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太陽へ

どうかアナタが此処に気付きません様。因みにボクは兄様の代理、何者でも在り得ない唯の冬です。


アナタと離れてから幾つもの日々を通り過ぎ、兄様とアナタは幾つもの季節を離れて過ごしました。…―最初はとても辛く、でも其の内慣れてしまい、今は普通の様な状態になってしまった。


……―兄様がアナタを愛するキモチは変わりません。ボクは其れを知っている。
―だけど…御願いします、どうかアナタは逃げて下さい。


兄様は悲しくて寂しい人、表面上はとても強くても、内面は弱い為に暖かく自分に優しいモノなら何にでも縋り付いてしまう。そして、愛を素直に信じられぬ人だから。


ボクはアナタが傷付く姿を見たくない…きっと兄様も同じでしょう。だからボクが此の言葉達を綴り遺す事を知りながら止めなかった。


だから。どうか、
どうかアナタは逃げて。其れがきっと、アナタの倖せ。


此の侭立ち去ればアナタは傷付かずに済みます。其の美しき瞳から涙が零れるのを見る事も無いでしょう。


…あ、だけど只一言、兄様からの唯一の伝言が在りました。
『扇子、大事にしろよ』だ、そうですが…キミが嫌でしたら燃やしちゃって構いませ
6 太陽
ごめんなさい、我が儘なのは僕の方です。
自分から別れる事を望んだくせに、貴方の残した言葉達に一日だって耐えられない位に後悔して・・・・・・


もうこれ以上甘えてばかりじゃダメなのに・・・

会いたい
貴方の顔を見て、ちゃんと声を聞きたい・・・
ずっと、言いたかったことがあるから・・・・・・


貴方は冬と例えたけれど、本当は違うんです・・・太陽なのは・・・貴方の方・・・僕にとっては貴方だけが太陽だった。


ねぇ、僕は・・・・・・貴方に・・・・・・キリィ様に会いたいと、望んでも良いんですか?
まだ・・・まだ、貴方の隣にいることを許してもらえますか?
僕を待たせる事に罪悪感に苛まれる貴方に、何もしてあげられないのに・・


・・・・ただ、みっともなく貴方の隣にいたいと望むしかできない僕を・・・・・・
7
―……駄目、です。矢張り此れ以上兄様と居てもアナタは幸せになんか成れない…御願いですから、どうか、どうか逃げて。


幾ら兄様が切望しようと、再会すれば結局は又幾日も幾日も待たせ、アナタを苦しめる事に成るでしょう。ボク含め我等はそんなの…嫌なんです。それに、其処までアナタに想って貰える程兄様は素晴らしい方じゃない。兄様にそんな価値なんて無いんですよ?


…―どうすれば、アナタは兄様から逃げてくれるのですか?…他に想い人が出来た、とでも告げれば逃げてくれますか?


それとも…それでも尚傍に居たいと望むのでしょうか、アナタは。


…ボクには解らない。兄様が幾らアナタを想おうと、そんなモノ迷惑にしか成り得ないと云うのに…。
8 太陽
好きで、好きで・・・
僕からまた別れを告げるなんてもうできないから・・・・・・


迷惑だと・・・
貴方に僕は必要ないんだと・・・


僕が隣にいることを許さない言葉をください・・・

そうしたら・・・
僕は貴方を諦めます・・・僕が、心から愛を告げるのは貴方だけだけれど・・・
もう誰も好きになったりしません・・・・・・
違う場所で、違う誰かに出会っても・・・僕の隣にいる人は・・・貴方だけだから。


どうしたって、僕は貴方を嫌いになんかなれないんです・・・

ごめんなさい、大好き・・・・・・です・・・
9 キリィ
ああ、凄ェ迷惑だ。生憎隣は他のヤツのモンなんだから…もうお前は要らねぇんだよ、いい加減俺から離れろ。


……―此れで良いだろ、さっさと俺の事なんか忘れちまえ。俺が未だ嘘をついてられる内に…気が変わんねぇ内に……さっさと逃げろ。


お前の太陽はきっと他に居る……寒々しい冬なんか嫌いに成っちまえよ、お前寒いの嫌いっつってたから丁度良いだろ?


そんで…凄ェ悔しいけど、俺以外の誰かを愛せ。ソイツに俺以上に幸せにして貰え。――俺には出来なかった事も出来るヤツ、ちゃんと選んでな。


それじゃ、本当にさよならだ。…唯昨日伝えた言葉と、俺が居たって事だけ覚えていてくれたら…俺はそれで良いからよ。


幸せにな、雪椿。