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1 烈風

鮮血へ。

此処に言葉を残すのは…証、かな。
アンタにあげた指輪と同じで、形に残るモノ。
所詮自己満足だけどね。しかも自分でやっておきながら少しドキドキしてる。…笑わないでよ。

一年と一ヶ月、ありがとう。
随分長い間一緒にいたと思う。
今は離れてる訳だけど…此れもまた一つの形だろうから、悪くないかな。…此れもまた、一つの思い出になるだろ?
来月になったら…話せなかった分話そう。出来れば、の話だけどさ。


…と、此れくらいかな。後はアンタがいつ気付くか見物だね。

『鍵』の指輪を持つ鮮血へ。

――淋しくて泣いてない?…なんて、ね。
15 烈風
二人で決めた事だからね、手放さなくちゃ意味無いだろ?我慢出来ない訳でも無いし。
あはは、なら 絶 対 言わないであげるよ。残念だったね?

花言葉の意味を断定出来ないように、言葉も伝え方によっては誤解を招くからしっかり伝えないとね。まぁアンタと僕なら大丈夫だろうけど。
アンタが安心出来てるなら別に僕は構わないけどね…、…善処するよ。少なくともアンタを哀しませないようにはする。

有る。大有りだから。アンタが誘ってるような言動をしなきゃ僕だって言ったりしないのに。
えー…痛いくらいの愛が欲しいと思わないの?

僕は面白いから構わない。
…ごめん。一番先に出てきた言葉が此れだから、謝っておくよ。気付いてあげられなかった、全然…ただ単に強がってるのかと思ってた。きっと僕は何もしてあげられなくて、それ所か痛みを積み重ねさせるだけで…ごめん。少しだけ、泣きたくなった。結局それは限界までは我慢…が妥当な言葉なのか分からないけど、そうするんだろ?崩れてからじゃ遅いと思う。少しずつで良い、その重なった傷痕を、消す事は出来ないけど痛みだけは消してあげたい。…それが僕に出来るかは分からないけど…本当に、ごめん。

そんな何日かかるかも分からない方法使ってまで聞いて欲しくない。…こう言ったらアンタは可愛く拗ねるのかな?
嫌。絶対に呼ばない。好きって言ってあげるからそれで我慢して。
まぁ此れからはしないから大丈夫だよ。って言うか番号は知ってても互いの声は知らないってのも変な話だよね。

今月も終わり、か…やっと来月になる訳だけど、果たしてどれくらい会話を交えられるのかな。何だかんだでまだアンタも忙しそうだしね?
16 鮮血
返事が遅れて悪ィ…一度打ったのが手違いで消えちまってよ。軽くヘコたれて…否、何でも無い。ダセェからこの先は黙っておく。


そうなんだが、…やはりお前って野郎は…分かってねぇヤツだ。何てな。
…最近お前にヘコまされる事が多いんだがどうしてくれようか。

ちゃっかりくせぇ台詞だな、まぁテメェの言う通り中々長い付き合いだから大抵の事は通じるだろうな。
任せたぞ…哀しくなったらすぐ言ってやるよ、嫌味たっぷりに…だから頑張るといい。

だからそれはテメェの勘違いだってんだろうが!テメェは何処までも勘違い野郎なんだ、分かったか。
要るか。今は優しい愛に飢えてんだよ、優しさ有ってこその痛みだろうが。

あ……見損なったぜ…馬鹿野郎。

泣くな。テメェのせいじゃないのに謝る事ねぇんだぞ。強がってる部分も有った…いや有るから間違ってるワケじゃないぜ?
痛みを積み重ねあってンのはお互い様だろうが……あぁ…我慢というよりは、崩れるまで傷にすら気付かない痛みにすら無頓着。に近い、だがテメェが居るだけで随分癒されてはいると思う。
そうやって俺を気に掛けてくれるだけで、俺は崩れないでいられるだろう。寧ろお前にしか出来ない事だ、だからただ傍にいてくれればそれでいい。有難う。


…知らん。分かっているなら始めからやるな屑。
どうしてこうも……結構堪えるんだが。
確にお互い声は全く知らんな。…気になる気もするが聞かれたくねぇから知らんフリでもしておく。


…明日話すか。
今月に入ってからも結局あまり話していないからな。明日…逢いに行くから待っていろ。
17 シンク
あー…うん、スルーしてくれても良いから。


元気そうで良かった。
やっぱりダメだね、…相変わらずアンタからの言葉を読むと笑いが押さえられない。


一つだけ、分かった。
一度擦れ違ってしまえば…もう交われないんだ、って。
僕は僕なりに、アンタを愛してたつもりだった。
想ってた、筈なのに。
伝わってなかったのなら、信じる事が出来なかったのなら…滑稽なだけだね。
僕は、アンタに愛されてると確かに感じていたのに。
嗚呼…最後まで僕はアンタに与えて貰っているだけだった、なんて。

「去る者追わず、来る者拒まず」
僕もそうだし、アンタもそうなのなら、僕達はもうやり直す事もやり直す気も無い。
追い掛けっこは終わり、だよ。

鳩も住所も、全部消した。
アンタが名付けてくれた猫ももう僕の傍にはいない。
残っているのは、記憶だけ。

明日で僕達は出会って一年と半年。再来月はアンタの誕生日だ。

…望むのなら、涼しく笑っててあげるよ。
だけど、忘れないから。
存在と想いを、いつまでも。

僕は幸せに執着は無い。
だから、僕の分まで幸せになって。

ね?
だいすきな、アッシュ。
18 烈風
ねぇ、何がしたかったの?
何の為に逢いに来たの?
分からないんだよ。分かりたくも無いのかも知れない。

戻れないと知ってるだろ?
戻る気も無いんだろ?
それなのに…逢瀬に意味は有ったの?

アンタを想わない日は無かった。
今でもきっと、愛してる。深く、深く、誰よりも、愛しくて。

いつも一緒にいたあの頃を思う度、切なくて、苦しくて、だけど愛しくて…忘れられる訳が無いんだ。
こんなにも、過去の記憶に縛られてるんだから。

もしも、あの頃には還れなくても、あの頃のように、笑い合える関係に戻れると思うのなら、戻る気が有るのなら。

帰って来なよ。

もう一度。

やり直そう。

いつだったか約束したデートをして。
月の記念日を祝おう。
二分遅れでアンタの誕生日を祝って。
二人で二年目を迎えよう。

今度、手を繋いだのなら、もう離さないから。

…今から四十八時間だけ、待ってる。
本当は住所も変えてた筈なんだ。まだ変えなかった理由は色々だけど…もしかしたらアンタへのたった一つの繋がりを断ちたくなかったのかもね。

手を取るか取らないかは、アンタ次第だよ。好きにして良い。
四十八時間経ったら今度こそ永遠のお別れってだけだから。どうか指輪も捨てて欲しい。

それじゃあね、アッシュ。