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1 真夜中25時の魔法

硝子の靴の、王子様へ

気付かれ無い様に祈って書くね、王子様。


何時も、あたしを一人にするのは貴方。
何時だって然う。

“絶対離れ無いから”って、何回聴いたと思ってんの馬鹿!


あたしの事、好きじゃ無く成った?
…其れでも良いよ。

だって其れでも、若しかしたら明日あたしの事好きに成ってるかも知れないじゃん。
明日が駄目でも、…─明後日、あたしの事好きに成ってるかも知れないじゃん。


なんて、冗談。アンタがあたしの事好きなのは理解ってるもん。

だけど、あたしの事忘れちゃってるんじゃないかなって。其れだけ、怖いよ。


矛盾?そんなの、云われ無くても知ってる。


「傍に居て遣るよ」って云った癖に。

嘘吐き!でも、貴方の声、好きだったわ。
3 no name
御免、聴いて。

あたしね、もう前に進みたい。


色んな事、アンタの存在だけがあたしを引き留める。

だから、もうあたしがアンタを好きなのは終わりにしようって、思ったの。


ホントはちゃんと話したかったけど、メール呉れ無いんだもん。

御免、ありがと。


サヨナラ。

貴方の声、好きだったわ。
4 無名さん
寝た、か?


ケーキでも食って、今日は盛大に祝えよ?

此れから一年間、又御前が健やかに過ごせる事を。


──願わくば如何か、来年も共に在れる様に。
5 最低野郎。
良い誕生日だったか?


今迄、ありがとな。

御前の言葉が無いっつーのが何拠りの答えだろうから――…もう俺の腕から離してやるよ。


幸せになれよ。

…――麻紀。


愛してる。
6 no name
“1月10日”って文字が消えちゃうのが何か勿体無いね、って。
そんな事を思いながら。


喩えば、練乳とストロベリー。
練乳ってさ、イチゴが無いと意味無いって感じしない?

でもきっと、多分ホントは“必要として呉れるモノ”を“必要”としてるモノって有ると思うの。

そしてあたしは、貴方の愛してるモノを愛してる。


言葉って難しいよね。
伝えたい事、言葉にしなきゃ伝わらないのに。
全然言葉に成らなくって。


真っ赤なリボンのパンプスの踵が鳴らす音とか、乾いたばっかりのベビーピンクのマニキュアの映す指切りの魔法とか。

はにかんだグロス、寒い日のココア。

そんな風に、綺麗なモノが貴方に届けば良いのに。


喩えば、人魚姫。
貴方は綺麗な声を失って愛した王子様を失って泡沫に成った“人魚姫”を不幸だと思う?

違うよね、きっと人魚姫は幸せだったわ。
“間違い”なんかじゃないよ、ほんのちょっとだけ悲しいだけ。


僅かに残る“ピンクベリー”。
貴方は何処にも居なかったんじゃない、ずっと此処に居たんだね。