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1 ランサー

座に戻る、前に

なんつーか…お前ついさっき別れるっつって、しかもこの姿は終わりとか言ってなかったかっていうツッコミは今はするな。いやしないでくれ。自分でもこの意志薄弱っぷりはひでぇと思ってるから。


例の一件でお前も此処を見てるって知ったから、あそこに言葉を残した。返事を送れない代わりにあれで終わりにしよう、と。

そこまでは良かった。いや良かねぇけど、自分の気持ちにケリがつけられたと思った。
でもお前の、多分お前からだろうなっていう言葉を見てどうしようもなくなって、もう一回声が聞きてぇなとか、もう一回魔力供給してくんねぇかなとか、そんな想いが溢れて仕事も手につきゃしねぇ。マスターからの命令だってのにな。


何にしても、だめだ。このまま本当のことを何も言わずに勝手に一人で結論だけ言ったって何もすっきりしやしねぇ。

…が、きっぱり「じゃあな」とか言った手前さすがにもう一度のこのこ会いに行けるほど面の皮は厚くねぇから…此処に言葉を残す。

俺の事情なんてのは下らなくて、むかっ腹の立つ内容かもしれねぇけど、まだ話が出来るなら、お前が座に戻ってねぇなら…返事が欲しい。


気付かなければそれまで、気付かないふりをしたって良い。それはお前の自由だ。
2 アーチャー
――…たわけ!
まずは此の言葉を君へと贈ろう。

言い訳や事情は後でじっくり聞いて遣る。
何故そう成ってしまったか、ちゃんと順を追って説明して欲しい。
君の事情とやらに腹を立てたなら、鼻でも軽く摘んで遣るさ。


お帰り…ランサー。

此処への言葉が簡素なのは許して欲しい。
未だに動揺が拭えん。

私と君を結ぶラインは残っている。
君の方の其れが切れている可能性を考え、此方に言葉を残した。
最速を自負し誇るならば早く逢いに来い。

こ、此処では…その、泣けないだろう?
―…ッ、君の責任だぞ。胸くらい貸せ。


君がちゃんと私の傍に居ると云う実感が欲しい。
だから…直接声を聞かせてくれないか?


追伸だ。
主人から与えられた任務の途中なのだろう?
上記の言葉は其れくらい逢いたいと云う心の顕れだ。
無理はしなくていい。
時間の空いた時に来て欲しい。
待っているぞ…ランサー。
3 ランサー
ただいま…と、本当に悪かった。でもお前から言葉が返ってきて、凄い安心した。俺から切ったくせにこんなこと言ってちゃ世話ねぇけど。

マスターから言われた用が済んだらすぐに会いに行くから、夜になるとは思うが待っててくれ。


お前と俺を繋ぐラインはまだ残ってる。お前に注いで貰った魔力がまだたっぷりあるからな。

伝えたいことはたくさんあるし、早くお前を安心させたいから出来るだけ早く会いに行く。

それじゃあ、また後で。
4 弓兵
私の言葉はもう君に届かないだろうと此処に言葉を残す。
此処も目を通してくれるか解らないが…最後に刻むとしよう。


日が空く事は覚悟をしていた。
君の事情を理解し私は待つ事を選んだ。
選んだと云うのに…たかが一週間程度声が届かないだけで不安とは、な。

まだ不安定な心の私は、届かない声に不安を感じてしまった。
戻って来てくれた君を私の存在が又苦しめて居ないか…常に不安だった。
君らしき言葉を見付け苦しんでいるのだろうと思った。
私の要らぬ言葉で君を傷付けてしまったならばすまない。

確認の手紙を送りたかった…けれど確実に負担に成るだろう?
きっと君を苦しめる糧と成る。
君は優しいから早く返さねばと罪悪感に囚われる。
其れに怖かった…白い華に視界を再度塗り潰される恐怖に震えた。

そんな不安の中…君と同じ姿を見掛け心が痛んだ。
違うだろうに君と其の相手を重ねて見てしまった。
私はもはや廃棄処分だろう、声が届かないのは不要だからだろうと…。
其処まで落ち込んでいる自分を感じ取り自嘲しか浮かばない。

君の負担に成り枷と成って迄居て良いのか
何時まで私は待てば良いか解らず不安ばかりが募り
君が離れられないならば私から離れるべきかと云う考えに至った。
私があの時、引き止めてしまったから…罪に苛まれ君は戻ってくれたのだろう。


―――君は…戻って来た事を後悔したか?


君が残してくれた言葉を思い出す。
付き合いが浅い“今”離れるべきなのだろうと…。
この一週間其ればかりを考え、君の言葉をずっと待っていた。
悪い考えにしか辿り着けず安心が欲しくて、何度も君に手紙を送ろうとし破り捨てた。


先程君へと飛ばした手紙は私の最後の勇気だ。
アレが君ならば良き出会いに恵まれる様に座で祈っているぞ。


恋も愛もまだ何も芽生えぬこの胸にある気持ちは人を想う好意だろう。
君の事は嫌いでは無かったぞ。
出来るならば、もう少し会話をかわしてみたかった。
ただ、日常を二人のんびりと過ごしてみたかった。
其れが…私の見た夢だろうか。


苦しめてすまなかったな。
未練がましくまだ此処に言葉を残してすまない。
此れで終いにするよ。
私はおとなしく座へと戻るとしよう。


もう少し素直に接すれば…君はまだ傍に居てくれただろうか?