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1 傲慢な獣

愛しい小鳥へ

 
此方に言葉を残すのは敢えて、だ。
向こうじゃ直ぐに気付きやがるだろうしな…其れに、此処は俺に取っては特別な場所になってるらしい。御前の欠片が残ってる場所で、俺が御前に呼び掛けるのも面白そうだったしよ。

一つ、教えてくれ。
御前は今…幸せか?

俺が感じてる幸せと同じ物を御前も感じてくれてるか。其れだけが気掛かりだ。
中毒になっちまってるのは俺の方かも知れねえな。
御前を見る度にハマってる、今にも増して欲しくなる。
厭きられてるだの何だのは何処から思い付くんだ?俺は其処まで薄情そうか。

良い子でなんぞ居るなよ。御前なら我が儘も可愛い。
駄々を捏ねて困らせろ、見返りは御前だけで構わねえから。

もう二度と俺から籠を開ける気は無い。
俺に御前を逃して遣れるだけの度量は無えらしいぜ、情けねえ事にな。
逃げたきゃ自力で何とかしろ……なんて虚勢も今更か。
其の前に、御前の羽根を手折って仕舞えれば良い。

愛してる。
…許せよ。
7 亮司
 
久々に聞いた声に俺がどれだけ狼狽えたかなんて、御前は想像もしねえんだろうな。
此の侭で御前に返事したら話の流れも何もかもお構い無しに甘やかすばっかりになっちまいそうだ……って事で、先に此処で落ち着いてから御前の処に行こうと思う。

無理をさせたいと思ってる訳じゃ無えんだけどな。其れでも御前の姿が目に付く場所に在るのは嬉しい。
御帰り、春。
………偶には俺が言うのも悪くは無えだろ?

今夜には逢いに行く。良い子で待ってろ。
8
驚嘆しました。
じゃあ、貴方の声を見つける度に酷く浮かれてる私は御存じじゃ無いでしょう?
落ち着くなんて貴方らしいですが、何度私の頬を緩ませるつもりなんでしょうか。

無理なんてしてません。ずっと甘えた侭に居たのに。
御帰り、と言われるとくすぐったくて。貴方もこんな感じだったですか?

――――!あ、えと、此処にずっと居ると悪い子になりますか。
良い子で待たなきゃですから、ね。大人しくしないと。
9
もう泣いてしまいそうです。
幾度繰り返せば良いのか、自分の不甲斐無さに涙が出ます。空廻るばかりで埋まる暖かい場所に帰りたいと言うだけなのに。

此れを見つけたら笑われるでしょうか。其れとも呆れてられてしまうでしょうか。
好意に甘えている私は本当にイヤな子です。

もう、少しだけ。
きっと直ぐに貴方の手に戻りますから。
10 無名さん