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1 ゼ!ク%シ$オ=ン

出逢った日の林檎と渾名。

忘れた事などありません。

あなたと過ごしたあの日々。
あなたの声も、あのまぶしかった笑顔も。
あなたに初めて出逢った時に貰った、林檎も。

――この空間では語り切れない事が、たくさんありましたね。


覚えていますか、一樹。
昨年の12月12日。
僕らが最後に会って、言葉を交わした日を。
僕はあの日、言おうと思っていた事があったのですよ。
結局…言えずじまいでしたが。

思えば、あなたには僕の本当の気持ちを何ひとつ言えませんでした。
あなたに出逢えて、無い筈の心が生まれたのだと言う事。
あなたになりゆきで付けられたあの呼び名が、何時の間にか心地良い響きになっていたと言う事。
あなたが僕にとって、とても大事な人であったと言う事。
あの場所であなたと過ごす時間が、何よりも僕の楽しみであったと言う事。
何も――言えなかった。

だからこの場で、僕はあなたへの想いを語ります。
包み隠さず、すべて。

あなたがこういう場所を見るのかは分かりません。
あなたが今僕をどう思っているのか。
それどころか、僕の存在があなたの記憶に残っているのかさえも。

それでも、もしあなたがここに…僕に、気付いたのなら。
あなたの痕跡を、残して下さいませんか。
それが僕の――喜びであり、望みなのですから。
10 ゼ!ク%シ$オ=ン
この時間は…あなたにはまだ早い、でしょうか。
最近は言葉を残そう、残そうと思ってためらう日々が続いています。

これで丁度10回目。10分の1をひとりで使い切ってしまったことになりますね。
ためらう理由もきっとそこにあるのでしょう。
僕は――独りよがりに垂らした糸の寿命が切れてしまうのを恐れている。
こうして綴っていくのも、結局はあなたの意志を無視した自己満足に過ぎません。
自分の行いが正しいのか正しくないのか、時折疑問に思うときがあるのですよ。

それでもせっかく作った場所なのです。無駄にしたくはありません。
綴るごとに思いを膨らませつつある僕を、あなたはどう思うのか。
…想像、するのが少し怖くもありますが。


――今日はもう眠りにつくべきでしょうね。
おやすみなさい。


…言ってみたかっただけです。
それだけです、から…。
11 ゼ!ク%シ$オ=ン
4月ですね。
春は出逢いの季節とよく言うものですが…あなたと再び巡りあうことを期待しましょうか。


嘘ではなく。本当の本当の気持ち。
今の僕は自業自得なのでしょう。
あなたはきっと僕のせいでいなくなってしまった。
僕が、壊してしまった。
ずっと分かっていたことです。
あの時は――もう、今となっては何を言っても言い訳にしかなりませんが、それでも残しておきたい。
そう、あの日の…僕らが最後に会った、あの日のこと。
僕が勝手に帰ってしまったあの日です。
あの日は言葉がうまく纏まらなかった。
うまく自分の中にあるものが伝えられなかった。
その上に…事情があったことなどもう関係ない。勝手にあなたに背を向けた。
だからきっと誤解させてしまったでしょう。
けれど僕は、…僕は、またいつか会えるだろうからと気楽に考えて…それがいけなかったのですね。

本当に、申し訳ないことをしました。
…すみません。


時機を見て、しかる場所であなたを捜そうと思います。
いつになるかは分かりませんが、今はまだ身をさらしてあなたを捜すわけにはいかない。
そもそも此処に立てたこと自体、そういう理由です。
あなたと再び顔を合わせて…もっと欲を言えば再び交流が出来るようになった暁には、この場所のことを伝えましょう。
元々僕らは個人間で連絡していたわけではありませんから、望み薄ではあります。
それでも。たとえゼロに近い可能性でも構わない。僕は必ずあなたを捜しに行くつもりです。
いかなる答えが返ってきたとしても覚悟の上。返事が来るだけでもありがたいことです。

……それも果てしなく遠い未来の話ですがね。
それまでは此処であなたのことを書き連ねていこうかと。
12 ゼ/ク/シ\オ/ン
どれだけ言葉を繰り返しても、目の前にあなたはいない。
記憶を受け継ぎ、時間を巻き戻す事が出来るならと愚かな望みを抱く僕は……滑稽ですね。

僕は何度あなたの心に傷を負わせてしまったのでしょう。
何気なく紡いだ言葉で、何度あなたを悲しませたのか。

でも、それでも、
僕は、あなたのことを誰よりも。


こんな、僕でも。
望むことを、許してくれますか。


会いたい。…会いたい、です。
13 無名さん