1 綾代

第5話 とある模型店店員の休日

私、綾代によるセルフロールです。
乱入可大歓迎。

内容としては単純な勧善懲悪モノで。
62 鷹山 和泉
「ありがとうございました!」


店を出る張を追って出口まで歩み寄る。

そのまま彼の背中を見送りつつ、きちんと腰を折って頭を下げて挨拶するだろうか。


「桜姉もおおきに、これに懲りずまた来てな?…3人共大歓迎やで」


店内に戻ると軽く伸びをする。

とにかく一段落、といったところだろうか。

流石に疲れの色は隠せない。

まだまだ時間は掛かりそうだ。

今日の様な偶然はあり得ないだろう。

それでもまた次があればと思う心に嘘はない。

だからこの場に残る人数を口にする。

そう、まだ見ぬ活躍をするかもしれない子を含めた数を。

バッグを肩に掛けて待つ。
63 赤居 桜
「うむ、“義を見てせざるは勇なきなり”か。しかと胸に刻み込もう。」

良い言葉だ、と
頷き、そう言うと
店を出ていく張を見送り

「あぁ、もちろんだ和泉。また来るさ……さぁ、行くぞカルマ。」

自分達も帰ろうとそう言ってカルマとともに店を出ようとするが

カルマ「あ、先行っててよ。直ぐ行くから。」

「??お、おい……カルマ……!」

カルマ「良いから良いから。」

半ば追い出すような感じで桜を先に店外へ出すと

カルマ「…………先人からの忠告。お節介焼きなくせして姉弟揃って疎いし鈍いから……気合入れなよ。じゃぁ、“ありがとう”、“またね”。」

それだけ言い残し
ベビーカーを押して彼女もまた店を出た……


「………何かあったのか?」

カルマ「んーん、別に。」

「そうか……」

二人並び歩く

「そう言えば、お前は用事があったのだな……付き合せてすまなかったな。」

カルマ「良いわよ、別に……それに…………………」

「それに?」

かなり間を置き
かなり気まずそうな顔で

カルマ「あ、アンタに電車で助けてもらった礼もちゃんと言ってなかったからね。た、助けてくれて………“ありがとう”。」

最後の方は
ギリギリ聞こえるぐらいの小声で礼を言う
複雑な感情を押し殺して振り絞った一言であることは明白だ

「ふっ……はははははっ!!」

その様子を見て大笑いする桜

カルマ「ちょ、ちょっと、なによ!人が頑張って礼を言ってんのに……!!」

「はっはっはっ!済まない、済まない。」

カルマの頭に手を置き、可愛い奴だと頭をなでる

カルマ「な、何すんのよ……!」

「…………礼などいらぬ、気にするな。当然のことをしたまでだ……」

カルマ「なにそれ……」

頭を撫でた後

「………そうだ。」

思い出したかのようにそう言うと

「またいつか、私の家に来い。龍の仏壇に手を合わせてやってくれ……レミルトンもな。きっと龍も喜ぶ。」

カルマ「分かったわよ………」

今この場にいない
カルマの兄、レミルトンの名前を出して
弟に相手に来てくれるよう頼む


そして
しばらく歩いていると
大通りの交差点に着く

カルマ「ここで良いわよ。」

「何を言っている、ちゃんと目的地まで私も……」

カルマ「良いの、ここで……ちゃんと迎えも来るから。」

「……………?」

カルマ「約束するわ。この子と一緒に、龍に会いに行くって。じゃぁね。」

「……………分かった。また会おう、カルマ。」

普段のカルマから想像できない
儚げな表情を見て何かを知られたくないのだと悟り
そう言って桜はカルマと別れた……


カルマ「………………」

桜の姿が見えなくなった後
彼女は携帯を取り出し

カルマ「…………………」

それを操作して電話を掛ける

カルマ「アリス?こっちはもう終わったわよ。早く迎えをちょうだい……今日もやるんでしょ?バトルを……」


ガンプラマスク02
楪カルマ


彼女は
自身の飼い主へ連絡を入れ
今宵もまた、誰にも自身の正体を知られぬまま戦場へ向かうのであった
64 楪 レミルトン
鷹山和泉たちがガンプラ強盗団とバトルをしている丁度その時
一人の男が、銀髪の美少女と共に日本へと帰国していた

「………………」

楪レミルトン
ガンプラマスク02こと楪カルマの兄であり……

ガンプラバトル国際審判委員のメンバーでもある男

「…………令嬢(フロライン)か。」

サングラス越しに自分を待つ女を見つけ、接近すると
すれ違いざまに一枚の封筒を誰にも気づかれないように受け取る

令嬢「そこに、次の任務と貴方が追っているものの情報が記されています。」

「分かった。」

それだけ言うと令嬢と呼ばれた女性はいつの間にかいなくなっていた

「行くぞ、ペルセポネ……」

ペルセポネ「はい、レミィ。」

ペルセポネと呼ばれた少女は静かに応える

「この国でやる仕事は多い気を抜くなよ。」

封筒を破り
中に入っていた書類を確認して、彼は呟いた
65 鷹山 和泉
「ありがとうございました!」


残る3人の背中を送り、声を掛けてから自動ドアの電源を切る。

そのまま手動でドアを開けて警官と共に外へ出た。

先ずは自動ドアを施錠。

次に手早くシャッターを下ろして鍵穴へと鍵を差し込み、施錠する。

後は完全に閉まっているかを確認し、まだ真新しいシャッターへ臨時休業の貼り紙をするだろうか。


「…先人、な」


最後に残した言葉を口に出してみる。

思わずクツクツと小さな笑い声を洩らす。

此方を振り返る警官に思い出し笑いですとだけ告げるだろう。


「…前途多難やな、多分」


ポツリと呟いた言葉は一筋の風に掻き消された。

パトカーに乗り、その場を去る。


.第5話 END