶行が再び──今度は幼い子供にその牙が剥かれました。殺害されたのは地元の小学校に通う小学四年生の日野豪君、彼の遺体は全裸の上、無造作にロッカーの中にバラバラにされ押し込められていました。遺体は死後半日ほど経過しており、誘拐されてから約二日間、拷問されていた可能性が高いという事です。
警察からの発表はありませんが、関係者の話によると殺害された日野豪君の遺体には先月殺害された我利彦さんとほぼ同じ拷問が加えられており、警察は同一犯の犯行だと断定しました。
あの恐るべき拷問が、今度は幼い小学生の身に行われたかと思うと、背筋が凍るだけではすみません。近隣住民は震え上がり、現在、子供の外出を自粛している家庭も多くあります。
しかし、それだけはありません。日野豪君の遺体からはもっと恐るべき凶行の傷跡が生々しく残されていたのです。警察の調べによると、日野豪君の遺体は頭、左腕、右腕、右足、左足、胴体の6パーツに分けられ、そのうちの胴体を解剖した結果、胃の中から8枚のカミソリの歯が発見されたのです。胃の中はカミソリ以外は空っぽで、喉から食道にかけてカミソリの歯で傷ついたと思われる裂傷がいくつも確認されたという事です。また胃と食道以外の内臓はきれいに取り除かれており、現場からもそれらは発見されず、専門化は犯人が持ち去った可能性もあると分析しています。
また遺体の切断面は荒く、ノコギリのような物で切断されたと警察は見ているようです。
15 ◆a9PA
昭和55年4月15日 ○○テレビの番組より
「どのようにして誘拐は行われたのか?空白の十分」
ここ阿嵩埼市では今、昼間だというのに外出している人は殆ど見かける事は出ません。ですが、日野豪君の遺体が発見されるまでは、昼間はかなり人の往来が激しく、犯行を目撃される可能性はかなり高いように思われます。
日野豪君と共に一時誘拐された同級生の水谷昭君は11日の昼、学校帰りにこの道を遊びながら帰っているところを何人もの近所の住民に目撃されています。そしてこの道から日野豪君の自宅までは子供の足で約十分、そうです。日野豪君と水谷昭君はこの空白の十分のうちに何者かに誘拐され、うち水谷昭君のみをここから二十分かかる空き地に放置し、逃亡したと思われています。しかし──本当にそんな事が可能なのでしょうか?実際に歩いて確かめたいと思います。
(略)
このように、目撃者の証言を元に、それらの場所にスタッフを置いて試したところ、彼らを連れ去ることは物理的に不可能のように思います。この道は見通しが良い上に、比較的静かな通りとなっています。無理矢理子供を車等に連れこもうものなら悲鳴は必ず目撃者が聞いていなくてはいけません。ですが目撃者は子供の悲鳴はおろか、不審者の姿すら見ていないというのです。これは一体どういう事なのでしょうか。これはまるで現代の神隠しのようです。
(略)
ここで最後に水谷昭君の証言を紹介したいと思います。これはかなり重要であると思われます。水谷君は誘拐される直前、背後から男か女か分からないような声で、声を掛けられたというのです。男か女か分からない声──というのはボイスチェンジャーか何かを使用していたのかもしれません。そして「ボクだよ」と声を掛けられた直後、猛烈な腐臭がして気を失った、水谷君はそう証言しているということです。
(以下略)
「どのようにして誘拐は行われたのか?空白の十分」
ここ阿嵩埼市では今、昼間だというのに外出している人は殆ど見かける事は出ません。ですが、日野豪君の遺体が発見されるまでは、昼間はかなり人の往来が激しく、犯行を目撃される可能性はかなり高いように思われます。
日野豪君と共に一時誘拐された同級生の水谷昭君は11日の昼、学校帰りにこの道を遊びながら帰っているところを何人もの近所の住民に目撃されています。そしてこの道から日野豪君の自宅までは子供の足で約十分、そうです。日野豪君と水谷昭君はこの空白の十分のうちに何者かに誘拐され、うち水谷昭君のみをここから二十分かかる空き地に放置し、逃亡したと思われています。しかし──本当にそんな事が可能なのでしょうか?実際に歩いて確かめたいと思います。
(略)
このように、目撃者の証言を元に、それらの場所にスタッフを置いて試したところ、彼らを連れ去ることは物理的に不可能のように思います。この道は見通しが良い上に、比較的静かな通りとなっています。無理矢理子供を車等に連れこもうものなら悲鳴は必ず目撃者が聞いていなくてはいけません。ですが目撃者は子供の悲鳴はおろか、不審者の姿すら見ていないというのです。これは一体どういう事なのでしょうか。これはまるで現代の神隠しのようです。
(略)
ここで最後に水谷昭君の証言を紹介したいと思います。これはかなり重要であると思われます。水谷君は誘拐される直前、背後から男か女か分からないような声で、声を掛けられたというのです。男か女か分からない声──というのはボイスチェンジャーか何かを使用していたのかもしれません。そして「ボクだよ」と声を掛けられた直後、猛烈な腐臭がして気を失った、水谷君はそう証言しているということです。
(以下略)
16 ◆a9PA
昭和55年4月19日出版 「地名語源の分かるかな?」より抜粋
─千葉県 / 阿嵩埼(あがさき)市
阿嵩埼は千葉県南部に位置する総人口114万人の市である。
この市は周囲を板垣岳を主とする山々に挟まれ、市自体も周囲の市と比べるとやや高めに位置している。
嵩とは高い所を意味し、埼は山道が険しい事を意味している。かつてこの阿嵩埼は小さな村同士がそれぞれ連なる事で平穏な生活を営んでいたが、外から旅人が訪れるにあたってはかなりの苦労が必要な場所だった。その事から山道が険しい高い場所にある──阿嵩埼と呼ばれるようになったのである。
─千葉県 / 阿嵩埼(あがさき)市
阿嵩埼は千葉県南部に位置する総人口114万人の市である。
この市は周囲を板垣岳を主とする山々に挟まれ、市自体も周囲の市と比べるとやや高めに位置している。
嵩とは高い所を意味し、埼は山道が険しい事を意味している。かつてこの阿嵩埼は小さな村同士がそれぞれ連なる事で平穏な生活を営んでいたが、外から旅人が訪れるにあたってはかなりの苦労が必要な場所だった。その事から山道が険しい高い場所にある──阿嵩埼と呼ばれるようになったのである。
17 ◆a9PA
(1/2)
昭和55年4月24日 週刊□□より
「犯人は神様?不可解な三つの謎とメッセージ」
今月殺害された日野豪君殺害事件についての新たな謎と情報を本誌がついにスクープした。それは周囲の人間への取材によって浮かび上がってきた衝撃の事実である。なんと、犯人は「神様」だったのだ。
我々はまず、日野君の同級生数人と接触し、彼の最近の行動について話を聞く事が出来た。すると同級生A君は日野君について気になる証言をしてくれたのである。
「えーっとね、そう、豪君は最近ちょっとおかしかったかもしんない。だってさ、あの事件のあとからなんか変な話ばっかりするし、そりゃ大人達に結構大人気ーみたいな感じになってたからさ、調子に乗ってたかもしんないよ?でも、神様にあったとか言い出すしさ」
同級生A君によると、日野君は神様に会った──というのである。日野君は数人の同級生に「自分は神様に会った」「神様は空を飛べる大きな人」と話していたという。また、一緒に一時誘拐された水谷昭君もまた、似たような話を同級生に話していたという。
昭和55年4月24日 週刊□□より
「犯人は神様?不可解な三つの謎とメッセージ」
今月殺害された日野豪君殺害事件についての新たな謎と情報を本誌がついにスクープした。それは周囲の人間への取材によって浮かび上がってきた衝撃の事実である。なんと、犯人は「神様」だったのだ。
我々はまず、日野君の同級生数人と接触し、彼の最近の行動について話を聞く事が出来た。すると同級生A君は日野君について気になる証言をしてくれたのである。
「えーっとね、そう、豪君は最近ちょっとおかしかったかもしんない。だってさ、あの事件のあとからなんか変な話ばっかりするし、そりゃ大人達に結構大人気ーみたいな感じになってたからさ、調子に乗ってたかもしんないよ?でも、神様にあったとか言い出すしさ」
同級生A君によると、日野君は神様に会った──というのである。日野君は数人の同級生に「自分は神様に会った」「神様は空を飛べる大きな人」と話していたという。また、一緒に一時誘拐された水谷昭君もまた、似たような話を同級生に話していたという。
18 ◆a9PA
(2/2)
神様──これは一体誰なのか。本誌はこう推理する。
犯人は感受性豊かな子供達に手品を見せたのではないだろうか。空を飛ぶ手品、神様と思わせるような手品を披露し、二人見せる事で、二人の心を操っていたのではないだろうか。それならば十分の空白も何らかの説明がつくのかもしれない。
しかし、今回本誌が掴んだ情報はこれだけではない。更に気になるような情報が捜査関係者からの話で聞く事が出来たのだ。
なんと、発見された日野君の遺体から驚くべき物が二つ発見されたのだという。一つは日野君の遺体の頭部につけられていた傷である。そう、久我利彦さん殺害事件の時に警察が発表したメスのような物で傷つけられたと思われる何らかの記号である。それが今回、日野君の遺体からも発見されたというのだ。
それだけではない。日野君の頭部、その鼻の穴の奥からもとある物証が発見されたというのだ。それは──手紙である。しかも筆跡鑑定の結果、それは日野豪君本人の筆跡に間違いないのだという。手紙の内容をすべて書き記す事は出来ないが、ここで一部を紹介したいと思う。
[神様はやくここから出てくださいこっちでここか出てさい]
神様──そう、先ほどの子供達の証言にも出てきた、あの神様である。犯人が鼻の穴から出てくる、そういう意味なのだろうか。また鼻の穴からは他にも丸められた紙が発見されたらしいが、そちらの内容は教えてはもらえなかった。謎は深まるばかりだ。
(以下略)
神様──これは一体誰なのか。本誌はこう推理する。
犯人は感受性豊かな子供達に手品を見せたのではないだろうか。空を飛ぶ手品、神様と思わせるような手品を披露し、二人見せる事で、二人の心を操っていたのではないだろうか。それならば十分の空白も何らかの説明がつくのかもしれない。
しかし、今回本誌が掴んだ情報はこれだけではない。更に気になるような情報が捜査関係者からの話で聞く事が出来たのだ。
なんと、発見された日野君の遺体から驚くべき物が二つ発見されたのだという。一つは日野君の遺体の頭部につけられていた傷である。そう、久我利彦さん殺害事件の時に警察が発表したメスのような物で傷つけられたと思われる何らかの記号である。それが今回、日野君の遺体からも発見されたというのだ。
それだけではない。日野君の頭部、その鼻の穴の奥からもとある物証が発見されたというのだ。それは──手紙である。しかも筆跡鑑定の結果、それは日野豪君本人の筆跡に間違いないのだという。手紙の内容をすべて書き記す事は出来ないが、ここで一部を紹介したいと思う。
[神様はやくここから出てくださいこっちでここか出てさい]
神様──そう、先ほどの子供達の証言にも出てきた、あの神様である。犯人が鼻の穴から出てくる、そういう意味なのだろうか。また鼻の穴からは他にも丸められた紙が発見されたらしいが、そちらの内容は教えてはもらえなかった。謎は深まるばかりだ。
(以下略)
19 ◆a9PA
昭和57年5月2日 ××新聞社会面より
「阿嵩埼事件の被害者の父親亡くなる」
1日午後9時40分ごろ、阿嵩埼市に住む日野さん宅から夫が突然倒れたと救急に連絡があり、救急隊員が駆けつけた所──
(略)
日野克也さんは昭和55年4月に阿嵩埼市内で殺害された日野豪君の父親であり、警察の発表によると死因は心臓マヒであると──
(以下略)
「阿嵩埼事件の被害者の父親亡くなる」
1日午後9時40分ごろ、阿嵩埼市に住む日野さん宅から夫が突然倒れたと救急に連絡があり、救急隊員が駆けつけた所──
(略)
日野克也さんは昭和55年4月に阿嵩埼市内で殺害された日野豪君の父親であり、警察の発表によると死因は心臓マヒであると──
(以下略)
20 ◆a9PA
平成3年6月7日 △△スポーツ新聞より
「コンビニ強盗 何も取らず逃亡」
7日午前5時10分ごろ、阿嵩埼市内にあるコンビニエンスストア、××××阿嵩埼三上店に男が押し入り、サバイバルナイフのような物をアルバイト店員に突きつけ「死にたくなかったらレジを開けろ」と脅迫した。だが男は突然何かに怯え出すと持っていたサバイバルナイフを投げ捨て逃亡した。店内には他に客が数人いたが怪我は無かった。警察は強盗事件として逃げた犯人の行方を追っている。
「コンビニ強盗 何も取らず逃亡」
7日午前5時10分ごろ、阿嵩埼市内にあるコンビニエンスストア、××××阿嵩埼三上店に男が押し入り、サバイバルナイフのような物をアルバイト店員に突きつけ「死にたくなかったらレジを開けろ」と脅迫した。だが男は突然何かに怯え出すと持っていたサバイバルナイフを投げ捨て逃亡した。店内には他に客が数人いたが怪我は無かった。警察は強盗事件として逃げた犯人の行方を追っている。
21 ◆a9PA
平成7年7月9日 ○○新聞朝刊社会面より
「阿嵩埼市で女性殺害される」
8日午後11時10分ごろ、千葉県阿嵩埼市にある空き家から女性の他殺死体が発見された。発見したのは異臭がすると通報を受けた警官ら二人。
発見された女性は三十台前半で身長160cmの痩せ型。遺体は腐乱が進んでおり、詳しい死因などは解剖して調べるとしている。
警察は身元の確認を急ぐと共に、引き続き死因について慎重に調べを進めている。
「阿嵩埼市で女性殺害される」
8日午後11時10分ごろ、千葉県阿嵩埼市にある空き家から女性の他殺死体が発見された。発見したのは異臭がすると通報を受けた警官ら二人。
発見された女性は三十台前半で身長160cmの痩せ型。遺体は腐乱が進んでおり、詳しい死因などは解剖して調べるとしている。
警察は身元の確認を急ぐと共に、引き続き死因について慎重に調べを進めている。
22 ◆a9PA
平成7年7月9日 ○○新聞夕刊社会面より
「またも阿嵩埼事件の第一発見者殺される」
9日の朝、千葉県阿嵩埼市で発見された女性の遺体について、阿嵩埼市中央署は身元を阿嵩埼市に住む竹尻光子さんであると断定した。竹尻光子さんは昭和55年に発生した通称阿嵩埼事件の被害者、日野豪君の遺体の第一発見者であり、日野豪君もまた阿嵩埼事件の久我利彦さんの遺体の第一発見者だった事から、警察は関連を調べている。
竹尻光子さんは先月28日から行方が分からなくなっており、家族が捜索願を出していた。
「またも阿嵩埼事件の第一発見者殺される」
9日の朝、千葉県阿嵩埼市で発見された女性の遺体について、阿嵩埼市中央署は身元を阿嵩埼市に住む竹尻光子さんであると断定した。竹尻光子さんは昭和55年に発生した通称阿嵩埼事件の被害者、日野豪君の遺体の第一発見者であり、日野豪君もまた阿嵩埼事件の久我利彦さんの遺体の第一発見者だった事から、警察は関連を調べている。
竹尻光子さんは先月28日から行方が分からなくなっており、家族が捜索願を出していた。
23 ◆a9PA
平成7年7月9日 ××テレビの速報
「阿嵩埼市で阿嵩埼事件の関係者とみられる女性二人が変死」
「阿嵩埼市で阿嵩埼事件の関係者とみられる女性二人が変死」
24 ◆a9PA
平成7年7月10日 ○○テレビの番組
ええ、こちら現場の──です。ここ阿嵩埼市の民家で、女性二人が死亡している所を掛けつけた親族が見つけ、110番通報しました。警官が駆けつけると女性二人があおむけで居間に倒れており、二人とも既に死亡していたとの事です。
死亡したのはこの家に住む久我操子さんと、近所に住む主婦、日野滋さんの二人です。久我操子さんは昭和54年に発生した阿嵩埼事件の第一の被害者、久我利彦さんの妻であり、日野滋さんは昭和55年に発生した阿嵩埼事件の第二の被害者、日野豪君の母親でもあります。
二人の遺体はかなり腐乱しており、遺体が収容された今になっても、現場宅前からは何か鼻をつく刺激臭が漂ってきます。
警察は腐乱が進んでいることから死因の特定が難しいかもしれないと話しているという事です。そして昨日発見された阿嵩埼事件の第一発見者、竹尻光子さん殺害事件との関連性も依然調査中──との事です。スタジオにお返しします。
(略)
はい、こちら阿嵩埼市中央署前の──です。先ほど阿嵩埼市中央署にて竹尻光子さんの遺留品が公開されました。公開されたのは竹尻光子さんの物と思われるポケベル、手帳、化粧品の入ったポーチ、そして果物ナイフです。当初、この果物ナイフは凶器の一つではないかと考えられ捜査が進められていましたが、竹尻光子さん本人が近くのデパートで購入した物である事が確認されています。またこの果物ナイフに使用された形跡は無いという事です。
また現場から昭和55年に殺害された日野豪くんの物と思われるランドセルが発見され、警察が分析を進めています。
(略)
はい、遺体が発見されたのは阿嵩埼市内の空き屋で、近所の人からは幽霊屋敷と呼ばれている場所だったようです。近所の人が異臭がすると通報し、駆けつけた警察官二人が竹尻光子さんの遺体を発見した、との事です。
ただ、その第一発見者の警官なんですが、一部報道によると警官の一人が現場でおかしくなり、救急車で運ばれた──という情報が入ってきています。
ええ、こちら現場の──です。ここ阿嵩埼市の民家で、女性二人が死亡している所を掛けつけた親族が見つけ、110番通報しました。警官が駆けつけると女性二人があおむけで居間に倒れており、二人とも既に死亡していたとの事です。
死亡したのはこの家に住む久我操子さんと、近所に住む主婦、日野滋さんの二人です。久我操子さんは昭和54年に発生した阿嵩埼事件の第一の被害者、久我利彦さんの妻であり、日野滋さんは昭和55年に発生した阿嵩埼事件の第二の被害者、日野豪君の母親でもあります。
二人の遺体はかなり腐乱しており、遺体が収容された今になっても、現場宅前からは何か鼻をつく刺激臭が漂ってきます。
警察は腐乱が進んでいることから死因の特定が難しいかもしれないと話しているという事です。そして昨日発見された阿嵩埼事件の第一発見者、竹尻光子さん殺害事件との関連性も依然調査中──との事です。スタジオにお返しします。
(略)
はい、こちら阿嵩埼市中央署前の──です。先ほど阿嵩埼市中央署にて竹尻光子さんの遺留品が公開されました。公開されたのは竹尻光子さんの物と思われるポケベル、手帳、化粧品の入ったポーチ、そして果物ナイフです。当初、この果物ナイフは凶器の一つではないかと考えられ捜査が進められていましたが、竹尻光子さん本人が近くのデパートで購入した物である事が確認されています。またこの果物ナイフに使用された形跡は無いという事です。
また現場から昭和55年に殺害された日野豪くんの物と思われるランドセルが発見され、警察が分析を進めています。
(略)
はい、遺体が発見されたのは阿嵩埼市内の空き屋で、近所の人からは幽霊屋敷と呼ばれている場所だったようです。近所の人が異臭がすると通報し、駆けつけた警察官二人が竹尻光子さんの遺体を発見した、との事です。
ただ、その第一発見者の警官なんですが、一部報道によると警官の一人が現場でおかしくなり、救急車で運ばれた──という情報が入ってきています。
25 ◆a9PA
平成7年7月15日 週刊□□より
「三度目の惨劇!警察は事件を防げなかったのか──?浮かび上がる犯人像」
15年という月日が流れながらも、未だに記憶に新しいあの惨劇。通称阿嵩埼事件。小学生と会社員の男性が次々と拉致され、拷問を受け殺害されたあの事件が再び阿嵩埼市で発生しました。それだけではありません。被害者はあの阿嵩埼事件の第一発見者であり、同日、阿嵩埼事件の関係者二人の遺体が発見されているのです。本誌は全力を尽くし、この事件に総力を上げて取材を試みました。
(略)
警察の発表によると、発見された竹尻光子さんの遺体は衣類を身につけた状態で発見され、夏場という事もありかなり腐乱した状態だったという事です。しかし、最も注目すべき点は、彼女もまた“拷問”を受けていた形跡があった──という点です。警察は犯人を阿嵩埼事件と同一の犯人であると断定し捜査を進めています。しかし、警察に本当に犯人を逮捕する事が出来るのでしょうか?第一の事件の時に犯人を逮──
(略)
──では無いのでしょうか?その上、今回第一発見者となった警官Tは現場の状態を見て発狂し、現場にて嘔吐、失神、救急車で運ばれるという失態を起こしています。目撃者の話によるとTは救急車に運ばれる際に「いったいなりたくない」と意味不明な言葉を叫んでいたとの事です。これがこの国を──
(略)
現場は昔から幽霊が出ると噂のあった廃屋であり、近所の人も足を踏み入れる事は無かったという事です。警察は一連の犯行がこの廃屋で行われていた可能性もあると見て、現場を慎重に調べているという事ですが──
(以下略)
「三度目の惨劇!警察は事件を防げなかったのか──?浮かび上がる犯人像」
15年という月日が流れながらも、未だに記憶に新しいあの惨劇。通称阿嵩埼事件。小学生と会社員の男性が次々と拉致され、拷問を受け殺害されたあの事件が再び阿嵩埼市で発生しました。それだけではありません。被害者はあの阿嵩埼事件の第一発見者であり、同日、阿嵩埼事件の関係者二人の遺体が発見されているのです。本誌は全力を尽くし、この事件に総力を上げて取材を試みました。
(略)
警察の発表によると、発見された竹尻光子さんの遺体は衣類を身につけた状態で発見され、夏場という事もありかなり腐乱した状態だったという事です。しかし、最も注目すべき点は、彼女もまた“拷問”を受けていた形跡があった──という点です。警察は犯人を阿嵩埼事件と同一の犯人であると断定し捜査を進めています。しかし、警察に本当に犯人を逮捕する事が出来るのでしょうか?第一の事件の時に犯人を逮──
(略)
──では無いのでしょうか?その上、今回第一発見者となった警官Tは現場の状態を見て発狂し、現場にて嘔吐、失神、救急車で運ばれるという失態を起こしています。目撃者の話によるとTは救急車に運ばれる際に「いったいなりたくない」と意味不明な言葉を叫んでいたとの事です。これがこの国を──
(略)
現場は昔から幽霊が出ると噂のあった廃屋であり、近所の人も足を踏み入れる事は無かったという事です。警察は一連の犯行がこの廃屋で行われていた可能性もあると見て、現場を慎重に調べているという事ですが──
(以下略)
26 ◆a9PA
平成7年7月17日 ××新聞社会面より
「現場から別の血痕発見」
阿嵩埼市中央署は9日に竹尻光子さんの遺体が発見された廃屋から、竹尻光子さん以外の物と思われる複数人の血痕が発見されたと発表した。血痕はそれぞれA型が一人、B型が二人、O型が一人、合計四人の物であり、そのいずれも昭和54年に殺害された久我利彦さん、昭和55年に殺害された日野豪君の物とは一致しない事から、この血痕は犯人の物か、まだ発見されていない別の被害者の物である可能性が高いとして、詳しい分析を急いでいる。またこの血痕は、先日遺体となって発見された日野滋さん、久我操子さんの血液とも一致しないとの事。
「現場から別の血痕発見」
阿嵩埼市中央署は9日に竹尻光子さんの遺体が発見された廃屋から、竹尻光子さん以外の物と思われる複数人の血痕が発見されたと発表した。血痕はそれぞれA型が一人、B型が二人、O型が一人、合計四人の物であり、そのいずれも昭和54年に殺害された久我利彦さん、昭和55年に殺害された日野豪君の物とは一致しない事から、この血痕は犯人の物か、まだ発見されていない別の被害者の物である可能性が高いとして、詳しい分析を急いでいる。またこの血痕は、先日遺体となって発見された日野滋さん、久我操子さんの血液とも一致しないとの事。
27 ◆a9PA
平成7年7月18日 阿嵩埼市中央署が公開した日野豪君の遺留品一覧
以下、現場から発見された日野豪君の物とみられるランドセルの中身
・国語の教科書ノート
・算数の教科書ノート
・理科の教科書ノート
・筆記用具
・らくがき帳
・飴玉6つ
・昭和55年4月13日に配られたプリント及びテスト用紙
・図書室から借りたと思われる阿嵩埼市観光マップ
以下、現場から発見された日野豪君の物とみられるランドセルの中身
・国語の教科書ノート
・算数の教科書ノート
・理科の教科書ノート
・筆記用具
・らくがき帳
・飴玉6つ
・昭和55年4月13日に配られたプリント及びテスト用紙
・図書室から借りたと思われる阿嵩埼市観光マップ
28 ◆a9PA
(1/3)
平成7年7月19日 ▲▲テレビの番組のインタビューより
日野綾子「ええ…娘も孫も、みんな逝ってしまって、もし克也さんが居てくれたら──分かってます、それでも、防ぎようの無い事だったのかもって…」
スタッフ「それで──娘さんの日記なんですが…」
日野綾子「あ、はい…、これ──です。本当はあんまり見せたくないんですよ。娘が大切にしていた、隠していたほどの日記なんですから、でもねぇ、なんか不気味で、恐ろしくて恐ろしくて、でももっと恐ろしいのは犯人なんです。だから──私、これを持っているだけで怖いんですよ…、お願いします…」
─日野綾子、近くのテーブルに置かれていた茶色の日記を取りだし、スタッフに渡す。
スタッフ「読んでもよろしいですか──?」
日野綾子、うなづく。
平成7年7月19日 ▲▲テレビの番組のインタビューより
日野綾子「ええ…娘も孫も、みんな逝ってしまって、もし克也さんが居てくれたら──分かってます、それでも、防ぎようの無い事だったのかもって…」
スタッフ「それで──娘さんの日記なんですが…」
日野綾子「あ、はい…、これ──です。本当はあんまり見せたくないんですよ。娘が大切にしていた、隠していたほどの日記なんですから、でもねぇ、なんか不気味で、恐ろしくて恐ろしくて、でももっと恐ろしいのは犯人なんです。だから──私、これを持っているだけで怖いんですよ…、お願いします…」
─日野綾子、近くのテーブルに置かれていた茶色の日記を取りだし、スタッフに渡す。
スタッフ「読んでもよろしいですか──?」
日野綾子、うなづく。
29 ◆a9PA
(2/3)
スタッフ「読みます。──息子があんな形で発見されたのにはきっと理由があるはずだ。そうでなくては、私はもう狂ってしまいそうだ。あれだけ活発に動き回っていた息子はもう居ない。変わり果て、バラバラにされ、葬儀のために縫合された息子の体を抱き上げて私は呆然とした。息子の体はぬいぐるみのように軽かった。手足の中には支えが入っているのか、引きつったように硬い。そして息子の腹は中にはワタが詰まっているように不気味に柔らかかった。私は悲鳴を上げて息子を放り投げてしまった。息子は軽い音を立てて床に転がった。本当にぬいぐるみのようだった。隣に居た葬儀の人が言った。体の中にはワタが入っています。その通りだった。息子の内臓は胃と食道を除いてすべて持ち去られてしまったのだ。解剖の時、息子の腹を開いた人は見たらしい。体の中に胃と、それに繋がる食道だけがぶら下がっているのを。私はそれを想像して卒倒した──」
─スタッフの顔色が青くなっていく。
スタッフ「あれは息子ではない。息子の形をしたぬいぐるみなのだ。私はぬいぐるみを棺に入れてそのまま火葬した。息子ではない、息子の形をしたぬいぐるみを私は葬儀している。これは誰の葬式なのか分からなくなっている。私は何を埋葬すればいいんだろう。渡された骨壷には誰が入っているのだろう。息子か、ワタか、ああ、息子はどこに行ってしまったんだろう。息子を連れ去った犯人が憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い…」
スタッフ「読みます。──息子があんな形で発見されたのにはきっと理由があるはずだ。そうでなくては、私はもう狂ってしまいそうだ。あれだけ活発に動き回っていた息子はもう居ない。変わり果て、バラバラにされ、葬儀のために縫合された息子の体を抱き上げて私は呆然とした。息子の体はぬいぐるみのように軽かった。手足の中には支えが入っているのか、引きつったように硬い。そして息子の腹は中にはワタが詰まっているように不気味に柔らかかった。私は悲鳴を上げて息子を放り投げてしまった。息子は軽い音を立てて床に転がった。本当にぬいぐるみのようだった。隣に居た葬儀の人が言った。体の中にはワタが入っています。その通りだった。息子の内臓は胃と食道を除いてすべて持ち去られてしまったのだ。解剖の時、息子の腹を開いた人は見たらしい。体の中に胃と、それに繋がる食道だけがぶら下がっているのを。私はそれを想像して卒倒した──」
─スタッフの顔色が青くなっていく。
スタッフ「あれは息子ではない。息子の形をしたぬいぐるみなのだ。私はぬいぐるみを棺に入れてそのまま火葬した。息子ではない、息子の形をしたぬいぐるみを私は葬儀している。これは誰の葬式なのか分からなくなっている。私は何を埋葬すればいいんだろう。渡された骨壷には誰が入っているのだろう。息子か、ワタか、ああ、息子はどこに行ってしまったんだろう。息子を連れ去った犯人が憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い…」
30 ◆a9PA
(3/3)
─スタッフ、憎いとびっしり書き込まれたページをカメラに見せる。
スタッフ「息子の顔が最近思い出せない。あの印のせいだ。息子の額には“正”という印が刃物によって刻まれていた。その隣には正の途中のか、三つの線が刻まれていた。犯人は何を数えていたのだろう。数えるだけのために、息子は額にこんな傷をつけられて、ああ、息子の顔が思い出せない。息子の顔を思い出したいのに私の脳裏にはあの傷跡だけが浮かび上がってくるのだ。そして、息子の鼻からは丸められたおふだが溢れ出てくる。そんな悪夢をもう何度見たのだろう。助けて神様」
─スタッフの手が震える。
スタッフ「最後のページです。最後のページには一言だけ、こう書かれています」
─スタッフが再びカメラに手帳を向ける。真っ白いページに一言書かれている。
[ やっとつきとめた ]
─突然笑い声。カメラがそちらへ向くと日野綾子が大声で笑っている。
暗転、映像が終わる。
─スタッフ、憎いとびっしり書き込まれたページをカメラに見せる。
スタッフ「息子の顔が最近思い出せない。あの印のせいだ。息子の額には“正”という印が刃物によって刻まれていた。その隣には正の途中のか、三つの線が刻まれていた。犯人は何を数えていたのだろう。数えるだけのために、息子は額にこんな傷をつけられて、ああ、息子の顔が思い出せない。息子の顔を思い出したいのに私の脳裏にはあの傷跡だけが浮かび上がってくるのだ。そして、息子の鼻からは丸められたおふだが溢れ出てくる。そんな悪夢をもう何度見たのだろう。助けて神様」
─スタッフの手が震える。
スタッフ「最後のページです。最後のページには一言だけ、こう書かれています」
─スタッフが再びカメラに手帳を向ける。真っ白いページに一言書かれている。
[ やっとつきとめた ]
─突然笑い声。カメラがそちらへ向くと日野綾子が大声で笑っている。
暗転、映像が終わる。
31 ◆a9PA
(1/4)
平成7年7月22日 週刊□□より
「おぞましい凶行!これが阿嵩埼第三の事件のすべてだ!」
警察の懸命な捜査にも関わらず、未だ証拠の一つすら挙がってこない阿嵩埼事件。阿嵩埼市近辺では連続して発生した恐るべき事件に人々の不安は増すばかりだ。そこで我々は独自の取材で今回発生した第三の事件を徹底分析。犯行の手口から警察によって隠されてきた事実まで、包み隠さず公表したいと思う。
第三の事件の被害者は竹尻光子さん、阿嵩埼市内にある某貿易会社で働く34歳女性だ。彼女は昭和55年に発生した日野豪君殺害事件の第一発見者でもある。犯人は犯行から15年も経った今になって、竹尻さんを殺害したのか。
平成7年7月22日 週刊□□より
「おぞましい凶行!これが阿嵩埼第三の事件のすべてだ!」
警察の懸命な捜査にも関わらず、未だ証拠の一つすら挙がってこない阿嵩埼事件。阿嵩埼市近辺では連続して発生した恐るべき事件に人々の不安は増すばかりだ。そこで我々は独自の取材で今回発生した第三の事件を徹底分析。犯行の手口から警察によって隠されてきた事実まで、包み隠さず公表したいと思う。
第三の事件の被害者は竹尻光子さん、阿嵩埼市内にある某貿易会社で働く34歳女性だ。彼女は昭和55年に発生した日野豪君殺害事件の第一発見者でもある。犯人は犯行から15年も経った今になって、竹尻さんを殺害したのか。
32 ◆a9PA
(2/4)
竹尻さんの体には第一第二の事件の被害者と同様の拷問を受けた痕跡があり、手足の骨を砕かれ、鼓膜の破壊の痕跡などが見られた。だが、第一第二の事件とは違う部分もあった。それは眼球に加えられた拷問の痕跡である。第一第二の事件の被害者には眼球に瞬間接着剤を垂らすという拷問が加えられていたが、今回の被害者竹尻さんには別の拷問が加えられていたことが捜査関係者の話から明らかになったのである。それはあまりに残酷で、人間の仕業とは思えない残虐なものであった。
発見された竹尻さんの遺体には、なんと両のまぶたが存在しなかったのである。ハサミのようなもので竹尻さんのまぶたは切断され、眼球が完全に露出していたのである。それだけでは無い。露出した眼球には錆びた鉄釘が合計13本も刺しこまれていたというのだ。恐怖にまぶたを閉じる事もできず、竹尻さんは視界がはっきりとしたまま眼球に鉄釘を押しこまれていったのだろうか──?また、切り取られた竹尻さんのまぶたは驚くべき場所から発見されている。それは──彼女の胃の中からである。犯人は切り取ったまぶたを竹尻さん本人に食べさせたのである。胃の中から発見された竹尻さんのまぶたは消化された形跡が残されており、それまで彼女が生存していた事を示している。
竹尻さんの体には第一第二の事件の被害者と同様の拷問を受けた痕跡があり、手足の骨を砕かれ、鼓膜の破壊の痕跡などが見られた。だが、第一第二の事件とは違う部分もあった。それは眼球に加えられた拷問の痕跡である。第一第二の事件の被害者には眼球に瞬間接着剤を垂らすという拷問が加えられていたが、今回の被害者竹尻さんには別の拷問が加えられていたことが捜査関係者の話から明らかになったのである。それはあまりに残酷で、人間の仕業とは思えない残虐なものであった。
発見された竹尻さんの遺体には、なんと両のまぶたが存在しなかったのである。ハサミのようなもので竹尻さんのまぶたは切断され、眼球が完全に露出していたのである。それだけでは無い。露出した眼球には錆びた鉄釘が合計13本も刺しこまれていたというのだ。恐怖にまぶたを閉じる事もできず、竹尻さんは視界がはっきりとしたまま眼球に鉄釘を押しこまれていったのだろうか──?また、切り取られた竹尻さんのまぶたは驚くべき場所から発見されている。それは──彼女の胃の中からである。犯人は切り取ったまぶたを竹尻さん本人に食べさせたのである。胃の中から発見された竹尻さんのまぶたは消化された形跡が残されており、それまで彼女が生存していた事を示している。
33 ◆a9PA
(3/4)
彼女の遺体に加えられていた拷問はそれだけではない。発見された彼女の遺体には両腕が無かったのである。第二の事件で殺害された日野豪君は頭、両腕、両足が切断されていたが、竹尻さんは両腕のみが切断されていたのである。それもただ切断されたのではない。後に発見された彼女の両腕の切断面から、彼女の両腕は鋭利な刃物でも、日野豪君の時に使用されたと思われるノコギリのような物で切断されたわけでもなく、引き千切られていた事が判明したのである。
専門家に話を聞いたところ、人間の皮膚は伸縮性があるためかなり丈夫であり、それを引き千切るには相当な力が必要であるという。列車事故などでも皮膚のみが引き伸ばされ、内部の組織のみが切断されていたというケースも存在するのだという。ならば、いったい彼女の両腕はどのようにして切断されたのだろうか。しかし、もっとも恐ろしいのは──彼女の切断された両腕からは生活反応が出ていた、という点だろう。生活反応とは生きている状態でつけられた傷のみに出る──
(略)
彼女の遺体に加えられていた拷問はそれだけではない。発見された彼女の遺体には両腕が無かったのである。第二の事件で殺害された日野豪君は頭、両腕、両足が切断されていたが、竹尻さんは両腕のみが切断されていたのである。それもただ切断されたのではない。後に発見された彼女の両腕の切断面から、彼女の両腕は鋭利な刃物でも、日野豪君の時に使用されたと思われるノコギリのような物で切断されたわけでもなく、引き千切られていた事が判明したのである。
専門家に話を聞いたところ、人間の皮膚は伸縮性があるためかなり丈夫であり、それを引き千切るには相当な力が必要であるという。列車事故などでも皮膚のみが引き伸ばされ、内部の組織のみが切断されていたというケースも存在するのだという。ならば、いったい彼女の両腕はどのようにして切断されたのだろうか。しかし、もっとも恐ろしいのは──彼女の切断された両腕からは生活反応が出ていた、という点だろう。生活反応とは生きている状態でつけられた傷のみに出る──
(略)
34 ◆a9PA
(4/4)
──しかし、殺された竹尻さんは最後に我々にメッセージを残してくれていた。彼女の遺留品から発見されたポケベルには何者かのメッセージが残されていたのである。それが彼女が拉致された時に送られてきた物なのか、それとも彼女自身が何らかの方法で入力したのかは分からない。だが第一の事件の被害者久我利彦さんが自宅の留守番電話にメッセージを残していた点から、彼女がその電話を使いメッセージを残したという可能性はゼロではない。──公開しよう、以下の文章が彼女のポケベルに残されていたメッセージである。
[S2T2D1S2K1]
[主人は冷たい土の中に]
暗号とも取れるこれらのメッセージが一体何を意味するのか。それは殺された竹尻さんだけが知っているのかもしれない──(以下略)
──しかし、殺された竹尻さんは最後に我々にメッセージを残してくれていた。彼女の遺留品から発見されたポケベルには何者かのメッセージが残されていたのである。それが彼女が拉致された時に送られてきた物なのか、それとも彼女自身が何らかの方法で入力したのかは分からない。だが第一の事件の被害者久我利彦さんが自宅の留守番電話にメッセージを残していた点から、彼女がその電話を使いメッセージを残したという可能性はゼロではない。──公開しよう、以下の文章が彼女のポケベルに残されていたメッセージである。
[S2T2D1S2K1]
[主人は冷たい土の中に]
暗号とも取れるこれらのメッセージが一体何を意味するのか。それは殺された竹尻さんだけが知っているのかもしれない──(以下略)
35 ◆a9PA
(1/2)
平成7年7月29日 ××スポーツ新聞より
「点と点を繋ぐ真実の線、阿嵩埼事件の隠された“点”に迫る!」
先日殺害され──(略)
──今回、我々は他紙が掴んでいない重要な情報を捜査関係者から聞き出す事に成功した。独占スクープ、阿嵩埼事件の犯人に繋がる重要な証拠がこれだ!
今回話を聞く事が出来たのは阿嵩埼事件の竹尻光子さん殺害事件の第一発見者の一人、K氏である。彼は近隣住民からの廃屋からの異臭の通報を受け、遺体を発見した。共に遺体を発見したS氏は直後に発狂、現在も精神病院に入院している。ここからは彼の証言をお読みいただきたいと思う。
K氏「あれは恐ろしい体験でした。警察官として恥ずかしい事ですが、今思い出しても身震いが止まりません…それほどあの廃屋は恐怖に満ちていました。私と相棒のSはあの日、出動要請を受け廃屋に向かいました。その時はSはまだ正常で、なにもおかしな所はありませんでした。一部報道にあったような酒を飲んでいたなどという事はまったくありません。私達は当然ながらシラフでした。現場に到着した時には、もう異臭は漂っていました。腐臭とはその時は分かりませんでした。悪意の篭ったどす黒い匂いの瘴気が漂っているような、そのような感覚がしました。私とSは口と鼻を制服の裾で塞ぎながら、廃屋に足を踏み入れました。もちろん声はかけましたが何の反応も無く──このままにしておく事も出来ませんでしたから。廃屋の中は更に強烈な腐臭に満ちていて、私達は呼吸する事もままなりませんでした。廃屋の壁には何かをぶちまけたようなシミがあちこちに広がっていて、のちの調査でそれがすべて何者かの血液であることが判明するのですが──、そして私達は被害者である竹尻光子さんの遺体を発見したのです。竹尻さんの遺体は両足にロープを繋がれ、天井から吊るされていました。
平成7年7月29日 ××スポーツ新聞より
「点と点を繋ぐ真実の線、阿嵩埼事件の隠された“点”に迫る!」
先日殺害され──(略)
──今回、我々は他紙が掴んでいない重要な情報を捜査関係者から聞き出す事に成功した。独占スクープ、阿嵩埼事件の犯人に繋がる重要な証拠がこれだ!
今回話を聞く事が出来たのは阿嵩埼事件の竹尻光子さん殺害事件の第一発見者の一人、K氏である。彼は近隣住民からの廃屋からの異臭の通報を受け、遺体を発見した。共に遺体を発見したS氏は直後に発狂、現在も精神病院に入院している。ここからは彼の証言をお読みいただきたいと思う。
K氏「あれは恐ろしい体験でした。警察官として恥ずかしい事ですが、今思い出しても身震いが止まりません…それほどあの廃屋は恐怖に満ちていました。私と相棒のSはあの日、出動要請を受け廃屋に向かいました。その時はSはまだ正常で、なにもおかしな所はありませんでした。一部報道にあったような酒を飲んでいたなどという事はまったくありません。私達は当然ながらシラフでした。現場に到着した時には、もう異臭は漂っていました。腐臭とはその時は分かりませんでした。悪意の篭ったどす黒い匂いの瘴気が漂っているような、そのような感覚がしました。私とSは口と鼻を制服の裾で塞ぎながら、廃屋に足を踏み入れました。もちろん声はかけましたが何の反応も無く──このままにしておく事も出来ませんでしたから。廃屋の中は更に強烈な腐臭に満ちていて、私達は呼吸する事もままなりませんでした。廃屋の壁には何かをぶちまけたようなシミがあちこちに広がっていて、のちの調査でそれがすべて何者かの血液であることが判明するのですが──、そして私達は被害者である竹尻光子さんの遺体を発見したのです。竹尻さんの遺体は両足にロープを繋がれ、天井から吊るされていました。
36 ◆a9PA
(2/2)
まぶたの無い眼球が零れ落ちそうなほど飛び出して私達を見つめていました。その下、彼女の額には何か刃物で付けられたような傷がありました。それは明らかに文字で──『失敗』と書かれていたんです。そして、同じようにぶら下がっているはずの彼女の両腕は──ありませんでした。切断されていたんです。両腕はのちにその廃屋の押し入れから発見されました。まるでゴミでも捨てるようにぞんざいに──あまりに酷い…。私は吐き気を催して廃屋の窓を空け、そこからゲーゲーと吐いてしまいました。Sはそんな私の背中をさすって、大丈夫か?と声をかけてくれたんです。──はい、Sは死体を見てもまだ冷静な方でした。吐いたのもSではなく私だったんです。私は何度も窓から汚物を吐きながら、気遣ってくれているSにか感謝していたんです。──ところが、すぐにSの様子がおかしくなったんです。先ほどまで冷静だったSの、私の背中をさすっている手がぴたりと止まって、Sが叫び出したんです。『いやだ、俺はいやだ、一緒にするな』──と。それは明らかに第三者に向かって叫んでいました。私が慌ててSの方を振り返ると、Sはもう狂っていたんです。髪の毛をぶちぶちと引きぬいて『えるなはー、えるなはー』と何度も叫んでいました…。これが私の見たすべてです…」
K氏はそう語り終えると、私達に一礼をして取材現場から早々に立ち去ってしまいました。これが一体何を意味するのか──(略)
──この事件にはまだ分からない点が存在します。それは彼女の体内から見つかった謎のメッセージです。先ほどK氏が語ってくれたように、竹尻さんのまぶたは犯人によって切り取られていたわけですが、露出した彼女の眼球の裏側から犯人が挿入したと思われるメモの切れ端が発見されたのです。メモにはある記号が書きこまれていたといいます。何が書かれていたのか──それは公開されてはおりませんが、私達がよく眼にする記号であると、関係者の一人は語っています。
(以下略)
まぶたの無い眼球が零れ落ちそうなほど飛び出して私達を見つめていました。その下、彼女の額には何か刃物で付けられたような傷がありました。それは明らかに文字で──『失敗』と書かれていたんです。そして、同じようにぶら下がっているはずの彼女の両腕は──ありませんでした。切断されていたんです。両腕はのちにその廃屋の押し入れから発見されました。まるでゴミでも捨てるようにぞんざいに──あまりに酷い…。私は吐き気を催して廃屋の窓を空け、そこからゲーゲーと吐いてしまいました。Sはそんな私の背中をさすって、大丈夫か?と声をかけてくれたんです。──はい、Sは死体を見てもまだ冷静な方でした。吐いたのもSではなく私だったんです。私は何度も窓から汚物を吐きながら、気遣ってくれているSにか感謝していたんです。──ところが、すぐにSの様子がおかしくなったんです。先ほどまで冷静だったSの、私の背中をさすっている手がぴたりと止まって、Sが叫び出したんです。『いやだ、俺はいやだ、一緒にするな』──と。それは明らかに第三者に向かって叫んでいました。私が慌ててSの方を振り返ると、Sはもう狂っていたんです。髪の毛をぶちぶちと引きぬいて『えるなはー、えるなはー』と何度も叫んでいました…。これが私の見たすべてです…」
K氏はそう語り終えると、私達に一礼をして取材現場から早々に立ち去ってしまいました。これが一体何を意味するのか──(略)
──この事件にはまだ分からない点が存在します。それは彼女の体内から見つかった謎のメッセージです。先ほどK氏が語ってくれたように、竹尻さんのまぶたは犯人によって切り取られていたわけですが、露出した彼女の眼球の裏側から犯人が挿入したと思われるメモの切れ端が発見されたのです。メモにはある記号が書きこまれていたといいます。何が書かれていたのか──それは公開されてはおりませんが、私達がよく眼にする記号であると、関係者の一人は語っています。
(以下略)
37 ◆a9PA
平成7年8月2日 □□テレビの番組のインタビューより
─スタッフ「それでは、竹尻さんの様子は失踪する数日前からおかしかったと──そういう事なんですね?」
─友人「はい…。なんだかいきなり服装が地味になって、以前はお化粧とかもきっちりとするような、どちらかというと派手好きな子だったんです…。でも、数日前からいきなり地味っていうか、もう地味すぎるぐらいの服装になって──」
─スタッフ「何か心当たりなどはあるんですか?」
─友人「いえ…、あ、でも、彼女その頃に果物ナイフを買って、会社にこっそり持ってきてたみたいなんです。同僚がトイレで果物ナイフを洗っている竹尻さんを見たって……」
─スタッフ「ほう…」
─友人「その後からなんです。竹尻さんおかしくなっちゃったみたいで…」
─スタッフ「おかしく?」
─友人「はい…、なんか昼食の時に言うんですよ。物凄い笑顔で──神様が私を呼んでいるのが見える──って…」
─スタッフ「神様…ですか…?」
(以下略)
─スタッフ「それでは、竹尻さんの様子は失踪する数日前からおかしかったと──そういう事なんですね?」
─友人「はい…。なんだかいきなり服装が地味になって、以前はお化粧とかもきっちりとするような、どちらかというと派手好きな子だったんです…。でも、数日前からいきなり地味っていうか、もう地味すぎるぐらいの服装になって──」
─スタッフ「何か心当たりなどはあるんですか?」
─友人「いえ…、あ、でも、彼女その頃に果物ナイフを買って、会社にこっそり持ってきてたみたいなんです。同僚がトイレで果物ナイフを洗っている竹尻さんを見たって……」
─スタッフ「ほう…」
─友人「その後からなんです。竹尻さんおかしくなっちゃったみたいで…」
─スタッフ「おかしく?」
─友人「はい…、なんか昼食の時に言うんですよ。物凄い笑顔で──神様が私を呼んでいるのが見える──って…」
─スタッフ「神様…ですか…?」
(以下略)
38 ◆a9PA
平成7年8月5日 ××新聞社会面より
「阿嵩埼事件関係者変死事件 死因分からず」
阿嵩埼市中央署は7月9日に発見された久我操子さん、日野滋さん両名の死因について、解剖の結果、はっきりとした死因が解明できなかった事を明らかにした。二人の遺体は夏場の──(略)
「阿嵩埼事件関係者変死事件 死因分からず」
阿嵩埼市中央署は7月9日に発見された久我操子さん、日野滋さん両名の死因について、解剖の結果、はっきりとした死因が解明できなかった事を明らかにした。二人の遺体は夏場の──(略)
39 ◆a9PA
平成8年1月26日出版 「あなたの町にも存在する?心霊スポット集」より
「ロッカーから聞こえる亡霊の声」
千葉県某駅にあるロッカー。人々が毎日のように利用する冷たい鉄の箱の中にも心霊スポットはひっそりとその身を隠すように存在している。我々がそれに気づく時──それは罠に掛かった獲物のように恐怖にその表情を歪ませる瞬間なのかもしれない。
このロッカーは昔、ある殺人事件で子供の死体が発見されたという恐るべき過去を持つ。その子供は体をバラバラに切断され、このロッカーの中に押しこまれていたのだ。犯人は未だに逮捕されておらず、無念に苦しむ子供の魂は未だに狭い箱の中に押し込められているのだろうか。
このロッカーを利用したことのあるAさんの話だ。Aさんは朝、会社に向かう途中、必ずこのロッカーを利用していた。Aさんは読書家であり、通勤で電車に揺られている間は本が手放せない。だが新刊ともなれば仕事カバンの中に入れておくにはかさばってしまう。そこで彼が利用していたのがロッカーだった。その日読んだ本をロッカーの中に入れ、帰るときにはまた取り出す。他にも会社に持っていくには邪魔になる物を押しこむのにも使える。Aさんは毎日それを繰り返していた。だが、Aさんはついにその呪いのロッカーに手をかけてしまったのだ。
Aさんが残業で遅くなった夜、いつものように本を入れておいたロッカーを空けた時だ。ロッカーの中から何かが腐ったような腐臭が漂ってきたのである。思わず口を塞いだAさんの耳に、子供の声が響いた。
「おばちゃん、僕の──を返してよ」
Aさんは慌てて本を取り出すと、駅のホームへと駆け出したという。しかし、彼がロッカーから取り出した本に染みついていた腐ったような匂いは、何をしても取れる事は無かったという。
「ロッカーから聞こえる亡霊の声」
千葉県某駅にあるロッカー。人々が毎日のように利用する冷たい鉄の箱の中にも心霊スポットはひっそりとその身を隠すように存在している。我々がそれに気づく時──それは罠に掛かった獲物のように恐怖にその表情を歪ませる瞬間なのかもしれない。
このロッカーは昔、ある殺人事件で子供の死体が発見されたという恐るべき過去を持つ。その子供は体をバラバラに切断され、このロッカーの中に押しこまれていたのだ。犯人は未だに逮捕されておらず、無念に苦しむ子供の魂は未だに狭い箱の中に押し込められているのだろうか。
このロッカーを利用したことのあるAさんの話だ。Aさんは朝、会社に向かう途中、必ずこのロッカーを利用していた。Aさんは読書家であり、通勤で電車に揺られている間は本が手放せない。だが新刊ともなれば仕事カバンの中に入れておくにはかさばってしまう。そこで彼が利用していたのがロッカーだった。その日読んだ本をロッカーの中に入れ、帰るときにはまた取り出す。他にも会社に持っていくには邪魔になる物を押しこむのにも使える。Aさんは毎日それを繰り返していた。だが、Aさんはついにその呪いのロッカーに手をかけてしまったのだ。
Aさんが残業で遅くなった夜、いつものように本を入れておいたロッカーを空けた時だ。ロッカーの中から何かが腐ったような腐臭が漂ってきたのである。思わず口を塞いだAさんの耳に、子供の声が響いた。
「おばちゃん、僕の──を返してよ」
Aさんは慌てて本を取り出すと、駅のホームへと駆け出したという。しかし、彼がロッカーから取り出した本に染みついていた腐ったような匂いは、何をしても取れる事は無かったという。
40 ◆a9PA
平成8年6月21日 阿嵩埼中央署への110番通報のテープより
──こちら110番です。事件ですか?事故ですか?
──あの…、ごめんなさい、事件、の方だと思います。はい。
──事件を目撃された方ですか?それとも当事者ですか?被害者ですか?
──あ、あの、被害者です。私、あの、阿嵩埼市の竹下町に住んでいる立花千絵という者なんですけど…、家に帰る途中から、誰かが私のあとを追いかけてくるんです。今は家に戻って、鍵を掛けて、でも、不安で、怖くて…。
──正確な住所をお聞きしてもよろしいでしょうか?
──はい。千葉県阿嵩埼市竹下町の7-44-5181です。
──犯人を目撃されましたか?
──いえ、でもなんか怖くて…途中、女の人の悲鳴みたいなものも聞こえたような気がしたし…誰か襲われたのかもしれません…!
──落ちついてください。鍵は掛けたんですね。
──はい。窓も全部。
──では、今から警察官がそちらに向かいます。もう一度、あなたの名前、電話番号をお聞きしてもよろしいですか?
──はい。名前は立花千絵です。電話番号は04──(以下略)
──こちら110番です。事件ですか?事故ですか?
──あの…、ごめんなさい、事件、の方だと思います。はい。
──事件を目撃された方ですか?それとも当事者ですか?被害者ですか?
──あ、あの、被害者です。私、あの、阿嵩埼市の竹下町に住んでいる立花千絵という者なんですけど…、家に帰る途中から、誰かが私のあとを追いかけてくるんです。今は家に戻って、鍵を掛けて、でも、不安で、怖くて…。
──正確な住所をお聞きしてもよろしいでしょうか?
──はい。千葉県阿嵩埼市竹下町の7-44-5181です。
──犯人を目撃されましたか?
──いえ、でもなんか怖くて…途中、女の人の悲鳴みたいなものも聞こえたような気がしたし…誰か襲われたのかもしれません…!
──落ちついてください。鍵は掛けたんですね。
──はい。窓も全部。
──では、今から警察官がそちらに向かいます。もう一度、あなたの名前、電話番号をお聞きしてもよろしいですか?
──はい。名前は立花千絵です。電話番号は04──(以下略)
41 ◆a9PA
(1/2)
平成8年7月9日 週刊××より
「新たな阿嵩埼事件か?事件関係者謎の失踪と新たな謎!」
三人もの犠牲者と、二人の変死を出した未だ記憶に新しい阿嵩埼事件。今回、私達の取材で非常に気になる事が分かってきた。なんと昭和54年に殺害された久我利彦さんと、平成7年に変死した久我操子さんの息子でもあるSさんが先月から失踪しているというのだ。
Sさんは父親である久我利彦さんの死後、母親である久我操子さんと二人で暮らしてきたが、昭和54年に久我操子さんが第二の被害者である日野豪君の母親、日野滋さんと彼女の自宅で変死してからは、親族の家に引き取られ、のちに市内のマンションで一人暮しを始めていた。
しかし先月の終わりに、Sさんの行方がわからなくなっていると親族から警察に捜索願が出されていたというのだ。既にSさんが失踪してから二週間以上が経過しており、警察はSさんが何らかの事件に巻き込まれた可能性もあるとみて捜査を始めている。
阿嵩埼事件の被害者が共に前の事件の関係者である事が多い点、また失踪してから数日後に拷問された遺体が発見されたケースが多い点からも警察の早急な捜査が求められる。
(略)
また、失踪したSさんには、以前別の件で警察が出動していたいう事実が近隣住民からの取材から明らかになってきた。
それは先月10日、Sさんの自宅から女性の悲鳴が聞こえると近隣住民から通報があり、警察が出動していたというのだ。近隣住民の話によると、それは絶叫に近いような女の悲鳴で「ギャー!ギャー!」と物凄い声だったという。しかし、駆け付けた警察官がSさんの同意で中に入ったが、女の姿はどこにも無かったという。
私達はSさんの親戚とマンションの管理人の許可を受け、失踪したSさんの部屋に入る事に成功した。
(略)
平成8年7月9日 週刊××より
「新たな阿嵩埼事件か?事件関係者謎の失踪と新たな謎!」
三人もの犠牲者と、二人の変死を出した未だ記憶に新しい阿嵩埼事件。今回、私達の取材で非常に気になる事が分かってきた。なんと昭和54年に殺害された久我利彦さんと、平成7年に変死した久我操子さんの息子でもあるSさんが先月から失踪しているというのだ。
Sさんは父親である久我利彦さんの死後、母親である久我操子さんと二人で暮らしてきたが、昭和54年に久我操子さんが第二の被害者である日野豪君の母親、日野滋さんと彼女の自宅で変死してからは、親族の家に引き取られ、のちに市内のマンションで一人暮しを始めていた。
しかし先月の終わりに、Sさんの行方がわからなくなっていると親族から警察に捜索願が出されていたというのだ。既にSさんが失踪してから二週間以上が経過しており、警察はSさんが何らかの事件に巻き込まれた可能性もあるとみて捜査を始めている。
阿嵩埼事件の被害者が共に前の事件の関係者である事が多い点、また失踪してから数日後に拷問された遺体が発見されたケースが多い点からも警察の早急な捜査が求められる。
(略)
また、失踪したSさんには、以前別の件で警察が出動していたいう事実が近隣住民からの取材から明らかになってきた。
それは先月10日、Sさんの自宅から女性の悲鳴が聞こえると近隣住民から通報があり、警察が出動していたというのだ。近隣住民の話によると、それは絶叫に近いような女の悲鳴で「ギャー!ギャー!」と物凄い声だったという。しかし、駆け付けた警察官がSさんの同意で中に入ったが、女の姿はどこにも無かったという。
私達はSさんの親戚とマンションの管理人の許可を受け、失踪したSさんの部屋に入る事に成功した。
(略)
42 ◆a9PA
(2/2)
私達が最後に目をつけたのが、居間に備え付けられていた留守番電話だった。録音ランプは点灯していなかったが、何か情報がつかめるかもしれない。私達は願うような気持ちで入っていたテープを巻き戻し、再生ボタンを押した。そして──私達は驚愕し、恐怖した。なんと、テープには何百件もの無言電話が録音されていたのである。機械的な女のアナウンスと、無言、そして電話を切る音。それらが何百回も繰り返し録音されていたのである。
しかし、所々声が入力されている物もあった。次はその声を文章に起こした物である。所々テープが痛んでいた事からはっきりとした内容は分からなかったが、Sさんの失踪に関わっている可能性もあるとみて、ここで公開したいと思う。
6月2日 [─ミサマ──]
6月5日 [─エモアトヲ──エル──]
6月10日[─トハエルニ──ナイ──カマ──シ──]
6月15日[─ニイク──]
──以上のことから、Sさんが何らかの事件に巻き込まれた可能性は決して低く無く、警察による早期発見が重要であると思われる。あのような残虐な事件を私達はもう二度と耳にしたくないのだ──。
私達が最後に目をつけたのが、居間に備え付けられていた留守番電話だった。録音ランプは点灯していなかったが、何か情報がつかめるかもしれない。私達は願うような気持ちで入っていたテープを巻き戻し、再生ボタンを押した。そして──私達は驚愕し、恐怖した。なんと、テープには何百件もの無言電話が録音されていたのである。機械的な女のアナウンスと、無言、そして電話を切る音。それらが何百回も繰り返し録音されていたのである。
しかし、所々声が入力されている物もあった。次はその声を文章に起こした物である。所々テープが痛んでいた事からはっきりとした内容は分からなかったが、Sさんの失踪に関わっている可能性もあるとみて、ここで公開したいと思う。
6月2日 [─ミサマ──]
6月5日 [─エモアトヲ──エル──]
6月10日[─トハエルニ──ナイ──カマ──シ──]
6月15日[─ニイク──]
──以上のことから、Sさんが何らかの事件に巻き込まれた可能性は決して低く無く、警察による早期発見が重要であると思われる。あのような残虐な事件を私達はもう二度と耳にしたくないのだ──。
43 ◆a9PA
平成8年7月15日 ▲▲スポーツ新聞より
「失踪した久我昌司さん直筆の手紙を独占入手!」
(略)
『どうかあきらめてくださいお父さん
僕はそちらには行きたくありません。
どんなにどんなに頼まれても、
僕は絶対にそちらには行きたくありません。
もう電信柱の後ろから手招きするのはやめてください。
もう壁の隙間から僕の名前を呼ぶのはやめてください。
もう冷蔵庫の中で笑い声を上げるのはやめてください。
もう寝ている間に僕の爪をがりがり噛んで食べないでください。
止めてください。止めてにださい。やめてくだい
ゆめはぼくのものゆめはぼくのもの
おててつながないもうお父さんではないよ
たすけてたすけてたすけてたすけてたすてけけてけて
いいいいいいいいいややややややややややいいいいいいや
くくくくくくくくくくくるるるるるるるるるるる
ううううううううううううううううううううううううううう
ううううううううううううううううううううう
うううううううううううううううううううううううううう
うううううううううう え』
「失踪した久我昌司さん直筆の手紙を独占入手!」
(略)
『どうかあきらめてくださいお父さん
僕はそちらには行きたくありません。
どんなにどんなに頼まれても、
僕は絶対にそちらには行きたくありません。
もう電信柱の後ろから手招きするのはやめてください。
もう壁の隙間から僕の名前を呼ぶのはやめてください。
もう冷蔵庫の中で笑い声を上げるのはやめてください。
もう寝ている間に僕の爪をがりがり噛んで食べないでください。
止めてください。止めてにださい。やめてくだい
ゆめはぼくのものゆめはぼくのもの
おててつながないもうお父さんではないよ
たすけてたすけてたすけてたすけてたすてけけてけて
いいいいいいいいいややややややややややいいいいいいや
くくくくくくくくくくくるるるるるるるるるるる
ううううううううううううううううううううううううううう
ううううううううううううううううううううう
うううううううううううううううううううううううううう
うううううううううう え』
44 ◆a9PA
平成8年7月20日 □□新聞社会面より
「阿嵩埼事件の関係者宅から体の一部を発見」
19日午後11時45分ごろ、以前から行方が分からなくなっている千葉県阿嵩埼市在住の久我昌司さんの自宅から、久我さんの物ではない人体の一部が発見されたと阿嵩埼市中央署が発表した。発見された人体の一部は人間の耳たぶと見られ、警察が鑑定を急いでいる。発見された耳たぶは六枚で、最低でも三人以上の人間の物と見られている。久我昌司さんは昭和54年に殺害された──(略)
また久我昌司さんが最後に目撃された電話ボックスからも少量の血痕と毛髪が発見されており、阿嵩埼市中央署は発見された血痕と毛髪が久我昌司さん本人の物と断定しており、警察は引き続き久我昌司さんの捜索に力を注ぐと話している。
「阿嵩埼事件の関係者宅から体の一部を発見」
19日午後11時45分ごろ、以前から行方が分からなくなっている千葉県阿嵩埼市在住の久我昌司さんの自宅から、久我さんの物ではない人体の一部が発見されたと阿嵩埼市中央署が発表した。発見された人体の一部は人間の耳たぶと見られ、警察が鑑定を急いでいる。発見された耳たぶは六枚で、最低でも三人以上の人間の物と見られている。久我昌司さんは昭和54年に殺害された──(略)
また久我昌司さんが最後に目撃された電話ボックスからも少量の血痕と毛髪が発見されており、阿嵩埼市中央署は発見された血痕と毛髪が久我昌司さん本人の物と断定しており、警察は引き続き久我昌司さんの捜索に力を注ぐと話している。
45 ◆a9PA
平成8年8月3日 配られたチラシより
「人を探しています」
名前は管田一夫。
身長168cm 体重55kg
失踪時の服装は
黒いスーツ 茶色の革靴 黒いズボン
眼の下に大きなホクロがあります
情報お待ちしております。
千葉県阿嵩埼市竹下町7-84-8416
「人を探しています」
名前は管田一夫。
身長168cm 体重55kg
失踪時の服装は
黒いスーツ 茶色の革靴 黒いズボン
眼の下に大きなホクロがあります
情報お待ちしております。
千葉県阿嵩埼市竹下町7-84-8416
46 ◆a9PA
昭和31年2月12日出版 絵本「おりてきたかみさま」より抜粋
かみさまはみんながだいすきになりました
あかるいひとくらいひとにぎやかなひとわるいひと
どんなひとでもにんげんがだいすきなかみさまでした
だからかみさまはみんなといっしょにいきることをえらびました
かみさまはどんなときでもみんなといっしょです
いつしかそのまちはかみさまのすむまちになりました
みんながみんなかみさまになったのです
みんなかみさまのしるしをもらいました
みんなはよろこびました
でもそれはおおきなまちがいだったのです
かみさまはみんながだいすきになりました
あかるいひとくらいひとにぎやかなひとわるいひと
どんなひとでもにんげんがだいすきなかみさまでした
だからかみさまはみんなといっしょにいきることをえらびました
かみさまはどんなときでもみんなといっしょです
いつしかそのまちはかみさまのすむまちになりました
みんながみんなかみさまになったのです
みんなかみさまのしるしをもらいました
みんなはよろこびました
でもそれはおおきなまちがいだったのです
47 ◆a9PA
平成10年12月3日 ××新聞社会面より
「阿嵩埼市で不明男性保護」
3日午後7時15分ごろ、千葉県阿嵩埼市の商店街に全裸の男性が奇声を上げていると110番通報があり、駆け付けた警察官が商店街の建物の隙間に蹲っていた男性、椿真輔さんを阿嵩埼市中央署に保護した。
椿真輔さんは先月7日からデパートに買い物に出かけると自宅を出た後行方が分からなくなっており、家族が警察に捜索願を出していた。椿真輔さんの体には暴行を受けた痕跡があり、かなり衰弱していた為、現在警察病院がで治療を受けている。
阿嵩埼市中央署は椿真輔さんの体に加えられていた暴行が、昭和54年から平成7年にかけて発生した阿嵩埼市連続拷問殺人事件に類似している点が多い事から、同一犯の可能性もあるとみて捜査を進めている。
「阿嵩埼市で不明男性保護」
3日午後7時15分ごろ、千葉県阿嵩埼市の商店街に全裸の男性が奇声を上げていると110番通報があり、駆け付けた警察官が商店街の建物の隙間に蹲っていた男性、椿真輔さんを阿嵩埼市中央署に保護した。
椿真輔さんは先月7日からデパートに買い物に出かけると自宅を出た後行方が分からなくなっており、家族が警察に捜索願を出していた。椿真輔さんの体には暴行を受けた痕跡があり、かなり衰弱していた為、現在警察病院がで治療を受けている。
阿嵩埼市中央署は椿真輔さんの体に加えられていた暴行が、昭和54年から平成7年にかけて発生した阿嵩埼市連続拷問殺人事件に類似している点が多い事から、同一犯の可能性もあるとみて捜査を進めている。
48 ◆a9PA
平成10年12月4日 ××テレビの速報より
「阿嵩埼市で保護された男性が病院内で自殺した模様」
「阿嵩埼市で保護された男性が病院内で自殺した模様」
49 ◆a9PA
平成10年12月4日 ××テレビの番組より
─はい、こちら阿嵩埼市にある阿嵩埼警察病院前の──です。大変な事になりました。昨日警察に保護されました阿嵩埼事件の唯一の生き残りであると思われる椿真輔さんが、先ほど病室内で自殺を図り、死亡が確認されたという事です。死亡が確認されたという事です。
椿真輔さんは先月7日から行方が分からなくなっており、家族が捜索願を出していました。そして昨日、阿嵩埼真綿商店街にて全裸で奇声を上げている所を警察が保護、体に多数の暴行された痕があったことから、こちらの警察病院に保護、治療を受けている最中でした。
目撃者の話によりますと、椿さんは全裸でふらふらと商店街に入ってきたかと思うと、突然「もう生えません、もう生えません」「神様神様」などと意味不明な事を叫び出したという事です。では目撃者のインタビューをご覧下さい。
─女性「驚いたってもんじゃないわよぉ、いきなり叫び声が聞こえたかと思ったら、ガリガリに痩せた男が何か喚きながらふらふら歩いてくるんだもの。私はてっきり変質者だと思って、みんなと悲鳴あげて逃げちゃって──」
─女性「知らないよ。聞こえたのは悲鳴だけだったからね」
─男性「あー。変態だろ?違うの?だって腹になんか難しい字を書いてたしさぁ、青いペンキかなんかで、鎮魂の鎮?あれっぽい字をでかでかと書いて、ありゃ変態だね」
─男性「怖かったよそりゃ。だってあの男の人?目を閉じたまま歩いてくるもんだからさ、しかも耳がなくて──なんか赤茶色の肉の塊みたいなものが代わりにぶら下がってんだ。そりゃ怖いよねぇ。しかもだよ、両手をこう…こっちに見せるようにしながら…ああ、目が見えなかったのかねぇ、で、その両手がさ、穴だらけなんだよ。なんか生け花とか刺すやつあるだろ、それで何度も何度も刺したみたいに手のひらが穴だ──」
(以下略)
─はい、こちら阿嵩埼市にある阿嵩埼警察病院前の──です。大変な事になりました。昨日警察に保護されました阿嵩埼事件の唯一の生き残りであると思われる椿真輔さんが、先ほど病室内で自殺を図り、死亡が確認されたという事です。死亡が確認されたという事です。
椿真輔さんは先月7日から行方が分からなくなっており、家族が捜索願を出していました。そして昨日、阿嵩埼真綿商店街にて全裸で奇声を上げている所を警察が保護、体に多数の暴行された痕があったことから、こちらの警察病院に保護、治療を受けている最中でした。
目撃者の話によりますと、椿さんは全裸でふらふらと商店街に入ってきたかと思うと、突然「もう生えません、もう生えません」「神様神様」などと意味不明な事を叫び出したという事です。では目撃者のインタビューをご覧下さい。
─女性「驚いたってもんじゃないわよぉ、いきなり叫び声が聞こえたかと思ったら、ガリガリに痩せた男が何か喚きながらふらふら歩いてくるんだもの。私はてっきり変質者だと思って、みんなと悲鳴あげて逃げちゃって──」
─女性「知らないよ。聞こえたのは悲鳴だけだったからね」
─男性「あー。変態だろ?違うの?だって腹になんか難しい字を書いてたしさぁ、青いペンキかなんかで、鎮魂の鎮?あれっぽい字をでかでかと書いて、ありゃ変態だね」
─男性「怖かったよそりゃ。だってあの男の人?目を閉じたまま歩いてくるもんだからさ、しかも耳がなくて──なんか赤茶色の肉の塊みたいなものが代わりにぶら下がってんだ。そりゃ怖いよねぇ。しかもだよ、両手をこう…こっちに見せるようにしながら…ああ、目が見えなかったのかねぇ、で、その両手がさ、穴だらけなんだよ。なんか生け花とか刺すやつあるだろ、それで何度も何度も刺したみたいに手のひらが穴だ──」
(以下略)
50 ◆a9PA
平成10年12月5日 阿嵩埼市役所に提出された転居届より
転居届 提出年月日 平成10年12月5日
郵便物等の転送開始を希望する日時 平成10年12月24日
旧住所 千葉県阿嵩埼市竹下町7-41-1124
転居者氏名 水谷京平 / 水谷紀久子 / 水谷昭
引き続き旧住所にお住まいになる方はいますか? はい
引き続き旧住所にお住まいになる人数 2人
転居届 提出年月日 平成10年12月5日
郵便物等の転送開始を希望する日時 平成10年12月24日
旧住所 千葉県阿嵩埼市竹下町7-41-1124
転居者氏名 水谷京平 / 水谷紀久子 / 水谷昭
引き続き旧住所にお住まいになる方はいますか? はい
引き続き旧住所にお住まいになる人数 2人
51 ◆a9PA
(1/2)
平成10年12月10日 阿嵩埼市中央署記者会見より
─阿嵩埼市中央署署長
「ええ、先ほど申しました通り、今回自殺された椿真輔さんの体に残された暴行の痕からして、これは昭和54年から発生しております通称阿嵩埼事件と同一の犯行であると私達は断定いたします。椿さんの眼球には今までの事件と同様に瞬間接着剤が使用されており視界を奪われておりました。また犯人は椿さんの鼓膜を破壊した後、彼の耳をバーナーのような物で焼ききっている事が解剖の結果明らかになりました。手足は今までの犠牲者とは違い骨が砕かれていた──という事はありませんでしたが、何千個所にも及ぶ針のような物で付けられたと見られる穴が確認できました。これは赦しがたい犯行です」
(略)
「先ほどご質問がありましたが、椿さんは間違い無く自殺です。確かに被害者の椿さんは視覚と聴覚は奪われておりましたが、自殺は可能だったと我々は見ております。殺人の可能性はありません。椿さんは我々警察官、そして看護婦の目の前でこう──自分の口の中に手を──こう無理矢理に突っ込み、喉を内部から掻き毟り、出血多量で死亡しました。これは我々警察の失態であり──まことに申し訳無く思っております」
(略)
平成10年12月10日 阿嵩埼市中央署記者会見より
─阿嵩埼市中央署署長
「ええ、先ほど申しました通り、今回自殺された椿真輔さんの体に残された暴行の痕からして、これは昭和54年から発生しております通称阿嵩埼事件と同一の犯行であると私達は断定いたします。椿さんの眼球には今までの事件と同様に瞬間接着剤が使用されており視界を奪われておりました。また犯人は椿さんの鼓膜を破壊した後、彼の耳をバーナーのような物で焼ききっている事が解剖の結果明らかになりました。手足は今までの犠牲者とは違い骨が砕かれていた──という事はありませんでしたが、何千個所にも及ぶ針のような物で付けられたと見られる穴が確認できました。これは赦しがたい犯行です」
(略)
「先ほどご質問がありましたが、椿さんは間違い無く自殺です。確かに被害者の椿さんは視覚と聴覚は奪われておりましたが、自殺は可能だったと我々は見ております。殺人の可能性はありません。椿さんは我々警察官、そして看護婦の目の前でこう──自分の口の中に手を──こう無理矢理に突っ込み、喉を内部から掻き毟り、出血多量で死亡しました。これは我々警察の失態であり──まことに申し訳無く思っております」
(略)
52 ◆a9PA
(2/2)
「解剖の結果、今回死亡した椿真輔さんの体内から高濃度の覚せい剤が検出されました。これは常人ならば致死量に達する量であり、犯人が椿さんに定期的に注射していた物と思われます。この量を与えられも死亡しないほど耐性が出来るにはかなりの日時が必要となることから、失踪した直後から覚せい剤を投与されていた物と思われます。また覚せい剤の影響かは分かりませんが、椿さんは自分の事が分からないほど錯乱した状態であり、自分の事を何度も[くぇいさん]と呼んでいたという事です。また彼の体に書かれておりました──」
(略)
「失踪当日の椿真輔さんの足取りですが、椿さんは家族にデパートに行くと告げたのち、阿嵩埼市内にあるデパートの監視カメラにデパートに入っていく椿さんの姿が確認されております。ですが──どの監視カメラにもデパートから出て行く椿さんの姿は録画されておりませんでした。このデパートはすべての出入り口に監視カメラが設置されており、監視カメラに映らずにデパートから出る事は難しい事から、犯人は何らかの手口を持って椿さんをデパート外に出したと考えられます。また当日の店内アナウンスにおいて、迷子の呼び出しが行われているのですが、その時に呼び出された名前が、昭和54年に殺害された久我利彦さんの名前と一致しております。ただ約一ヶ月の事なので詳しい事は関係者は覚えてはいませんでした。この事につきましても犯人が何らかの意図で行った事であるとみて、引き続き捜査を進めたいと思います」
「解剖の結果、今回死亡した椿真輔さんの体内から高濃度の覚せい剤が検出されました。これは常人ならば致死量に達する量であり、犯人が椿さんに定期的に注射していた物と思われます。この量を与えられも死亡しないほど耐性が出来るにはかなりの日時が必要となることから、失踪した直後から覚せい剤を投与されていた物と思われます。また覚せい剤の影響かは分かりませんが、椿さんは自分の事が分からないほど錯乱した状態であり、自分の事を何度も[くぇいさん]と呼んでいたという事です。また彼の体に書かれておりました──」
(略)
「失踪当日の椿真輔さんの足取りですが、椿さんは家族にデパートに行くと告げたのち、阿嵩埼市内にあるデパートの監視カメラにデパートに入っていく椿さんの姿が確認されております。ですが──どの監視カメラにもデパートから出て行く椿さんの姿は録画されておりませんでした。このデパートはすべての出入り口に監視カメラが設置されており、監視カメラに映らずにデパートから出る事は難しい事から、犯人は何らかの手口を持って椿さんをデパート外に出したと考えられます。また当日の店内アナウンスにおいて、迷子の呼び出しが行われているのですが、その時に呼び出された名前が、昭和54年に殺害された久我利彦さんの名前と一致しております。ただ約一ヶ月の事なので詳しい事は関係者は覚えてはいませんでした。この事につきましても犯人が何らかの意図で行った事であるとみて、引き続き捜査を進めたいと思います」
53 ◆a9PA
(1/6)
平成11年12月25日出版 「もう帰れない怖い話〜日本各地から寄せられた戦慄の怪談集〜」より
「まどかさん」
千葉県A市の一戸建てに住んでいる幸田佳苗さん(仮名)は、その日、残業続きでかなり疲労していた。
帰宅した時間が11時を過ぎていた事もあり、物音を立てて家族を起こしてしまうのも迷惑だなと思い、佳苗さんは風呂も夕飯もそこそこに簡単に着替えを済ませると、早々に寝床についた。
これだけ疲れているんだからすぐ眠れるだろうと思ったが、何故だかなかなか眠れない。
眠ろうと目を閉じると、いつもは気にならない、部屋の中の物音が気になってしまうのだ。
アナログ時計の針の音、家の外を通りぬけていく車の音、家自体が軋む音。
こうして音に集中してみると、夜中でも結構物音はするものだな──と、佳苗さんが思った時だった。
─ギギィイィィぃいぃ。
すぐ近くから、はっきりと物音が聞こえた。
それは、佳苗さんの足元から聞こえていた。
佳苗さんの足元には、その部屋のドアがあった。
物音は、そのドアが開く音だった。
思わず上半身を起こしてドアの方を見ると、薄暗い中、木製のドアが数センチ開いている。
佳苗さんの家は古い木造建築ではあったが、勝手にドアが開くことなど無かった。
「だ…誰?」
佳苗さんは声をかけてみた。家族ならば声をかければ返してくれる、そう思った。
だが返事は無かった。
かわりに、真っ白い指が、開かれたドアの隙間からゆっくりと入ってきた。
それは佳苗さんの家族の物ではなかった。
親指が、無かった。
親指のあるべき場所からは、赤黒い肉がこびり付いた骨が顔を出していた。
佳苗さんが声も出せずにいると、その女の手はゆっくりと部屋の中に入ってくる。
真っ白い腕、赤い袖……。
決して通るはずの無い数センチの隙間から、女の体がひり出されていく。
真っ赤な服を着た女が、細い胴体を、そして頭を、部屋の中に押しこんでくる。
(生きてる人間じゃない…)
平成11年12月25日出版 「もう帰れない怖い話〜日本各地から寄せられた戦慄の怪談集〜」より
「まどかさん」
千葉県A市の一戸建てに住んでいる幸田佳苗さん(仮名)は、その日、残業続きでかなり疲労していた。
帰宅した時間が11時を過ぎていた事もあり、物音を立てて家族を起こしてしまうのも迷惑だなと思い、佳苗さんは風呂も夕飯もそこそこに簡単に着替えを済ませると、早々に寝床についた。
これだけ疲れているんだからすぐ眠れるだろうと思ったが、何故だかなかなか眠れない。
眠ろうと目を閉じると、いつもは気にならない、部屋の中の物音が気になってしまうのだ。
アナログ時計の針の音、家の外を通りぬけていく車の音、家自体が軋む音。
こうして音に集中してみると、夜中でも結構物音はするものだな──と、佳苗さんが思った時だった。
─ギギィイィィぃいぃ。
すぐ近くから、はっきりと物音が聞こえた。
それは、佳苗さんの足元から聞こえていた。
佳苗さんの足元には、その部屋のドアがあった。
物音は、そのドアが開く音だった。
思わず上半身を起こしてドアの方を見ると、薄暗い中、木製のドアが数センチ開いている。
佳苗さんの家は古い木造建築ではあったが、勝手にドアが開くことなど無かった。
「だ…誰?」
佳苗さんは声をかけてみた。家族ならば声をかければ返してくれる、そう思った。
だが返事は無かった。
かわりに、真っ白い指が、開かれたドアの隙間からゆっくりと入ってきた。
それは佳苗さんの家族の物ではなかった。
親指が、無かった。
親指のあるべき場所からは、赤黒い肉がこびり付いた骨が顔を出していた。
佳苗さんが声も出せずにいると、その女の手はゆっくりと部屋の中に入ってくる。
真っ白い腕、赤い袖……。
決して通るはずの無い数センチの隙間から、女の体がひり出されていく。
真っ赤な服を着た女が、細い胴体を、そして頭を、部屋の中に押しこんでくる。
(生きてる人間じゃない…)
54 ◆a9PA
(2/6)
佳苗さんがそう思った時には、もう女は部屋の中にいた。
薄暗い中にぼんやりと浮かび上がるように、女の赤い服が見えた。
女の顔は見えなかった。女の頬はなんとか見えないことも無かったが、目も、鼻も、口も、闇に覆われているように何も見えない。
女の服は泥まみれで、手足にはなます斬りにされたような無残で生々しい傷跡があった。
特に、親指が無い右手の甲の傷は尋常ではなかった。ハサミで切り取られたように皮膚が捲れ上がり、中の筋肉組織が見えている。その筋肉組織を遊ぶかのように、何本もの針が痛々しく刺しこまれていた。女が動くたびに、筋肉組織と針がびくんびくんと動いた。
耐えきれず顔を逸らした佳苗さんの目に、女の左手が映った。
女の左手には……錆びついた包丁が握られていた。
もう刺す事は出来ないぐらい、全体を赤茶色の錆びが覆い尽くしているが、それは紛れも無く佳苗さんにとって脅威だった。
佳苗さんは、まったく動けなくなった。
少しでも動いたら、女が包丁を振り上げて襲ってくる、そんな確信があった。
そんな佳苗さんを尻目に、女はスローモーションでもかけたように、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと佳苗さんの近くに歩いてくる。
その動きは、まるで水の中を歩いているようだった。
逃げようとすれば、逃げられたかもしれない。
それでも、佳苗さんは動く事が出来なかった。
気がつくと、女は佳苗さんの顔の、すぐ隣にいた。
女は先ほどと同じように、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと座り込むと、佳苗さんの顔に、自分の顔を近づけた。
卵や肉が腐ったような、それでいて生臭い、鼻が捻じ曲がるほどの嫌な臭いが顔にかかる。
呼吸が出来ない、目じりに涙が溜まる、震えが止まらない。
すると女は、包丁を持っていた手を、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと持ち上げた。
(殺される…)
佳苗さんは恐怖で頭が真っ白になった。
『あなたは、わたくしを、しって、いますか?』
突然、女が喋った。
ガマガエルのように、潰れた声だった。
潰れた声の中に、所々女の甲高い声が混ざり、それは異様さを更に高めた。
佳苗さんは慌てて口を開いた。
「し、知りませ──」
『あなたは、わたくしを、しって、いますか?』
佳苗さんがそう思った時には、もう女は部屋の中にいた。
薄暗い中にぼんやりと浮かび上がるように、女の赤い服が見えた。
女の顔は見えなかった。女の頬はなんとか見えないことも無かったが、目も、鼻も、口も、闇に覆われているように何も見えない。
女の服は泥まみれで、手足にはなます斬りにされたような無残で生々しい傷跡があった。
特に、親指が無い右手の甲の傷は尋常ではなかった。ハサミで切り取られたように皮膚が捲れ上がり、中の筋肉組織が見えている。その筋肉組織を遊ぶかのように、何本もの針が痛々しく刺しこまれていた。女が動くたびに、筋肉組織と針がびくんびくんと動いた。
耐えきれず顔を逸らした佳苗さんの目に、女の左手が映った。
女の左手には……錆びついた包丁が握られていた。
もう刺す事は出来ないぐらい、全体を赤茶色の錆びが覆い尽くしているが、それは紛れも無く佳苗さんにとって脅威だった。
佳苗さんは、まったく動けなくなった。
少しでも動いたら、女が包丁を振り上げて襲ってくる、そんな確信があった。
そんな佳苗さんを尻目に、女はスローモーションでもかけたように、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと佳苗さんの近くに歩いてくる。
その動きは、まるで水の中を歩いているようだった。
逃げようとすれば、逃げられたかもしれない。
それでも、佳苗さんは動く事が出来なかった。
気がつくと、女は佳苗さんの顔の、すぐ隣にいた。
女は先ほどと同じように、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと座り込むと、佳苗さんの顔に、自分の顔を近づけた。
卵や肉が腐ったような、それでいて生臭い、鼻が捻じ曲がるほどの嫌な臭いが顔にかかる。
呼吸が出来ない、目じりに涙が溜まる、震えが止まらない。
すると女は、包丁を持っていた手を、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと持ち上げた。
(殺される…)
佳苗さんは恐怖で頭が真っ白になった。
『あなたは、わたくしを、しって、いますか?』
突然、女が喋った。
ガマガエルのように、潰れた声だった。
潰れた声の中に、所々女の甲高い声が混ざり、それは異様さを更に高めた。
佳苗さんは慌てて口を開いた。
「し、知りませ──」
『あなたは、わたくしを、しって、いますか?』
55 ◆a9PA
(3/6)
まるで有無も言わさぬように、間髪いれず女が喋った。
声の中に、苛立ちと怒りを感じた。
まるで“違う”と言われたような気分だった。
先ほどと明らかに空気が違う。
佳苗さんは身の危険を感じ、今度こそ何も喋れなくなった。
『あなたは、わたくしを、しって、いますか?』
『あなたは、わたくしを、しって、いますか?』
女は更に苛立ちを感じたのか、声に怒気が強くこもりはじめた。
女の顔がゆっくり、ゆっくりと佳苗さんの顔に近づく。
それでも、女の顔は見えない。闇が広がっている。
ただ女の頬だけは何故かはっきりと見える。
手足と同じようになます斬りにされ、頬が布のように裂けている。
脂肪がその隙間から溢れんばかりにぷるぷると揺れていた。
『あなたは、わたくしを、しって、いますか?』
『あなた は、 わたくし を、 しって、 いま すか?』
『 あ な た は 、 わ た く し を 、 し っ て 、 い ま す か ? 』
女の声は言葉を強調するようにゆっくりになっていく。
一言一言に力がこもり、佳苗さんに答えを求めた。
『 あ ー な ぁ ー た ぁ ー わ ぁ ー わ ぁ た ぁ ー く ぅ ー し ぃ ー を ぉ ー し っ て ぇ ー ー い ー ま ー す ー か ぁ ー あ ー あ ー ? 』
もはや、それは言葉になっていなかった。
女の叫び声のようだった。
佳苗さんは恐怖に怯えながら、包丁の握られている女の左手を見た。
女の左手はぷるぷると震えていた。
包丁を少し持ち上げるようにしたり、手首を左右に振っている。
(私を刺すか迷っているんだ…!)
もう駄目だ。
佳苗さんがそう思った時、枕元で何かが光った。
携帯電話だった。
寝る前に佳苗さんが枕元に置いた、携帯電話の着信ランプだった。
その僅かな明かりに照らされて、女の顔が浮かび上がった。
まるで有無も言わさぬように、間髪いれず女が喋った。
声の中に、苛立ちと怒りを感じた。
まるで“違う”と言われたような気分だった。
先ほどと明らかに空気が違う。
佳苗さんは身の危険を感じ、今度こそ何も喋れなくなった。
『あなたは、わたくしを、しって、いますか?』
『あなたは、わたくしを、しって、いますか?』
女は更に苛立ちを感じたのか、声に怒気が強くこもりはじめた。
女の顔がゆっくり、ゆっくりと佳苗さんの顔に近づく。
それでも、女の顔は見えない。闇が広がっている。
ただ女の頬だけは何故かはっきりと見える。
手足と同じようになます斬りにされ、頬が布のように裂けている。
脂肪がその隙間から溢れんばかりにぷるぷると揺れていた。
『あなたは、わたくしを、しって、いますか?』
『あなた は、 わたくし を、 しって、 いま すか?』
『 あ な た は 、 わ た く し を 、 し っ て 、 い ま す か ? 』
女の声は言葉を強調するようにゆっくりになっていく。
一言一言に力がこもり、佳苗さんに答えを求めた。
『 あ ー な ぁ ー た ぁ ー わ ぁ ー わ ぁ た ぁ ー く ぅ ー し ぃ ー を ぉ ー し っ て ぇ ー ー い ー ま ー す ー か ぁ ー あ ー あ ー ? 』
もはや、それは言葉になっていなかった。
女の叫び声のようだった。
佳苗さんは恐怖に怯えながら、包丁の握られている女の左手を見た。
女の左手はぷるぷると震えていた。
包丁を少し持ち上げるようにしたり、手首を左右に振っている。
(私を刺すか迷っているんだ…!)
もう駄目だ。
佳苗さんがそう思った時、枕元で何かが光った。
携帯電話だった。
寝る前に佳苗さんが枕元に置いた、携帯電話の着信ランプだった。
その僅かな明かりに照らされて、女の顔が浮かび上がった。
56 ◆a9PA
(4/6)
──いや、違った。
女の顔は、そもそも無かった。
顔のあるべき場所には、赤黒く穿たれた“穴”が空いていた。
まるでスコップで土を掘り出したように、女の顔面は掘られていた。
ミンチのようにちぢれた肉と皮膚、筋肉組織が縺れ合い、“穴”の周囲を蠢いていた。
穴のぎりぎりで残された女の眉毛が、ぴくぴくと痙攣していた。
しかし、あったのは眉毛だけで、口も、鼻も、目も、女には無かった。
女の声は、その“穴”から聞こえていた。
“穴”の奥に、半分だけ残った舌があった。
舌はなめずる様に、くねくねと動いていた。
それは、まるでトカゲの尻尾のようだった。
佳苗さんは、絶叫した。
同時に、女が動いた。
佳苗さんの絶叫を塞ぐかのように、女の顔面の“穴”が、すっぽりと早苗さんの顔を包み込んだ。
ぐちゃりとした感触が、顔中に広がり、早苗さんは失神した。
目覚めると、佳苗さんの周りには、佳苗さんの悲鳴を聞きつけた家族が心配そうに集まっていた。
女は居なかった。
ただ、早苗さんの布団には、あの包丁の、赤黒い錆びが散らばっていた。
また、早苗さんの顔には、真っ赤な蚯蚓腫れがいくつも浮かび上がり、それは一週間、彼女の顔に残った。
早苗さんがこの話を県外に住む友人にした所、その友人から数日後、電話があった。
「私の所にも来た…、来た──っていうか、現れた…」
早苗さんは死ぬほど友人に謝った。
その友人の話によると、確かに女はやってきたのだという。しかし、現れたのは友人の夢の中だった。
女は夢で体育座りをしている友人の元にゆっくりやってくると、同じように顔を近づけ、
『あなたは、わたくしを、しって、いますか?』
──と同じ質問をしてきたらしい。
友人が恐ろしさで何も答えられずにいると、女は突然怒り狂い、友人を持っていた包丁でめった刺しにしたのだという。
壮絶な痛みに友人が立ちあがると、そこはもう現実だった。
ただ、体中のあちこちに蚯蚓腫れが出来ていた。
女に刺された場所だった。
──いや、違った。
女の顔は、そもそも無かった。
顔のあるべき場所には、赤黒く穿たれた“穴”が空いていた。
まるでスコップで土を掘り出したように、女の顔面は掘られていた。
ミンチのようにちぢれた肉と皮膚、筋肉組織が縺れ合い、“穴”の周囲を蠢いていた。
穴のぎりぎりで残された女の眉毛が、ぴくぴくと痙攣していた。
しかし、あったのは眉毛だけで、口も、鼻も、目も、女には無かった。
女の声は、その“穴”から聞こえていた。
“穴”の奥に、半分だけ残った舌があった。
舌はなめずる様に、くねくねと動いていた。
それは、まるでトカゲの尻尾のようだった。
佳苗さんは、絶叫した。
同時に、女が動いた。
佳苗さんの絶叫を塞ぐかのように、女の顔面の“穴”が、すっぽりと早苗さんの顔を包み込んだ。
ぐちゃりとした感触が、顔中に広がり、早苗さんは失神した。
目覚めると、佳苗さんの周りには、佳苗さんの悲鳴を聞きつけた家族が心配そうに集まっていた。
女は居なかった。
ただ、早苗さんの布団には、あの包丁の、赤黒い錆びが散らばっていた。
また、早苗さんの顔には、真っ赤な蚯蚓腫れがいくつも浮かび上がり、それは一週間、彼女の顔に残った。
早苗さんがこの話を県外に住む友人にした所、その友人から数日後、電話があった。
「私の所にも来た…、来た──っていうか、現れた…」
早苗さんは死ぬほど友人に謝った。
その友人の話によると、確かに女はやってきたのだという。しかし、現れたのは友人の夢の中だった。
女は夢で体育座りをしている友人の元にゆっくりやってくると、同じように顔を近づけ、
『あなたは、わたくしを、しって、いますか?』
──と同じ質問をしてきたらしい。
友人が恐ろしさで何も答えられずにいると、女は突然怒り狂い、友人を持っていた包丁でめった刺しにしたのだという。
壮絶な痛みに友人が立ちあがると、そこはもう現実だった。
ただ、体中のあちこちに蚯蚓腫れが出来ていた。
女に刺された場所だった。
57 ◆a9PA
(5/6)
佳苗さんは恐ろしくなり、霊感のあるという祖母の元を訪れた。
祖母は佳苗さんを見るなり、「ああ、よかった、生きのびた」と言ったらしい。
そして次のような話を、佳苗さんにしたのだという。
「あんね、アンタが見た女は、ずっとずっと昔にこの町で殺された女の霊なんよ。ずっと昔、そうねぇ、ざっと20年前ちょいぐらい前かねぇ。あまりに酷い殺され方をして、未だに誰も彼女の遺体を見つけてくれない。殺された事さえ誰も知らない。それはそれは強い恨みを持ってるんよ…」
ふう、と祖母はため息を漏らして、持っていた塩を佳苗さんにふりかけた。
「女の名前は“まどか”っちゅうて、殺される前はえらいべっぴんさんじゃったのよ。でもまぁ、運が悪かったんねぇ。二人組みの男に襲われて、あんな姿にされてもうた。あまりに酷い仕打ちを受けて、彼女は恐怖と憎しみで自分の名前も、何もかも忘れてしもうたんよ」
佳苗さんは気づいた。だから、あの女は聞いてきたのだ。私は誰か──?と。
知っていれば答えてあげられたのに、と佳苗さんが思うと、それを見透かしたように祖母が続けた。
「女は自分の事を知りたくて、家々の扉っちゅう扉に耳をへばりつかせては中の物音をじぃぃーーーーーっと聞いちょる。誰かが自分の事を知ってるはずと思うてな。で、同じように物音に集中している人間と、波長が合うっちゅうんかな。同調して、その人の所に現れるんよ。でもな、絶対に女に名前を教えたらあかんぞ。ぜぇったいに」
佳苗さんは、どうして?と祖母に聞いた。
佳苗さんは恐ろしくなり、霊感のあるという祖母の元を訪れた。
祖母は佳苗さんを見るなり、「ああ、よかった、生きのびた」と言ったらしい。
そして次のような話を、佳苗さんにしたのだという。
「あんね、アンタが見た女は、ずっとずっと昔にこの町で殺された女の霊なんよ。ずっと昔、そうねぇ、ざっと20年前ちょいぐらい前かねぇ。あまりに酷い殺され方をして、未だに誰も彼女の遺体を見つけてくれない。殺された事さえ誰も知らない。それはそれは強い恨みを持ってるんよ…」
ふう、と祖母はため息を漏らして、持っていた塩を佳苗さんにふりかけた。
「女の名前は“まどか”っちゅうて、殺される前はえらいべっぴんさんじゃったのよ。でもまぁ、運が悪かったんねぇ。二人組みの男に襲われて、あんな姿にされてもうた。あまりに酷い仕打ちを受けて、彼女は恐怖と憎しみで自分の名前も、何もかも忘れてしもうたんよ」
佳苗さんは気づいた。だから、あの女は聞いてきたのだ。私は誰か──?と。
知っていれば答えてあげられたのに、と佳苗さんが思うと、それを見透かしたように祖母が続けた。
「女は自分の事を知りたくて、家々の扉っちゅう扉に耳をへばりつかせては中の物音をじぃぃーーーーーっと聞いちょる。誰かが自分の事を知ってるはずと思うてな。で、同じように物音に集中している人間と、波長が合うっちゅうんかな。同調して、その人の所に現れるんよ。でもな、絶対に女に名前を教えたらあかんぞ。ぜぇったいに」
佳苗さんは、どうして?と祖母に聞いた。
58 ◆a9PA
(6/6)
すると祖母は恐ろしい表情で、こう答えた。
「女はな、自分の名前を知ってる人間を、自分を殺した犯人と思いこんでおる。じゃから間違っていても、決して名前を知っとるとか、教えようとしてはあかんのじゃ。教えたら最後、殺される」
顔面蒼白になっている佳苗さんを尻目に、祖母は続けた。
「これからも、絶対に、一人でおる時ぁ、音に集中したらあかん。こん話を知っとる奴は女と同調しやすい。女に気づかれやすいんじゃ。それとな──、女の名前も、絶対に口にしたらあかん。“まどか”っちゅう名前に気を付けるんじゃ。心で思うのも、出来るだけやめといたほうがええ。女は自分の名前を忘れってぇも、なんとなく分かるんな、そン名前がなァ…」
──“まどか”。
佳苗さんは心の中で復唱して、そして恐怖した。
その様子を見て、祖母はいきなり優しい顔つきに戻り、こう言った。
「大丈夫。誰かと一緒の時は大丈夫。あン女はあんまり人に顔を見られとぉないんじゃ。だから誰かと一緒にする時は大丈夫じゃ…。でもな、もう一つ、気ぃつけなあかん事がある。もし女がアンタの友達の時みたいに夢に出てきたら、最も気ぃつけなあかんのじゃ。あんな、女が夢に出てきたら絶対に
(以下、ページが破られており不明)
すると祖母は恐ろしい表情で、こう答えた。
「女はな、自分の名前を知ってる人間を、自分を殺した犯人と思いこんでおる。じゃから間違っていても、決して名前を知っとるとか、教えようとしてはあかんのじゃ。教えたら最後、殺される」
顔面蒼白になっている佳苗さんを尻目に、祖母は続けた。
「これからも、絶対に、一人でおる時ぁ、音に集中したらあかん。こん話を知っとる奴は女と同調しやすい。女に気づかれやすいんじゃ。それとな──、女の名前も、絶対に口にしたらあかん。“まどか”っちゅう名前に気を付けるんじゃ。心で思うのも、出来るだけやめといたほうがええ。女は自分の名前を忘れってぇも、なんとなく分かるんな、そン名前がなァ…」
──“まどか”。
佳苗さんは心の中で復唱して、そして恐怖した。
その様子を見て、祖母はいきなり優しい顔つきに戻り、こう言った。
「大丈夫。誰かと一緒の時は大丈夫。あン女はあんまり人に顔を見られとぉないんじゃ。だから誰かと一緒にする時は大丈夫じゃ…。でもな、もう一つ、気ぃつけなあかん事がある。もし女がアンタの友達の時みたいに夢に出てきたら、最も気ぃつけなあかんのじゃ。あんな、女が夢に出てきたら絶対に
(以下、ページが破られており不明)
59 ◆a9PA
平成14年2月27日 電信柱に貼られていた怪文章より
[ みんなひとつになる
みんないっしょになれる
みんなすくわれる
すくってあげる
せかいへいわ
みらいへいわ
たましいになってもともだちだよ ]
以上の文章が阿嵩埼市内の電信柱、約600箇所に貼りつけられていた。
[ みんなひとつになる
みんないっしょになれる
みんなすくわれる
すくってあげる
せかいへいわ
みらいへいわ
たましいになってもともだちだよ ]
以上の文章が阿嵩埼市内の電信柱、約600箇所に貼りつけられていた。
60 ◆a9PA
平成16年11月9日 ××テレビの天気予報より
──続いて千葉です。現在千葉県南部に乾燥注意報と強風注意報が出ております。火の取り扱いには十分ご注意下さい。続いて千葉北部の──
────────────────
平成16年11月9日 ××テレビの速報より
「阿嵩埼市内で放火による火事 一家五人が焼死犯人は現行犯逮捕された模様」
──続いて千葉です。現在千葉県南部に乾燥注意報と強風注意報が出ております。火の取り扱いには十分ご注意下さい。続いて千葉北部の──
────────────────
平成16年11月9日 ××テレビの速報より
「阿嵩埼市内で放火による火事 一家五人が焼死犯人は現行犯逮捕された模様」
61 ◆a9PA
平成16年11月10日 ××新聞社会面より
「放火で一家五人死亡 犯人は元警察官」
9日午後11時50分ごろ、千葉県阿嵩埼市にある空き家と樋口さん宅から火が出ているのを通りかかった人が見つけ119番通報した。共に駆けつけた警察官が現場で不信な行動を取っていた佐々木克郎容疑者を職務質問し、犯行を認めたため放火の容疑で現行犯逮捕した。
火は樋口さん宅と隣の空き家を全焼、逃げ遅れた樋口芳隆さん、妻の佐知子さん、息子の渡さん、光太郎くん、娘の英子ちゃんら五人の遺体が焼け跡から発見され身元が確認された。
佐々木克郎容疑者は元警察官で、平成7年に発生した阿嵩埼事件の第一発見者だった。当時警察官だった佐々木容疑者は雑誌などで捜査内容についてのインタビューを受け、捜査内容を漏らしたとして懲戒免職を受けている。今回全焼した空き家は阿嵩埼事件の竹尻光子さんの遺体発見現場。
警察に連行された佐々木容疑者は警察官の取り調べにおいて「止めるためにやったが失敗した」「まだまだ人は殺される」などと意味不明な言動を繰り返しており、引き続き警察による取調べが続いている。
「放火で一家五人死亡 犯人は元警察官」
9日午後11時50分ごろ、千葉県阿嵩埼市にある空き家と樋口さん宅から火が出ているのを通りかかった人が見つけ119番通報した。共に駆けつけた警察官が現場で不信な行動を取っていた佐々木克郎容疑者を職務質問し、犯行を認めたため放火の容疑で現行犯逮捕した。
火は樋口さん宅と隣の空き家を全焼、逃げ遅れた樋口芳隆さん、妻の佐知子さん、息子の渡さん、光太郎くん、娘の英子ちゃんら五人の遺体が焼け跡から発見され身元が確認された。
佐々木克郎容疑者は元警察官で、平成7年に発生した阿嵩埼事件の第一発見者だった。当時警察官だった佐々木容疑者は雑誌などで捜査内容についてのインタビューを受け、捜査内容を漏らしたとして懲戒免職を受けている。今回全焼した空き家は阿嵩埼事件の竹尻光子さんの遺体発見現場。
警察に連行された佐々木容疑者は警察官の取り調べにおいて「止めるためにやったが失敗した」「まだまだ人は殺される」などと意味不明な言動を繰り返しており、引き続き警察による取調べが続いている。
62 ◆a9PA
平成16年11月12日 ××テレビの番組より
「阿嵩埼事件の現場放火される 一家五人死亡」
─ここが惨劇の現場となった樋口さん宅です。もう見る影も無いほど、一家五人が暮らしていた家は焼けくずれ、黒い柱のみが墓標のようにその場に立ち尽くしています。その隣、平成7年に発生した阿嵩埼事件の被害者である竹尻光子さんの遺体が発見された廃屋、ここも完全に焼け落ちてしまっています。
今回逮捕された佐々木克郎容疑者は当時警察官であり、竹尻光子さんの遺体を見つけた第一発見者の一人でした。阿嵩埼事件では殺された竹尻光子さん自身もまた昭和55年に発生した日野豪君殺害事件の第一発見者であり、その日野豪君もまた第一の被害者久我利彦さんの遺体の第一発見者であるという、謎めいた関係が浮かび上がってきています。
ちなみに当時、久我利彦さんの遺体を殺された日野豪君と共に発見した同級生のM君一家ですが、現在は阿嵩埼から引っ越しており、所在を突き止めることが出来ませんでした。また佐々木克郎容疑者と共に竹尻光子さんの遺体を発見した元警察官のSさんですが、彼は都内の精神病院に入院しているとのことです。
さて、今回放火事件ですが、目撃者の話から奇妙な事実が分かってきました。当初、被害者は遺体で見つかった樋口さん一家五人だけと思われていたのですが、事件当時、隣の──この廃屋からも人が出入りしていたというのです。目撃者の話によりますと、火災が発見された直後、こちらの廃屋から真っ黒な格好をした男達数人が飛び出してきたというのです。しかし、今現在、このように騒ぎになった今になっても、その男達は名乗りをあげてきません。彼らは事件に関係しているのでしょうか──?
「阿嵩埼事件の現場放火される 一家五人死亡」
─ここが惨劇の現場となった樋口さん宅です。もう見る影も無いほど、一家五人が暮らしていた家は焼けくずれ、黒い柱のみが墓標のようにその場に立ち尽くしています。その隣、平成7年に発生した阿嵩埼事件の被害者である竹尻光子さんの遺体が発見された廃屋、ここも完全に焼け落ちてしまっています。
今回逮捕された佐々木克郎容疑者は当時警察官であり、竹尻光子さんの遺体を見つけた第一発見者の一人でした。阿嵩埼事件では殺された竹尻光子さん自身もまた昭和55年に発生した日野豪君殺害事件の第一発見者であり、その日野豪君もまた第一の被害者久我利彦さんの遺体の第一発見者であるという、謎めいた関係が浮かび上がってきています。
ちなみに当時、久我利彦さんの遺体を殺された日野豪君と共に発見した同級生のM君一家ですが、現在は阿嵩埼から引っ越しており、所在を突き止めることが出来ませんでした。また佐々木克郎容疑者と共に竹尻光子さんの遺体を発見した元警察官のSさんですが、彼は都内の精神病院に入院しているとのことです。
さて、今回放火事件ですが、目撃者の話から奇妙な事実が分かってきました。当初、被害者は遺体で見つかった樋口さん一家五人だけと思われていたのですが、事件当時、隣の──この廃屋からも人が出入りしていたというのです。目撃者の話によりますと、火災が発見された直後、こちらの廃屋から真っ黒な格好をした男達数人が飛び出してきたというのです。しかし、今現在、このように騒ぎになった今になっても、その男達は名乗りをあげてきません。彼らは事件に関係しているのでしょうか──?
63 ◆a9PA
平成16年12月3日 警察に提出された捜索願より
氏名 / 後田司
本籍 / 千葉県
住所 / 阿嵩埼市九条原9-784-18
生年月日 / 昭和44年9月8日
職業 / 印刷業
失踪日時 / 平成16年11月20日
失踪原因 / 不明、タバコを買いに行くと出かけたまま戻らなかった
人相 / 目と目が少し離れており、おっとりとした感じ。首筋に2cm前後のホクロ。
体格 / 痩せ型
失踪時の着衣 / 茶色のコート 黒いズボン 白いマフラー黒い手袋
氏名 / 後田司
本籍 / 千葉県
住所 / 阿嵩埼市九条原9-784-18
生年月日 / 昭和44年9月8日
職業 / 印刷業
失踪日時 / 平成16年11月20日
失踪原因 / 不明、タバコを買いに行くと出かけたまま戻らなかった
人相 / 目と目が少し離れており、おっとりとした感じ。首筋に2cm前後のホクロ。
体格 / 痩せ型
失踪時の着衣 / 茶色のコート 黒いズボン 白いマフラー黒い手袋
64 ◆a9PA
平成17年3月3日 □□新聞社会面より
「男性飛び降り、巻き添えで女性二人が死傷」
7日午後9時20分ごろ、千葉県阿嵩埼市の雑居ビルの十階から、近所に住む男性、水山穣さんが飛び降り、歩行中の女性、旗本順子さん、山本静子さんの二人が巻き添えになり、このうち旗本順子さんが頭を強く打ち病院に搬送後に死亡、山本静子さんも重傷を負った。飛び降りた水山穣さんは意識不明の重態。
「男性飛び降り、巻き添えで女性二人が死傷」
7日午後9時20分ごろ、千葉県阿嵩埼市の雑居ビルの十階から、近所に住む男性、水山穣さんが飛び降り、歩行中の女性、旗本順子さん、山本静子さんの二人が巻き添えになり、このうち旗本順子さんが頭を強く打ち病院に搬送後に死亡、山本静子さんも重傷を負った。飛び降りた水山穣さんは意識不明の重態。
65 ◆a9PA
平成17年9月7日 ××新聞社会面より
「阿嵩埼で人間の体の一部が届けられる」
7日午後9時20分ごろ、千葉県阿嵩埼市のマンションサンシャインの伊東淳さん宅にて人間の体の一部のようなものが郵便ポストに投げ込まれていると阿嵩埼市中央署に110通報があった。駆けつけた警察官が調べたところ、郵便ポスト内に入れられていたダンボール箱の中から人間の毛髪、腕から切り取られたと思われる人間の皮膚、切除された大腸の一部を発見。警察は近辺の聞きこみを進めると共に、専門家や医療関係者からの証言からこの毛髪、皮膚、大腸の持ち主が既に死亡しているものとみて、殺人、死体遺棄の両面から捜査を始めている。
「阿嵩埼で人間の体の一部が届けられる」
7日午後9時20分ごろ、千葉県阿嵩埼市のマンションサンシャインの伊東淳さん宅にて人間の体の一部のようなものが郵便ポストに投げ込まれていると阿嵩埼市中央署に110通報があった。駆けつけた警察官が調べたところ、郵便ポスト内に入れられていたダンボール箱の中から人間の毛髪、腕から切り取られたと思われる人間の皮膚、切除された大腸の一部を発見。警察は近辺の聞きこみを進めると共に、専門家や医療関係者からの証言からこの毛髪、皮膚、大腸の持ち主が既に死亡しているものとみて、殺人、死体遺棄の両面から捜査を始めている。
66 ◆a9PA
平成17年9月9日 ××新聞社会面より
「阿嵩埼切断遺体遺棄事件 被害者が判明」
7日午後9時20分ごろ、千葉県阿嵩埼市のマンションサンシャインに切除された人間の体の一部が届けられた事件で、阿嵩埼市中央署は8日午後に記者発表を行い、発見された体の一部が9年前の平成8年6月末から行方が分からなくなっている千葉県阿嵩埼市在住の久我昌司さんの物であると発表しました。久我昌司さんが失踪した直後、最後に目撃された電話ボックスに残されていた毛髪と血痕が、今回届けられた体の一部のDNAと完全に一致、更に届けられた大腸が切除されてから間も無い事から、少なくとも久我昌司さんが7日の午後8時までは生存していたと見て、引き続き久我さんの行方について慎重に調べを進めている。
また体の一部が入れられていたダンボールには他にビデオテープ等が梱包されており、警察はそちらの分析も進めている。
「阿嵩埼切断遺体遺棄事件 被害者が判明」
7日午後9時20分ごろ、千葉県阿嵩埼市のマンションサンシャインに切除された人間の体の一部が届けられた事件で、阿嵩埼市中央署は8日午後に記者発表を行い、発見された体の一部が9年前の平成8年6月末から行方が分からなくなっている千葉県阿嵩埼市在住の久我昌司さんの物であると発表しました。久我昌司さんが失踪した直後、最後に目撃された電話ボックスに残されていた毛髪と血痕が、今回届けられた体の一部のDNAと完全に一致、更に届けられた大腸が切除されてから間も無い事から、少なくとも久我昌司さんが7日の午後8時までは生存していたと見て、引き続き久我さんの行方について慎重に調べを進めている。
また体の一部が入れられていたダンボールには他にビデオテープ等が梱包されており、警察はそちらの分析も進めている。
67 ◆a9PA
(1/2)
平成17年9月9日 ラジオ番組××放送より
──それにしても恐ろしい事件ですよね。行方不明になっていた久我昌司さん。九年間も拉致監禁されていたという事でしょう?しかも最後には体の一部を切除されてしまうなんて、なんともやりきれませんよね。
──ええ。しかもですよ。警察の調べによると切除された大腸の一部には生活反応があったっていうじゃないですか。つまり、つまりですよ?久我さんは生きたまま腹を開かれて、大腸を取り出されたって事じゃないですか。もう想像しただけで…。
──たしか阿嵩埼事件の別の被害者も生きたまま体を切断される、なんて事件もありましたよね。やはり同一犯の仕業なんでしょうか?
──ほぼ間違い無いでしょう。失踪当時こそ一部のメディアは失踪した久我さんが事件の犯人の一味ではないか、なんて騒いだところもありましたが、久我さんは一連の事件の被害者で間違い無いと思います。
──たしか、失踪した久我さんのマンションから誰の物か分からないみみたぶが発見されたんでしたよね。それが被害者の物ではないかと話題になったのを覚えています。
──ええ、未だそのみみたぶが誰の物だったのか分からないままですが…、私は犯人が久我さんを落とし入れるために置いていった物だと思っています。
──巧妙なミスリード、といった事でしょうか。それにしても、久我さんの安否が心配されますよね。
──はい。大腸の一部を切り取られて人間は生きていられる物なんでしょうか。しかもです、たしか以前の事件では被害者は麻酔などを使用されず拷問されたという経緯があります。ですから久我さんも同じく、麻酔を使わずに大腸を切除された可能性も無くは無い…。
平成17年9月9日 ラジオ番組××放送より
──それにしても恐ろしい事件ですよね。行方不明になっていた久我昌司さん。九年間も拉致監禁されていたという事でしょう?しかも最後には体の一部を切除されてしまうなんて、なんともやりきれませんよね。
──ええ。しかもですよ。警察の調べによると切除された大腸の一部には生活反応があったっていうじゃないですか。つまり、つまりですよ?久我さんは生きたまま腹を開かれて、大腸を取り出されたって事じゃないですか。もう想像しただけで…。
──たしか阿嵩埼事件の別の被害者も生きたまま体を切断される、なんて事件もありましたよね。やはり同一犯の仕業なんでしょうか?
──ほぼ間違い無いでしょう。失踪当時こそ一部のメディアは失踪した久我さんが事件の犯人の一味ではないか、なんて騒いだところもありましたが、久我さんは一連の事件の被害者で間違い無いと思います。
──たしか、失踪した久我さんのマンションから誰の物か分からないみみたぶが発見されたんでしたよね。それが被害者の物ではないかと話題になったのを覚えています。
──ええ、未だそのみみたぶが誰の物だったのか分からないままですが…、私は犯人が久我さんを落とし入れるために置いていった物だと思っています。
──巧妙なミスリード、といった事でしょうか。それにしても、久我さんの安否が心配されますよね。
──はい。大腸の一部を切り取られて人間は生きていられる物なんでしょうか。しかもです、たしか以前の事件では被害者は麻酔などを使用されず拷問されたという経緯があります。ですから久我さんも同じく、麻酔を使わずに大腸を切除された可能性も無くは無い…。
68 ◆a9PA
(2/2)
──嫌な話ですよね。想像したくない。それにしても、どうして体の一部を送りつけてくる…などという行動に出たんでしょうかね。まったく意味がわからない。
──これにはさまざまな仮説がありますが、有力なのが「被害者を自宅に帰らせた」という意味合いなのではないかと。
──ああ。確か体の一部が送りつけられたマンションの一室というのは…久我さんが失踪した当時に暮らしていた部屋…でしたからね。しかし、やはり意味は分かりませんし、理解したいとも思いませんね…。
──まったくです。そして同じくダンボールに入れられていたというビデオテープ、先ほど警察から発表がありましたが、驚き…よりも、もう恐ろしさが上に着ますね。
──ええ、まだ知らない方もいるかもしれませんので、ここでもう一度報告させていただきたいと思います。久我さんの体の一部が入れられていたダンボールから発見されたビデオテープの中身について、警察は先ほど、ビデオテープには動物用の檻に入れられている久我さんの姿が録画されていたと発表しました。また、檻には小さく「K-2」と書かれており、警察は檻の入手経路を慎重に調べています。
──………。
──更に映像の中の久我さんは両手の肘から先、両足の膝から下を切断されていたという事です。警察はその状態でも映像で久我さんが生存している事から、何らかの医療経験者が事件に関わっているものとみて、捜査を進めているという事です。
──確か、久我さんは何かを口走っていた、とか。
──はい、映像の中で久我さんは……はい、久我さんは…しきりに「おなかちゅいた」と叫びながら体をのた打ち回らせていた…という事です。
──……………。
──……………。
──……………。
──…………イかれてる。犯人は人間じゃない…。
(以下略)
──嫌な話ですよね。想像したくない。それにしても、どうして体の一部を送りつけてくる…などという行動に出たんでしょうかね。まったく意味がわからない。
──これにはさまざまな仮説がありますが、有力なのが「被害者を自宅に帰らせた」という意味合いなのではないかと。
──ああ。確か体の一部が送りつけられたマンションの一室というのは…久我さんが失踪した当時に暮らしていた部屋…でしたからね。しかし、やはり意味は分かりませんし、理解したいとも思いませんね…。
──まったくです。そして同じくダンボールに入れられていたというビデオテープ、先ほど警察から発表がありましたが、驚き…よりも、もう恐ろしさが上に着ますね。
──ええ、まだ知らない方もいるかもしれませんので、ここでもう一度報告させていただきたいと思います。久我さんの体の一部が入れられていたダンボールから発見されたビデオテープの中身について、警察は先ほど、ビデオテープには動物用の檻に入れられている久我さんの姿が録画されていたと発表しました。また、檻には小さく「K-2」と書かれており、警察は檻の入手経路を慎重に調べています。
──………。
──更に映像の中の久我さんは両手の肘から先、両足の膝から下を切断されていたという事です。警察はその状態でも映像で久我さんが生存している事から、何らかの医療経験者が事件に関わっているものとみて、捜査を進めているという事です。
──確か、久我さんは何かを口走っていた、とか。
──はい、映像の中で久我さんは……はい、久我さんは…しきりに「おなかちゅいた」と叫びながら体をのた打ち回らせていた…という事です。
──……………。
──……………。
──……………。
──…………イかれてる。犯人は人間じゃない…。
(以下略)
69 ◆a9PA
平成18年4月1日出版 「千葉県の民謡」より
「阿嵩埼の民謡 あいこみあえん」
せぃえ せぃよぉ
せぃえぇい せぃよぉお
われぇた やまかぁら みおろせぇばぁ
ぼんのぉ こぼれぇたぁ あまがぁさきぃ
のぞけばぁ いたいたぁ たまこんのぉ
みんなぁ しあわぁせぇ あいこみあぁあええぇん
せぃえ せぃよぉ
せぃえぇい せぃよぉお
くだけぇたぁ そらぁからぁ みおろぉせぇばぁ
ぼんのぉ こぼれぇたぁ あまがぁさきぃ
のぞけばぁ おったおったぁ ともがきぃのぉ
それどもぉ いけなぁいぃ あいこみあぁあええぇん
「阿嵩埼の民謡 あいこみあえん」
せぃえ せぃよぉ
せぃえぇい せぃよぉお
われぇた やまかぁら みおろせぇばぁ
ぼんのぉ こぼれぇたぁ あまがぁさきぃ
のぞけばぁ いたいたぁ たまこんのぉ
みんなぁ しあわぁせぇ あいこみあぁあええぇん
せぃえ せぃよぉ
せぃえぇい せぃよぉお
くだけぇたぁ そらぁからぁ みおろぉせぇばぁ
ぼんのぉ こぼれぇたぁ あまがぁさきぃ
のぞけばぁ おったおったぁ ともがきぃのぉ
それどもぉ いけなぁいぃ あいこみあぁあええぇん
70 ◆a9PA
平成18年10月5日 阿嵩埼日報お悔み爛
地野 正嗣さん(ちの・まさつぐ)
4日、阿嵩埼病院で死去。享年56歳。葬儀は実家の寺にて近親者のみで行われる。喪主は友人の福嶋美子。
昭和54年の阿嵩埼事件で犯人として疑われるも潔白が証明される。以降、「マスメディア批判」「冤罪はマスコミから作られる」などの著書を出版した。
地野 正嗣さん(ちの・まさつぐ)
4日、阿嵩埼病院で死去。享年56歳。葬儀は実家の寺にて近親者のみで行われる。喪主は友人の福嶋美子。
昭和54年の阿嵩埼事件で犯人として疑われるも潔白が証明される。以降、「マスメディア批判」「冤罪はマスコミから作られる」などの著書を出版した。
71 ◆a9PA
(1/2)
平成18年10月17日 ××スポーツ新聞より
「阿嵩埼事件の関係者、また謎の死を遂げる」
皆さんは阿嵩埼事件についてどこまでご存知だろうか。阿嵩埼事件、それは余りに多くの人命が失われている日本犯罪史上類をみない残酷で残忍な事件である。昭和54年の久我利彦さん殺害事件を皮切りに、昭和55年には当時小学四年生だった日野豪君が殺害され、共に同級生の水谷昭君が一時誘拐されている。昭和57年には日野豪君の父親である日野克也さんが心臓マヒで亡くなり、平成7年には当時OLだった竹尻光子さんが殺害され、同日に日野豪君の母親である日野滋さん、久我利彦さんの元妻である久我操子さんが死亡している。更に竹尻光子さん殺害現場では一連の被害者の物ではない血液が検出され、発見されていない被害者はまだいると推測されている。翌平成8年には今度は亡くなった久我さん夫妻の一人息子である久我昌司さんが毛髪と血痕を残して失踪し、自宅マンションからは一連の被害者の物ではない人体の一部が発見されている。こちらの被害者も未だ不明のままである。平成10年には犯人によって拉致されていたと思われる椿真輔さんが保護後に警察病院にて自殺。平成16年には竹尻光子さんの遺体が発見された廃屋と近くの民家が放火され全焼、樋口芳隆さんら一家五人が焼死している。この放火で逮捕されたのが元警察官の佐々木克郎容疑者。彼は竹尻光子さんの遺体の第一発見者だった。翌平成17年には行方が分からなくなっていた久我昌司さんの体の一部が彼が失踪前に住んでいたマンションの一室に届けられ、生存が絶望的とされている。
平成18年10月17日 ××スポーツ新聞より
「阿嵩埼事件の関係者、また謎の死を遂げる」
皆さんは阿嵩埼事件についてどこまでご存知だろうか。阿嵩埼事件、それは余りに多くの人命が失われている日本犯罪史上類をみない残酷で残忍な事件である。昭和54年の久我利彦さん殺害事件を皮切りに、昭和55年には当時小学四年生だった日野豪君が殺害され、共に同級生の水谷昭君が一時誘拐されている。昭和57年には日野豪君の父親である日野克也さんが心臓マヒで亡くなり、平成7年には当時OLだった竹尻光子さんが殺害され、同日に日野豪君の母親である日野滋さん、久我利彦さんの元妻である久我操子さんが死亡している。更に竹尻光子さん殺害現場では一連の被害者の物ではない血液が検出され、発見されていない被害者はまだいると推測されている。翌平成8年には今度は亡くなった久我さん夫妻の一人息子である久我昌司さんが毛髪と血痕を残して失踪し、自宅マンションからは一連の被害者の物ではない人体の一部が発見されている。こちらの被害者も未だ不明のままである。平成10年には犯人によって拉致されていたと思われる椿真輔さんが保護後に警察病院にて自殺。平成16年には竹尻光子さんの遺体が発見された廃屋と近くの民家が放火され全焼、樋口芳隆さんら一家五人が焼死している。この放火で逮捕されたのが元警察官の佐々木克郎容疑者。彼は竹尻光子さんの遺体の第一発見者だった。翌平成17年には行方が分からなくなっていた久我昌司さんの体の一部が彼が失踪前に住んでいたマンションの一室に届けられ、生存が絶望的とされている。
72 ◆a9PA
(2/2)
そして今月5日、また阿嵩埼事件の関係者が謎の死を遂げている事が判明したのです。死亡したのは地野正嗣さん、阿嵩埼事件の第一の事件、久我利彦さん殺害事件で犯人と疑われ、のちに潔白が証明された事で有名な、あの地野正嗣さんが亡くなっていた事のです。
地野さんが亡くなったのは阿嵩埼市内にある阿嵩埼病院。地野さんは数年前からこの病院の整形外科に入院していた事が本誌の取材により明らかになったのだが、それ以上の事がまったく分からないのである。地野さんの病名、死因、それらについて病院関係者の口は硬く、何一つ情報が入ってこない。まるで何かをひた隠しにしているようにも思える。
ただ、地野さんは阿嵩埼事件において友人が殺害されたにも関わらず、一部メディアにおいてまるで犯人のような扱いを受けたことに端を発すメディアアレルギーとも言える拒絶反応を持っており、死後も周囲の人間によってそれが継続されていると考えられなくも無い。だが我々は阿嵩埼事件の一連の死の連鎖に、地野さん自身も巻き込まれてしまったのようにしか思えないのである──(以下略)
そして今月5日、また阿嵩埼事件の関係者が謎の死を遂げている事が判明したのです。死亡したのは地野正嗣さん、阿嵩埼事件の第一の事件、久我利彦さん殺害事件で犯人と疑われ、のちに潔白が証明された事で有名な、あの地野正嗣さんが亡くなっていた事のです。
地野さんが亡くなったのは阿嵩埼市内にある阿嵩埼病院。地野さんは数年前からこの病院の整形外科に入院していた事が本誌の取材により明らかになったのだが、それ以上の事がまったく分からないのである。地野さんの病名、死因、それらについて病院関係者の口は硬く、何一つ情報が入ってこない。まるで何かをひた隠しにしているようにも思える。
ただ、地野さんは阿嵩埼事件において友人が殺害されたにも関わらず、一部メディアにおいてまるで犯人のような扱いを受けたことに端を発すメディアアレルギーとも言える拒絶反応を持っており、死後も周囲の人間によってそれが継続されていると考えられなくも無い。だが我々は阿嵩埼事件の一連の死の連鎖に、地野さん自身も巻き込まれてしまったのようにしか思えないのである──(以下略)
73 ◆a9PA
平成19年4月20日 当時流行したチェーンメールより
「あなたも幸せになれます」
あなたは幸せになりたくありませんか?友達や家族との付き合いに疲れてはいませんか。このメールはそんなあなたに幸せになる方法を教えてくれる素晴らしいメールです。ただこのメールを開いた瞬間からあなたは私に見られているという事を自覚しなくてはいけません。私はあなたに幸せを届けるために窓の外から部屋の隙間からあなたをじっと見つめているのですから、あなたはこの私の尊い意志に背く事は赦されないという事を自覚しなくてはいけません。自覚したのであれば私はあなたに素晴らしい幸せを届ける事が出来ます。まずあなたが幸せになるには魂の置き場所を変えなくてはいけません。あなたが現在暮らしている場所は暗く重い幸せになれなかった亡者達の魂の籠となっているのです。あなたが時々肩が重いと感じるのはそれらの魂があなたの肩に乗っているからなのです。しかし心配はいりません。あなたは幸せになる方法を既に手に入れているのです。そう、それがこのメールなのです。あなたは今すぐその穢れきった場所から逃げだし千葉県にある阿嵩埼に引越しをしなければいけないのです。でなければあなたは死にます。惨い死に方です。苦しんで苦しんで苦しんで苦しみぬいてそれでも救われる事は決してありません。お父さんとお母さんを道連れにしてもいいんですか?私はあなたをみています。安心してください。あなたは助かります。さあいますぐ引っ越しましょう。そして幸せになるのです。そしてもう一つ、あなたはこのメールを五人のお友達に送らなければいけません。分かりましたね。わたしは見ていますからそうしないと殺すぞ。
「あなたも幸せになれます」
あなたは幸せになりたくありませんか?友達や家族との付き合いに疲れてはいませんか。このメールはそんなあなたに幸せになる方法を教えてくれる素晴らしいメールです。ただこのメールを開いた瞬間からあなたは私に見られているという事を自覚しなくてはいけません。私はあなたに幸せを届けるために窓の外から部屋の隙間からあなたをじっと見つめているのですから、あなたはこの私の尊い意志に背く事は赦されないという事を自覚しなくてはいけません。自覚したのであれば私はあなたに素晴らしい幸せを届ける事が出来ます。まずあなたが幸せになるには魂の置き場所を変えなくてはいけません。あなたが現在暮らしている場所は暗く重い幸せになれなかった亡者達の魂の籠となっているのです。あなたが時々肩が重いと感じるのはそれらの魂があなたの肩に乗っているからなのです。しかし心配はいりません。あなたは幸せになる方法を既に手に入れているのです。そう、それがこのメールなのです。あなたは今すぐその穢れきった場所から逃げだし千葉県にある阿嵩埼に引越しをしなければいけないのです。でなければあなたは死にます。惨い死に方です。苦しんで苦しんで苦しんで苦しみぬいてそれでも救われる事は決してありません。お父さんとお母さんを道連れにしてもいいんですか?私はあなたをみています。安心してください。あなたは助かります。さあいますぐ引っ越しましょう。そして幸せになるのです。そしてもう一つ、あなたはこのメールを五人のお友達に送らなければいけません。分かりましたね。わたしは見ていますからそうしないと殺すぞ。
74 ◆a9PA
平成19年4月20日 阿嵩埼警察に提出された告訴状より
告訴事実
被告訴人らは、平成18年2月14日午後7時20分頃、千葉県阿嵩埼市阿嵩埼精神科神経科病院においては、当病院に入院中の烏丸静郎氏を隔離室に拘束衣を親族の許可無く着用させ、隔離室を施錠、軟禁し、正当な治療を怠ったため、死に至らしめたものである。
(以下略)
告訴事実
被告訴人らは、平成18年2月14日午後7時20分頃、千葉県阿嵩埼市阿嵩埼精神科神経科病院においては、当病院に入院中の烏丸静郎氏を隔離室に拘束衣を親族の許可無く着用させ、隔離室を施錠、軟禁し、正当な治療を怠ったため、死に至らしめたものである。
(以下略)
75 ◆a9PA
平成19年9月7日 ○○新聞社会面より
「阿嵩埼放火殺人の犯人が獄死」
7日午前1時10分ごろ、千葉県奄ヶ山市にある奄ヶ山刑務所に服役中だった佐々木克郎服役囚がトイレにて倒れているのを刑務官が発見、奄ヶ山市内にある警察病院に運び込まれたが1時間後に医師によって死亡が確認された。佐々木克郎服役囚は平成16年11月9日に阿嵩埼市内の──(略)
──警察は死因について、外傷も無く、持病も持っていなかった、5日に行われた健康診断でも異常は見つからなかったとして、死因は未だ不明であると発表している。奄ヶ山刑務所のトイレは全面がガラス張りになっており、更にトイレに行くには刑務官の許可が必要な為、警察は引き続き刑務所の管理体制に不備が無かったか慎重に調べを進めている。
「阿嵩埼放火殺人の犯人が獄死」
7日午前1時10分ごろ、千葉県奄ヶ山市にある奄ヶ山刑務所に服役中だった佐々木克郎服役囚がトイレにて倒れているのを刑務官が発見、奄ヶ山市内にある警察病院に運び込まれたが1時間後に医師によって死亡が確認された。佐々木克郎服役囚は平成16年11月9日に阿嵩埼市内の──(略)
──警察は死因について、外傷も無く、持病も持っていなかった、5日に行われた健康診断でも異常は見つからなかったとして、死因は未だ不明であると発表している。奄ヶ山刑務所のトイレは全面がガラス張りになっており、更にトイレに行くには刑務官の許可が必要な為、警察は引き続き刑務所の管理体制に不備が無かったか慎重に調べを進めている。
76 ◆a9PA
(1/3)
平成19年9月7日 遺族によって公開された佐々木克郎服役囚の日記より抜粋
──黒い男が来る。真っ黒に焼け焦げた男が私を追いかけてくる。どうしてだ。私は正義を行ったはずだ。私は正義によって守られているはずだ。ならば私を追いかけてくるこの黒い男は悪なのか。奴が悪ならば私は逃げる必要は無いはずである。だが私は逃げている。心の底からどうしようもなく湧きあがってくるこの怖気、足ががくがくと震え私は逃げ惑う。叫び声を上げながら誰でもいいから助けを求めて、逃げて逃げて、気がつくと私は袋小路に追い詰められている。もう逃げ場は無い。私はひぃひぃと喉を鳴らして壁を引掻く。壁に爪が食い込み、爪の根元にヒビが入り、その隙間から真っ赤な血がじくじくと滲み出る。ああ、これ以上力をこめれば私の爪は根元からその血肉を撒き散らしながら折れてしまう事だろう。だが私はそれ以上の恐怖を感じている。だから私は爪を折りながら血まみれになりながらも黒い男から逃げなくてはいけない。正義のために正義のために正義のために。そう叫びながら背中に近づいてくる気配に震えが止まらない。ああ、焼け焦げた、人間の焼け焦げた匂いが私の中に入ってくる。私を、私の体の中から私を焦がしていく。ああ、人間の肉の焼ける匂いが外からではなく私の中から匂ってくる。生焼けの匂いだ。私の胃や肺が生焼けになって私の体の中から香ばしい匂いを立てている。私はその匂いを口と鼻から呼吸と共にひりだしながらも逃げ惑うのだ。叫びながら私の中の焼肉の匂いを撒き散らしながらでも振り向けば男が口を大きく空けて真っ黒な男が笑いながら私の口の中に手を入れて私のおいしそうに焼けた内臓を食べようとおいしく召し上がろうとなさるので私はああ、食べられるのならばどうぞおいしく頂いてくださいと心のどこかで思ってしまい微笑ましい笑顔を浮かべてしまう。
平成19年9月7日 遺族によって公開された佐々木克郎服役囚の日記より抜粋
──黒い男が来る。真っ黒に焼け焦げた男が私を追いかけてくる。どうしてだ。私は正義を行ったはずだ。私は正義によって守られているはずだ。ならば私を追いかけてくるこの黒い男は悪なのか。奴が悪ならば私は逃げる必要は無いはずである。だが私は逃げている。心の底からどうしようもなく湧きあがってくるこの怖気、足ががくがくと震え私は逃げ惑う。叫び声を上げながら誰でもいいから助けを求めて、逃げて逃げて、気がつくと私は袋小路に追い詰められている。もう逃げ場は無い。私はひぃひぃと喉を鳴らして壁を引掻く。壁に爪が食い込み、爪の根元にヒビが入り、その隙間から真っ赤な血がじくじくと滲み出る。ああ、これ以上力をこめれば私の爪は根元からその血肉を撒き散らしながら折れてしまう事だろう。だが私はそれ以上の恐怖を感じている。だから私は爪を折りながら血まみれになりながらも黒い男から逃げなくてはいけない。正義のために正義のために正義のために。そう叫びながら背中に近づいてくる気配に震えが止まらない。ああ、焼け焦げた、人間の焼け焦げた匂いが私の中に入ってくる。私を、私の体の中から私を焦がしていく。ああ、人間の肉の焼ける匂いが外からではなく私の中から匂ってくる。生焼けの匂いだ。私の胃や肺が生焼けになって私の体の中から香ばしい匂いを立てている。私はその匂いを口と鼻から呼吸と共にひりだしながらも逃げ惑うのだ。叫びながら私の中の焼肉の匂いを撒き散らしながらでも振り向けば男が口を大きく空けて真っ黒な男が笑いながら私の口の中に手を入れて私のおいしそうに焼けた内臓を食べようとおいしく召し上がろうとなさるので私はああ、食べられるのならばどうぞおいしく頂いてくださいと心のどこかで思ってしまい微笑ましい笑顔を浮かべてしまう。
77 ◆a9PA
(2/3)
──私はいつもそこで目を覚ます。体中が汗でまみれ、私は自分の体の中から焼け焦げた匂いがしないかと恐怖に怯えながら吐き出された自分の息の匂いを嗅ぐのです。そして居たって普通の私の匂いに息をなでおろしていると、真っ黒い男が部屋の隅に傾きながら立っているのに気づくのです。黒い男は真っ赤な舌を口から垂らしながら私の事をおいしそうに見つめるので、私はまだ夢の続きなのかと錯覚しながら逃げまどい、その騒ぎに同室の連中に押さえつけられ刑務官がまたかという表情で私の事を見下ろしてきます。違う、そんな顔で見ないでくれ。私は警察官だ。私は正義だったはずだ。何故、何故こうなってしまったんだ。お前達にはあいつが見えないのか。部屋の隅で赤い舌を垂らして私をおいしそうに見つめているあいつの姿が。ああ、助けてくれ。誰か私を助けてくれ。そう叫んでいると女の子の声で「たすからないよ」と何処からとも無く私に声が、ああ、私は狂ってしまったのか、それとも、私もまた悪の一部になってしまったのだろうか。あの怪物が、私を、私と一緒になろうとしている。ああ。昔読んだあの絵本。なんという恐ろしい出来事が起こってしまったのだろう。しかしもしそうならば、私はもう助からない。私は大きな間違いを犯してしまったのだ。いや、違う。違う。違うよ。違うよ。違うと言ってよお母さん。お母さん。お母さん。お母さん。お母さん。お母さん。お母さん。お母さん。
──私はいつもそこで目を覚ます。体中が汗でまみれ、私は自分の体の中から焼け焦げた匂いがしないかと恐怖に怯えながら吐き出された自分の息の匂いを嗅ぐのです。そして居たって普通の私の匂いに息をなでおろしていると、真っ黒い男が部屋の隅に傾きながら立っているのに気づくのです。黒い男は真っ赤な舌を口から垂らしながら私の事をおいしそうに見つめるので、私はまだ夢の続きなのかと錯覚しながら逃げまどい、その騒ぎに同室の連中に押さえつけられ刑務官がまたかという表情で私の事を見下ろしてきます。違う、そんな顔で見ないでくれ。私は警察官だ。私は正義だったはずだ。何故、何故こうなってしまったんだ。お前達にはあいつが見えないのか。部屋の隅で赤い舌を垂らして私をおいしそうに見つめているあいつの姿が。ああ、助けてくれ。誰か私を助けてくれ。そう叫んでいると女の子の声で「たすからないよ」と何処からとも無く私に声が、ああ、私は狂ってしまったのか、それとも、私もまた悪の一部になってしまったのだろうか。あの怪物が、私を、私と一緒になろうとしている。ああ。昔読んだあの絵本。なんという恐ろしい出来事が起こってしまったのだろう。しかしもしそうならば、私はもう助からない。私は大きな間違いを犯してしまったのだ。いや、違う。違う。違うよ。違うよ。違うと言ってよお母さん。お母さん。お母さん。お母さん。お母さん。お母さん。お母さん。お母さん。
78 ◆a9PA
──今日も黒い男は私から離れない。私が眠れば私の枕元に立って私の顔を焼け焦げた顔で覗きこんでくるし、私が食事を取っていればその食事を赤い舌から垂らしたどす黒い唾液で汚してくるから私は結局なにも食べる事は出来ない。でも食べなければ食べなければ。私は死にたくない。いずれ私はここから出なければいけない。私だけが知っている。だから、私は戦わなくてはいけない。私は正義だ。選ばれし戦士なのだ。そういえば今日は何日だったっけ。そういえば私は誰だったろう。お母さんの顔が思い出せない。もしかしたら私にお母さんはいないのかもしれない。それとも私がお母さんだったのだろうか。それともあの黒い人がお母さんなのかな。お母さん、どうしてそんなに真っ黒なの?
──べきばきべきばきべきばきべきばきがらがらがらん
──お前は決して助からない (※ここだけ筆跡が違う)
──これはぼくのせかいだ。おまえははいってくるな。これはぼくのゆめだ。
──やめてやめてやめてやめてややめめてやめてめやめてやめてめやめ
──
──
── (ここから数ページに渡って何も書かれてはいない)
──
──
──わすれてしまうまえにここにかきこんでおこうとおもう。えほんをみろ。えほんをみろ。そこにすべてがる。わすてはいけない。これはたかいなだ。おかさん。おとさん。ぼくはしょうらいけいさつかんになつてわるいひとをいつぱいたいほしたいとおもいます まる
──べきばきべきばきべきばきべきばきがらがらがらん
──お前は決して助からない (※ここだけ筆跡が違う)
──これはぼくのせかいだ。おまえははいってくるな。これはぼくのゆめだ。
──やめてやめてやめてやめてややめめてやめてめやめてやめてめやめ
──
──
── (ここから数ページに渡って何も書かれてはいない)
──
──
──わすれてしまうまえにここにかきこんでおこうとおもう。えほんをみろ。えほんをみろ。そこにすべてがる。わすてはいけない。これはたかいなだ。おかさん。おとさん。ぼくはしょうらいけいさつかんになつてわるいひとをいつぱいたいほしたいとおもいます まる
79 ◆a9PA
平成20年3月11日 阿嵩埼市ホームページより
─不審者情報をお知らせします。
─発生日時
平成20年3月11日 午後3時24分頃
─発生場所
阿嵩埼市長嶺町アパート 石田荘近辺
─発生状況
不審者は青い自転車に乗って被害者に背後から近づき、被害者の背中を押し転倒させた後、 「こいつはハキが悪そうだ」と話し、何れかへ逃走した。
─不審者の概要
不詳
(以下略)
─不審者情報をお知らせします。
─発生日時
平成20年3月11日 午後3時24分頃
─発生場所
阿嵩埼市長嶺町アパート 石田荘近辺
─発生状況
不審者は青い自転車に乗って被害者に背後から近づき、被害者の背中を押し転倒させた後、 「こいつはハキが悪そうだ」と話し、何れかへ逃走した。
─不審者の概要
不詳
(以下略)
80 ◆a9PA
平成21年1月11日 某ブログのキャッシュより
今日最悪な物を見ちゃったよ…。
動画サイト──に、阿嵩埼事件って動画があったから、なにかなーって思ってみたら…、誰だよあんなのUPったのさぁ!もう今日眠れないし…(´;ω;`)
動画開いたらいきなり檻みたいなのが映ってさ、その中に裸の男の人が閉じ込められてるの。で、男の人の手足が半分無いんだよね。ぶっつり切れて無くなってんの。切断されてんの。
でさぁ、切断面には、ええと、骨を守ろうとしたのかね、肉がこう、内部へ内部へめり込むように縮まってるの。もー、夢に出るよ……。
男の人はなんか「おなかちゅいたーおなかちゅいたー」って赤ちゃん言葉でずっとわめいてるのね。必死になって暴れるみたいにしてるから、その、切断面がコンクリートの床に擦れて出血してるし…。床もう血だらけ!!!それでも「おなかちゅいたーおなかちゅいたー」って、狂ってるよあれ。
でもさぁ、なんか自分の運命受け入れちゃってる雰囲気があるんだよね。必死だけど、なんか半分幸せそうに見えちゃってさ。人間の幸せってどこにあるかわかんないよね。あの動画の人、今度は腕と足の付け根から切断されちゃっても、別に抵抗しないんじゃないかなぁ。なんかそんな気がした。あの人にとってはあれが一番の幸せなんじゃないかな、知らんがなだけど。…って私はそんな趣味ないからね!!!!!!
でさ、さっき見てきたらもう削除されてたけど、マジでUPったヤツ氏ね!!!!!!!!!
今日最悪な物を見ちゃったよ…。
動画サイト──に、阿嵩埼事件って動画があったから、なにかなーって思ってみたら…、誰だよあんなのUPったのさぁ!もう今日眠れないし…(´;ω;`)
動画開いたらいきなり檻みたいなのが映ってさ、その中に裸の男の人が閉じ込められてるの。で、男の人の手足が半分無いんだよね。ぶっつり切れて無くなってんの。切断されてんの。
でさぁ、切断面には、ええと、骨を守ろうとしたのかね、肉がこう、内部へ内部へめり込むように縮まってるの。もー、夢に出るよ……。
男の人はなんか「おなかちゅいたーおなかちゅいたー」って赤ちゃん言葉でずっとわめいてるのね。必死になって暴れるみたいにしてるから、その、切断面がコンクリートの床に擦れて出血してるし…。床もう血だらけ!!!それでも「おなかちゅいたーおなかちゅいたー」って、狂ってるよあれ。
でもさぁ、なんか自分の運命受け入れちゃってる雰囲気があるんだよね。必死だけど、なんか半分幸せそうに見えちゃってさ。人間の幸せってどこにあるかわかんないよね。あの動画の人、今度は腕と足の付け根から切断されちゃっても、別に抵抗しないんじゃないかなぁ。なんかそんな気がした。あの人にとってはあれが一番の幸せなんじゃないかな、知らんがなだけど。…って私はそんな趣味ないからね!!!!!!
でさ、さっき見てきたらもう削除されてたけど、マジでUPったヤツ氏ね!!!!!!!!!
81 ◆a9PA
平成21年6月4日出版 「僕の、私の町の怪談」より抜粋
「怪人黒男」
私の町には怪人黒男が出ます。
怪人黒男は夜の7時7分に商店街から山に向かう一本道を物凄い速さで走るのです。
あまりの速さに体が空中に浮いてしまうんです。
怪人黒男は姿は男ですが、声は女みたいに高い声を出します。
その声を聞いてしまった人は耳が壊れて何も聞こえなくなってしまいます。
怪人黒男は不断は普通の人間の姿をしています。
でも分かる人が見ればその人が怪人黒男だとすぐに分かってしまいます。
すぐに分かってしまいますが、それを顔に出してはいけません。
正体を知られたと分かった怪人黒男は、その人を連れ去ってしまうからです。
そして連れ去られた人は同じように怪人黒男になるか、殺されてしまいます。
そうやって怪人黒男はどんどん仲間を増やしているのです。
あなたの隣にいる人も、もう怪人黒男かもしれません。
でも、気づいても顔に出しちゃだめだよ?
たとえそれがあなたのお父さんやお母さんでもね。
(千葉県阿嵩埼市 かわかみあずさちゃんからの投稿)
「怪人黒男」
私の町には怪人黒男が出ます。
怪人黒男は夜の7時7分に商店街から山に向かう一本道を物凄い速さで走るのです。
あまりの速さに体が空中に浮いてしまうんです。
怪人黒男は姿は男ですが、声は女みたいに高い声を出します。
その声を聞いてしまった人は耳が壊れて何も聞こえなくなってしまいます。
怪人黒男は不断は普通の人間の姿をしています。
でも分かる人が見ればその人が怪人黒男だとすぐに分かってしまいます。
すぐに分かってしまいますが、それを顔に出してはいけません。
正体を知られたと分かった怪人黒男は、その人を連れ去ってしまうからです。
そして連れ去られた人は同じように怪人黒男になるか、殺されてしまいます。
そうやって怪人黒男はどんどん仲間を増やしているのです。
あなたの隣にいる人も、もう怪人黒男かもしれません。
でも、気づいても顔に出しちゃだめだよ?
たとえそれがあなたのお父さんやお母さんでもね。
(千葉県阿嵩埼市 かわかみあずさちゃんからの投稿)
82 ◆a9PA
平成21年7月1日 阿嵩埼日報より
「男性の変死体発見」
先月31日午前10時10分ごろ、千葉県奄ヶ山市武中町の民家から男性の変死体が発見された。発見したのは連絡が無い事を心配し駆けつけた親族で、布団の中で冷たくなっている男性を発見、阿嵩埼中央署により死亡が確認された。
男性の死因は呼吸不全と見られるが、遺体に死の直前に付けられたとみられる蚯蚓腫れのような痕や、遺体周辺に不審な遺留物が発見された事から、事件事故の両面から捜査を進めている。
また男性は死亡前、友人らに女が来ると話していたという事で、警察はその女の行方も捜している。
「男性の変死体発見」
先月31日午前10時10分ごろ、千葉県奄ヶ山市武中町の民家から男性の変死体が発見された。発見したのは連絡が無い事を心配し駆けつけた親族で、布団の中で冷たくなっている男性を発見、阿嵩埼中央署により死亡が確認された。
男性の死因は呼吸不全と見られるが、遺体に死の直前に付けられたとみられる蚯蚓腫れのような痕や、遺体周辺に不審な遺留物が発見された事から、事件事故の両面から捜査を進めている。
また男性は死亡前、友人らに女が来ると話していたという事で、警察はその女の行方も捜している。
83 ◆a9PA
平成21年7月19日 週刊△△より
「阿嵩埼事件の被害者妻が自殺!娘は謎の失踪」
皆さんは阿嵩埼事件の関係者にまた死者が出た事をご存知だろうか。死亡したのは平成10年12月に保護され、警察病院で自殺した椿真輔さんの妻、椿裕子さんだ。第一発見者は裕子さんの親族で、連絡が取れない事を心配した親族が警察に相談。合鍵で自宅に入ったところ、台所で首を吊って亡くなっている裕子さんを発見したのだ。
裕子さんの着ていたエプロンからは遺書と思われる数枚の紙が発見されたが、その内容が不可解な物だったため、事件性の有無も含めて警察が現在も捜査を進めているというのだ。
遺書には娘に当てた謝罪の言葉のほかに、次のような謎の書きこみがされていたという。
──ようやく鎮護鉄が見つかった
──壊れた守り神達は宿命を見失った
──生える前に死を選ぶ
──彼らはもう神様の一部
遺書の一部は焼け焦げており、何者かが隠蔽を図った可能性もあるとみて警察も動いている。だがもっとも気がかりなのは、裕子さんが遺書で謝罪している娘の安否なのだ。
なんと裕子さんの死体が発見された直後に、今度は裕子さんの娘、椿豊海さんの行方が分からなくなっているというのだ。警察は裕子さんの死のなんらかの事情を知っている物とみて豊海さんの行方を捜索している。
親族によると豊海さんの部屋からは財布や洋服等の日用品が持ち出された形跡があり、また彼女が使っていたノートパソコンからはデータがすべて消されていたという。また彼女の部屋には大量のおふだが壁中に貼られていたと親族は語っている。それについては亡くなった椿真輔さんの実家が寺を運営しており、そこから持ち出された物ではないかという話だった。
我々は取材を進めていくうちに、豊海さんが勤めていた広告代理店の友人Tさんに話を聞く事が出来た。Tさんの話によると、豊海さんは裕子さんの遺体が発見される数日前から何かに怯えるような仕草を見せており、失踪直前には「これから暫く会えないかも」とTさんに話していたという──(以下略)
「阿嵩埼事件の被害者妻が自殺!娘は謎の失踪」
皆さんは阿嵩埼事件の関係者にまた死者が出た事をご存知だろうか。死亡したのは平成10年12月に保護され、警察病院で自殺した椿真輔さんの妻、椿裕子さんだ。第一発見者は裕子さんの親族で、連絡が取れない事を心配した親族が警察に相談。合鍵で自宅に入ったところ、台所で首を吊って亡くなっている裕子さんを発見したのだ。
裕子さんの着ていたエプロンからは遺書と思われる数枚の紙が発見されたが、その内容が不可解な物だったため、事件性の有無も含めて警察が現在も捜査を進めているというのだ。
遺書には娘に当てた謝罪の言葉のほかに、次のような謎の書きこみがされていたという。
──ようやく鎮護鉄が見つかった
──壊れた守り神達は宿命を見失った
──生える前に死を選ぶ
──彼らはもう神様の一部
遺書の一部は焼け焦げており、何者かが隠蔽を図った可能性もあるとみて警察も動いている。だがもっとも気がかりなのは、裕子さんが遺書で謝罪している娘の安否なのだ。
なんと裕子さんの死体が発見された直後に、今度は裕子さんの娘、椿豊海さんの行方が分からなくなっているというのだ。警察は裕子さんの死のなんらかの事情を知っている物とみて豊海さんの行方を捜索している。
親族によると豊海さんの部屋からは財布や洋服等の日用品が持ち出された形跡があり、また彼女が使っていたノートパソコンからはデータがすべて消されていたという。また彼女の部屋には大量のおふだが壁中に貼られていたと親族は語っている。それについては亡くなった椿真輔さんの実家が寺を運営しており、そこから持ち出された物ではないかという話だった。
我々は取材を進めていくうちに、豊海さんが勤めていた広告代理店の友人Tさんに話を聞く事が出来た。Tさんの話によると、豊海さんは裕子さんの遺体が発見される数日前から何かに怯えるような仕草を見せており、失踪直前には「これから暫く会えないかも」とTさんに話していたという──(以下略)
84 ◆a9PA
平成21年11月3日 月刊オカルト△△より
「呪いの町…阿嵩埼市の謎に迫る 第一回 疫病と八ツ寺」
皆さんは呪われた町。千葉県にある阿嵩埼市をご存知だろうか?過去、この町では数多くの猟奇殺人が発生し、現在はその人口も交通の利便性が高いにも関わらず着々と減りつつあるという。
その阿嵩埼市を囲うように存在しているのが八ツ寺と呼ばれる八つの寺院である。この地でははるか昔、原因不明の疫病が流行り、何百人、何千人が死亡したとも言われている。現在に至ってもその疫病の正体は明らかにはなっていないが、一部学者によれば結核の近い伝染病だったのではないかと推測されている。だが当時の人々はそれらの病気に対する薬など持っている筈も無く、神仏に縋るしか方法は残されていなかった。
そこで人々は阿嵩埼を囲むように八つの寺を建て、疫病を封じ込めようとしたとも言われている。その名残として板垣岳中腹にはかつて作られた慰霊碑が未だ残っている。
しかし、それらは本当に「疫病」だったのだろうか。現在人々の間でまことしやかに囁かれている噂がある。昔、人々が封じた物は「災い」や「呪い」といった目に見えない物だったのではないだろうかと。それらが目覚め、人々を襲っているのではないかと──。
人々がそう思うのも無理はない。昭和54年を皮切りにこの町で起こった数々の惨劇。そして多くの失踪者達。我々の取材によると、この阿嵩埼市では約30年間において未だ発見されていない失踪者が18人も出ているのである。神隠しの町…そう語る人も少なくは無い。
我々は事の真相を確かめるべく、八ツ寺の一つ、福嶋寺に取材を申し込んだが頑なに取材拒否をされてしまった。同じく丹沢寺、蒲生寺、稲葉寺、水山寺等にも取材を申し込んだがことごとく拒否。その態度に我々は彼らが何かを隠している事を確信した。私達は諦めない。来月号にて更なる恐るべき真実を明らかにする事を読者に誓おう──筆者/蓮山大河
「呪いの町…阿嵩埼市の謎に迫る 第一回 疫病と八ツ寺」
皆さんは呪われた町。千葉県にある阿嵩埼市をご存知だろうか?過去、この町では数多くの猟奇殺人が発生し、現在はその人口も交通の利便性が高いにも関わらず着々と減りつつあるという。
その阿嵩埼市を囲うように存在しているのが八ツ寺と呼ばれる八つの寺院である。この地でははるか昔、原因不明の疫病が流行り、何百人、何千人が死亡したとも言われている。現在に至ってもその疫病の正体は明らかにはなっていないが、一部学者によれば結核の近い伝染病だったのではないかと推測されている。だが当時の人々はそれらの病気に対する薬など持っている筈も無く、神仏に縋るしか方法は残されていなかった。
そこで人々は阿嵩埼を囲むように八つの寺を建て、疫病を封じ込めようとしたとも言われている。その名残として板垣岳中腹にはかつて作られた慰霊碑が未だ残っている。
しかし、それらは本当に「疫病」だったのだろうか。現在人々の間でまことしやかに囁かれている噂がある。昔、人々が封じた物は「災い」や「呪い」といった目に見えない物だったのではないだろうかと。それらが目覚め、人々を襲っているのではないかと──。
人々がそう思うのも無理はない。昭和54年を皮切りにこの町で起こった数々の惨劇。そして多くの失踪者達。我々の取材によると、この阿嵩埼市では約30年間において未だ発見されていない失踪者が18人も出ているのである。神隠しの町…そう語る人も少なくは無い。
我々は事の真相を確かめるべく、八ツ寺の一つ、福嶋寺に取材を申し込んだが頑なに取材拒否をされてしまった。同じく丹沢寺、蒲生寺、稲葉寺、水山寺等にも取材を申し込んだがことごとく拒否。その態度に我々は彼らが何かを隠している事を確信した。私達は諦めない。来月号にて更なる恐るべき真実を明らかにする事を読者に誓おう──筆者/蓮山大河
85 ◆a9PA
平成21年11月11日 阿嵩埼市ホームページより
─不審者情報をお知らせします。
─発生日時
平成21年11月11日 午後5時35分頃
─発生場所
阿嵩埼真綿商店街北口
─発生状況
不審者は黒い車にから顔を出して近づき、小学生男児に「少しの苦しみで永遠に幸せになれるのと、少しの幸せで永遠に苦しむのとではどちらがいい?」と声をかけた。男児が「どっちもいや」と答えると、「ならばお前はどちらにもなれない」と叫び、何れかへ逃走した。
─不審者の概要
黒い帽子、黒いサングラス。
(以下略)
─不審者情報をお知らせします。
─発生日時
平成21年11月11日 午後5時35分頃
─発生場所
阿嵩埼真綿商店街北口
─発生状況
不審者は黒い車にから顔を出して近づき、小学生男児に「少しの苦しみで永遠に幸せになれるのと、少しの幸せで永遠に苦しむのとではどちらがいい?」と声をかけた。男児が「どっちもいや」と答えると、「ならばお前はどちらにもなれない」と叫び、何れかへ逃走した。
─不審者の概要
黒い帽子、黒いサングラス。
(以下略)
86 ◆a9PA
平成21年11月25日 インターネット掲示板の書こみより
「【心霊】月刊オカルト△△について語るスレ【暴走取材】」
154 :正義の名無し:2009/11/25(水) 21:14:54 ID:89oQfFaDfta
月刊オカルト△△やばいな。やっちまった。阿嵩埼はやばい。あそこ人間の住む所じゃないって。俺の親戚もあそこ住んでたんだけどさ、二年前から音信不通になって、両親が尋ねていったら家の中に誰も居なかったんだよ。マジ失踪超こわい。
家の中にはなんか変なチラシが散らばってて、ひとつになれるとか、魂とかなんとか書いてあったらしいしよ。俺、絶対阿嵩埼には近づかないわ。
155 :正義の名無し:2009/11/25(水) 21:25:54 ID:89oQfFaDfta
>>154
阿嵩埼は神に通じる町。神と共に神となりすべてが神となる町。偽りが存在せず真実のみが生きる町。みんな阿嵩埼に行こう。みんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こう
160 :正義の名無し:2009/11/25(水) 21:25:54 ID:Grtna0a5afF4
>>154
>>155
ID。つーか、たった10分のうちに何があったんだよ。
「【心霊】月刊オカルト△△について語るスレ【暴走取材】」
154 :正義の名無し:2009/11/25(水) 21:14:54 ID:89oQfFaDfta
月刊オカルト△△やばいな。やっちまった。阿嵩埼はやばい。あそこ人間の住む所じゃないって。俺の親戚もあそこ住んでたんだけどさ、二年前から音信不通になって、両親が尋ねていったら家の中に誰も居なかったんだよ。マジ失踪超こわい。
家の中にはなんか変なチラシが散らばってて、ひとつになれるとか、魂とかなんとか書いてあったらしいしよ。俺、絶対阿嵩埼には近づかないわ。
155 :正義の名無し:2009/11/25(水) 21:25:54 ID:89oQfFaDfta
>>154
阿嵩埼は神に通じる町。神と共に神となりすべてが神となる町。偽りが存在せず真実のみが生きる町。みんな阿嵩埼に行こう。みんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こうみんな阿嵩埼に行こう
160 :正義の名無し:2009/11/25(水) 21:25:54 ID:Grtna0a5afF4
>>154
>>155
ID。つーか、たった10分のうちに何があったんだよ。
87 ◆a9PA
平成21年12月3日 月刊オカルト△△より
まことに勝手ながら、筆者急病の為、今回掲載予定だった「呪いの町…阿嵩埼市の謎に迫る第ニ回」は休載とさせていただきます。来月号にご期待下さい。
まことに勝手ながら、筆者急病の為、今回掲載予定だった「呪いの町…阿嵩埼市の謎に迫る第ニ回」は休載とさせていただきます。来月号にご期待下さい。
88 ◆a9PA
平成22年1月10日 阿嵩埼日報 尋ね人欄より
中島里子さんを捜しています。
平成1年3月4日生まれ
阿嵩埼市真綿町7-14-9148
平成21年12月3日に家を出たきり戻ってきません。
当時の服装は青い水玉のワンピース、青色のズボンです。
目一重、笑うと笑窪が出来、口元にほくろがあります。
里子ちゃん、お父さん、お母さんはとても心配しています。
どうか無事に戻ってきてください。
この記事を見たら連絡下さい。
(電話番号/04-××××-××××)
中島里子さんを捜しています。
平成1年3月4日生まれ
阿嵩埼市真綿町7-14-9148
平成21年12月3日に家を出たきり戻ってきません。
当時の服装は青い水玉のワンピース、青色のズボンです。
目一重、笑うと笑窪が出来、口元にほくろがあります。
里子ちゃん、お父さん、お母さんはとても心配しています。
どうか無事に戻ってきてください。
この記事を見たら連絡下さい。
(電話番号/04-××××-××××)
89 ◆a9PA
平成22年1月16日 阿嵩埼事件及び関係者の死亡一覧
─昭和54年11月10日 久我利彦さん 失踪
─昭和54年11月12日 久我利彦さん 自宅留守番電話にメッセージを残す
─昭和54年11月13日 久我利彦さん 遺体発見
─昭和55年04月11日 日野豪くん 水谷昭くん誘拐
─昭和55年04月12日 水谷昭くん 保護
─昭和55年04月13日 日野豪くん 遺体発見
─昭和57年05月02日 日野克也さん 心臓マヒで死去
─平成07年06月28日 竹尻光子さん 失踪
─平成07年07月09日 竹尻光子さん 遺体発見
─平成07年07月09日 久我操子さん 日野滋さん遺体発見
─平成08年06月28日 久我昌司さん 失踪
─平成10年11月07日 椿真輔さん 失踪
─平成10年12月03日 椿真輔さん 保護
─平成10年12月04日 椿真輔さん 自殺
─平成16年11月09日 樋口さん一家五人焼死 佐々木克郎容疑者逮捕
─平成17年09月07日 久我昌司さん 体の一部発見
─平成18年10月04日 地野正嗣さん 死去
─平成19年09月07日 佐々木克郎服役囚 獄死
─平成21年07月10日 椿裕子さん 自殺
─平成21年07月11日 椿豊海さん 失踪
その他行方不明者は数が膨大な為割愛させていただきます。
─昭和54年11月10日 久我利彦さん 失踪
─昭和54年11月12日 久我利彦さん 自宅留守番電話にメッセージを残す
─昭和54年11月13日 久我利彦さん 遺体発見
─昭和55年04月11日 日野豪くん 水谷昭くん誘拐
─昭和55年04月12日 水谷昭くん 保護
─昭和55年04月13日 日野豪くん 遺体発見
─昭和57年05月02日 日野克也さん 心臓マヒで死去
─平成07年06月28日 竹尻光子さん 失踪
─平成07年07月09日 竹尻光子さん 遺体発見
─平成07年07月09日 久我操子さん 日野滋さん遺体発見
─平成08年06月28日 久我昌司さん 失踪
─平成10年11月07日 椿真輔さん 失踪
─平成10年12月03日 椿真輔さん 保護
─平成10年12月04日 椿真輔さん 自殺
─平成16年11月09日 樋口さん一家五人焼死 佐々木克郎容疑者逮捕
─平成17年09月07日 久我昌司さん 体の一部発見
─平成18年10月04日 地野正嗣さん 死去
─平成19年09月07日 佐々木克郎服役囚 獄死
─平成21年07月10日 椿裕子さん 自殺
─平成21年07月11日 椿豊海さん 失踪
その他行方不明者は数が膨大な為割愛させていただきます。
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平成21年11月29日 遺族が公開した椿裕子さんの遺書を、最後に。
遺書
豊海ちゃん、ごめんなさい。
私はもうすぐ死ぬ事にします。それはきちんと天国に行くためです。
お父さんには死んでも会う事は出来ないけれど、きっといつか豊海ちゃんには会えるわね。
でも長生きしてね。病気なんかしないでね。私がいなくなってもご飯食べてね。
いい人を見つけて結婚して、素敵な家庭を作りなさいね。私は天国で応援しています。
ごめんなさい。本当にごめんなさい。でもお母さんはお父さん達みたいにはなりたくないの。
ああなったら、輪廻すら果たせないから、私は天国に一足先に行ってきます。
豊海ちゃん。私が死んだら、この町を出なさい。
お金は全部引き出して、いつもの場所に隠してあります。
ようやく鎮護鉄が見つかったけれど、豊海ちゃ──
(焼け焦げており解読不能)
──して、壊れた守り神達は宿命を見失ってしまった。
彼らはもう神様の一部。
優しげな微笑みで近づいて、きっと私を連れに来る。
だから私は、生える前に死を選びます。
豊海ちゃん、本当に本当にごめんなさい。
さようなら。
私の愛する娘へ
遺書
豊海ちゃん、ごめんなさい。
私はもうすぐ死ぬ事にします。それはきちんと天国に行くためです。
お父さんには死んでも会う事は出来ないけれど、きっといつか豊海ちゃんには会えるわね。
でも長生きしてね。病気なんかしないでね。私がいなくなってもご飯食べてね。
いい人を見つけて結婚して、素敵な家庭を作りなさいね。私は天国で応援しています。
ごめんなさい。本当にごめんなさい。でもお母さんはお父さん達みたいにはなりたくないの。
ああなったら、輪廻すら果たせないから、私は天国に一足先に行ってきます。
豊海ちゃん。私が死んだら、この町を出なさい。
お金は全部引き出して、いつもの場所に隠してあります。
ようやく鎮護鉄が見つかったけれど、豊海ちゃ──
(焼け焦げており解読不能)
──して、壊れた守り神達は宿命を見失ってしまった。
彼らはもう神様の一部。
優しげな微笑みで近づいて、きっと私を連れに来る。
だから私は、生える前に死を選びます。
豊海ちゃん、本当に本当にごめんなさい。
さようなら。
私の愛する娘へ
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(1/2)
平成22年1月20日 某事件考察ホームページより。
▼コンビニのレシート
事件を推理するに、重要な手がかりとなりそうなのが、昭和54年11月16日に被害者の財布から発見されたレシートである。このレシートを見ると、第一の被害者である久我利彦さんが大量の食料や文房具、電池などを購入している事が分かる。だが、被害者は既婚者であり、このような大量の食料を買い込む必要があったのだろうか。当時のインタビューを確認しても、この疑問点を解決するような証言は出てきていない。
また、事件の一ヶ月前もの前のレシートを、彼は大事に持っていたのだろうか。これは彼が何かを伝えようとしているのかもしれない。
コンビニエンスストア××××阿嵩埼三上店に私も向かってみた所、このコンビニは個人経営している小さなコンビニであり、どの文房具を買っても、レシートには文房具と印刷される事が分かった。だが「文房具 7点」──このように7点も同時購入するような物は見当たらなかった。
更に平成3年6月7日、このコンビニには強盗が入っている。当時のニュースを録画したビデオを入手する事が出来たので、確認すると奇妙な事が分かった。犯人は明らかに「店内にいた他の客」に向かって怯えを見せていたのである。個人名を明記する事はできないが、このコンビニのすぐ近くには八ツ寺と呼ばれる八つの寺院のうちの一つが存在しており、その関係者の一人が頻繁に訪れていた、という事を書かせていただこう。
平成22年1月20日 某事件考察ホームページより。
▼コンビニのレシート
事件を推理するに、重要な手がかりとなりそうなのが、昭和54年11月16日に被害者の財布から発見されたレシートである。このレシートを見ると、第一の被害者である久我利彦さんが大量の食料や文房具、電池などを購入している事が分かる。だが、被害者は既婚者であり、このような大量の食料を買い込む必要があったのだろうか。当時のインタビューを確認しても、この疑問点を解決するような証言は出てきていない。
また、事件の一ヶ月前もの前のレシートを、彼は大事に持っていたのだろうか。これは彼が何かを伝えようとしているのかもしれない。
コンビニエンスストア××××阿嵩埼三上店に私も向かってみた所、このコンビニは個人経営している小さなコンビニであり、どの文房具を買っても、レシートには文房具と印刷される事が分かった。だが「文房具 7点」──このように7点も同時購入するような物は見当たらなかった。
更に平成3年6月7日、このコンビニには強盗が入っている。当時のニュースを録画したビデオを入手する事が出来たので、確認すると奇妙な事が分かった。犯人は明らかに「店内にいた他の客」に向かって怯えを見せていたのである。個人名を明記する事はできないが、このコンビニのすぐ近くには八ツ寺と呼ばれる八つの寺院のうちの一つが存在しており、その関係者の一人が頻繁に訪れていた、という事を書かせていただこう。
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(2/2)
▼心霊現象
この事件と平行して証言されているのが女性霊の出現である。
平成11年12月25日に出版された「もう帰れない怖い話 〜日本各地から寄せられた戦慄の怪談集〜」にも掲載されている女性霊(名前は伏せる)の姿が、何者かに拷問を受けていた事を示している。これは、彼女がまた阿嵩埼事件の被害者である事を示しているのではないだろうか。
だが、この本によると彼女が殺害されたのは第一の事件が発生するよりも、もっと以前なのである。この本に登場する老婆の証言を信用するならば、この被害者女性は「二人組の男」によって殺されている事が分かる。
私はこの本に載っている女性霊の名前と、この町で行方不明になった人々のリストと照らし合わせてみた。すると、ある一つの事実が浮上してきたのである。
行方不明者は勢田××さん。名前が本に載っていた女性の名前と一致する。彼女が失踪したのは昭和54年10月3日。第一の被害者が発見される十日前なのである。そして、この日付は上記のレシートの日付と一致するのである。これは偶然なのだろうか──?
彼女の遺体はいまだに発見されていない。
(以下略)
▼心霊現象
この事件と平行して証言されているのが女性霊の出現である。
平成11年12月25日に出版された「もう帰れない怖い話 〜日本各地から寄せられた戦慄の怪談集〜」にも掲載されている女性霊(名前は伏せる)の姿が、何者かに拷問を受けていた事を示している。これは、彼女がまた阿嵩埼事件の被害者である事を示しているのではないだろうか。
だが、この本によると彼女が殺害されたのは第一の事件が発生するよりも、もっと以前なのである。この本に登場する老婆の証言を信用するならば、この被害者女性は「二人組の男」によって殺されている事が分かる。
私はこの本に載っている女性霊の名前と、この町で行方不明になった人々のリストと照らし合わせてみた。すると、ある一つの事実が浮上してきたのである。
行方不明者は勢田××さん。名前が本に載っていた女性の名前と一致する。彼女が失踪したのは昭和54年10月3日。第一の被害者が発見される十日前なのである。そして、この日付は上記のレシートの日付と一致するのである。これは偶然なのだろうか──?
彼女の遺体はいまだに発見されていない。
(以下略)
93 無名さん
小さい頃、ところてんを肥溜めに落とした話があってな
94 ◆a9PA
以上が阿嵩埼事件に関係していると思われる事件、事象、記事一覧である。
上記のように、阿嵩埼事件は多くの無差別とも言える被害者を生んだにも関わらず、最初の事件から31年、未だ何の解決も見てはいない──。
このように事件、事象等を時系列的に編集するに当たっていくつかの疑問点、矛盾点、共通点等に気づかされる。それらが何を意味するのかは不明だが、読者への無用の先入観を与える事は返って真実から遠ざける結果となることも危惧し、明記を避けさせて頂いた。
いや、ここまでお読みくださった皆様ならば、編者と同じく何らかの違和感を感じられていると思う。歪なジグソーパズルのピースが突如として、決して合わさるとは思えない奇妙な重なりを見せるように。
そして、編者は無事を祈らざるを得ない。未だ行方が分からない数多くの被害者達と、この事件を人々の目に再び晒す事で獣の巣に無防備に身を投じるような愚物とした危険に晒されるかもしれない編者自身と、この悪夢とも呼べる事件に対して密かなる思案を巡らせる皆様方に、物陰に生じる鬱屈とした影法師から、平穏を破壊する悪辣とした気配など決して感じることの無き事を──。
平成22年1月20日 ......編者より
上記のように、阿嵩埼事件は多くの無差別とも言える被害者を生んだにも関わらず、最初の事件から31年、未だ何の解決も見てはいない──。
このように事件、事象等を時系列的に編集するに当たっていくつかの疑問点、矛盾点、共通点等に気づかされる。それらが何を意味するのかは不明だが、読者への無用の先入観を与える事は返って真実から遠ざける結果となることも危惧し、明記を避けさせて頂いた。
いや、ここまでお読みくださった皆様ならば、編者と同じく何らかの違和感を感じられていると思う。歪なジグソーパズルのピースが突如として、決して合わさるとは思えない奇妙な重なりを見せるように。
そして、編者は無事を祈らざるを得ない。未だ行方が分からない数多くの被害者達と、この事件を人々の目に再び晒す事で獣の巣に無防備に身を投じるような愚物とした危険に晒されるかもしれない編者自身と、この悪夢とも呼べる事件に対して密かなる思案を巡らせる皆様方に、物陰に生じる鬱屈とした影法師から、平穏を破壊する悪辣とした気配など決して感じることの無き事を──。
平成22年1月20日 ......編者より
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主要参考文献
「阿嵩埼事件 闇に沈んだ町」 石井輝著 川上野出版局
「阿嵩埼事件」 木野下真琴著 綿貫出版局
「阿嵩埼市 その歴史」 川辺真一編 史壁探訪社
「日本史未解決凶悪事件」 皆野敏伸著 楽暢文庫
※なお原文を尊重しつつ、掲載の為に一部を編集した部分もあります。
また本事件につきましては捜査が依然継続中である為、一部に起きまして編集が為されております。
共にご了承下さい。
「阿嵩埼事件 闇に沈んだ町」 石井輝著 川上野出版局
「阿嵩埼事件」 木野下真琴著 綿貫出版局
「阿嵩埼市 その歴史」 川辺真一編 史壁探訪社
「日本史未解決凶悪事件」 皆野敏伸著 楽暢文庫
※なお原文を尊重しつつ、掲載の為に一部を編集した部分もあります。
また本事件につきましては捜査が依然継続中である為、一部に起きまして編集が為されております。
共にご了承下さい。
96 無名さん
>>93
ちょww
ちょww
97 ◆a9PA
(了)
98 無名さん
肥溜め挟むなw
99 ◆a9PA
コピペ終わり!
100 ◆a9PA
肥だめ有難うw