1 佐和山に棲む狐
西の方筑前より手折り来し花に紡ぐ
――貴様が此処を知っているのかすら知らぬ。
知っていたとして、気付くかどうか。気付いたとして声をくれるのか、将又黙っているのか、それすらも見当がつかぬ。
…貴様の事を何も解っていないのだと、改めて思い知らされた気分だ。
振り返ってみれば出逢ってからまだ二月半。
最初はただ、貴様という姿をした者と話してみたかっただけだった筈。
それ故に恋仲などになれぬような設定を提示したというに、俺の方がのめり込んでしまったとは笑えぬ話ではないか。
明日は乞巧奠。
俺達が逢瀬と約している日と重なるとは、奇しき事か或いは星の定めか。
貴様は二星に何を願うのだろうな。
俺は斯様な子供騙しの話は信じておらぬ故、何も願わぬ。…が、共にある間なら信じたふりをしてみるのもまた一興やもしれぬ。
――…願わくば、_______に。
枯れる事のない美しき高嶺の花に焦がれた狐より、戯言を。
知っていたとして、気付くかどうか。気付いたとして声をくれるのか、将又黙っているのか、それすらも見当がつかぬ。
…貴様の事を何も解っていないのだと、改めて思い知らされた気分だ。
振り返ってみれば出逢ってからまだ二月半。
最初はただ、貴様という姿をした者と話してみたかっただけだった筈。
それ故に恋仲などになれぬような設定を提示したというに、俺の方がのめり込んでしまったとは笑えぬ話ではないか。
明日は乞巧奠。
俺達が逢瀬と約している日と重なるとは、奇しき事か或いは星の定めか。
貴様は二星に何を願うのだろうな。
俺は斯様な子供騙しの話は信じておらぬ故、何も願わぬ。…が、共にある間なら信じたふりをしてみるのもまた一興やもしれぬ。
――…願わくば、_______に。
枯れる事のない美しき高嶺の花に焦がれた狐より、戯言を。