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1 零崎曲識

僕らは家族ではない

僕のレンならきっと分かってくれるだろう。
約束通り、僕はこうやって此処にきてしまった。否、遅いくらいなのかも知れないな。

さて。
あのときの問いの答えは、敢えて此処で訊きたいと思っている。
「僕らは家族なのか」という問いの答えを。
結論として言うならば、僕はレンのことを家族だなんて思っていない。…違うな、ある種の家族…そうだな、僕の妻ぐらいには思っているが。"兄"と認識するには愛しすぎて、"他人"と認識するには哀しすぎる。

僕は、レンが好きだ。
愛している。

レンは…、レン自身は、僕の傍にいてくれるのか?
兄ではなく、零崎でもなく、ただ一個人の"零崎双識"として。

レンが傍にいてくれるなら、僕は一度離れかかっていたこの場所にとどまるのも、悪くはないんだ。
3 零崎曲識
ああ、当たり前なのだが返事が来たことを嬉しく思っている自分がいる。…こういう気持ちも、悪くない。
オムライス、期待している。カレーでも構わないが…、レンの好きにするといい。

レンのことは信じすぎるぐらいに信じている。…だから、君が紡いだ言葉を僕は信じようと思う。いや、分かってはいたんだ、ただ君の言葉で、「音」にしてほしかっただけで。

レンの問いも、きっと僕と同じ気持ちなんだろう。
だから答えは、「イエス」だ。
レンの気持ちがどんなものであろうと、レンの隣は僕の物だし、僕の隣はレンの物だ。…レンはだれにもやらない、渡さない。

それが僕の気持ちだ。
レンは幸せか?
4 零崎双識
嬉しいのは私も一緒さ。君が返答をくれることが――、こんなに嬉しいなんて、最初は思ってもみなかったから。
…うん決めた、帰ったらオムライス作ってあげよう。とびっきりの。

そんな風に、トキにオムライスを作ってあげられることも、トキに答えを返して貰えることも、疲れたときに笑ってくれることも、人識の話をすると拗ねることも、愛されたいと言ってくれたことも、私にとったら…この上ない幸せで。

ああもう、だから要するに私は幸せなんだよ。トキ。恐ろしいくらい幸せさ。だからトキは心配しなくていい。誰のところにも行く気はないし、トキ以外の隣にたつつもりもない。

相変わらず心配性なんだなぁ。
トキに想われている以上の幸せはないんだよ。

…なんだか恥ずかしいから、もう言わないけどね。
5 零崎曲識
じゃあ僕はお返しに、君の好きな曲でも奏でてやろう。何がいいのだろうか。僕からレンに何か送ろうか。…ああ、これじゃレンのいう、ご褒美にならないか。

レンは幸せ、か。
良かった。レンが僕と一緒にいることを望んでくれることが、僕にとっての幸福だ。レンは認めてくれないかも知れないが…

…………、僕はもう駄目だ。レンはどうしてそんなに…否、これ以上言うと叱られてしまうな。つぐんでおくとしよう。
レンが恥ずかしいと言った言葉……、よかったら、また言ってくれないか。お願いだ。

好きだ、愛してる。レン。
…僕は多分もう駄目だ。
こんな気持ちも悪くないと思うけれど。
6 零崎双識
うふふ、トキの言う通りそれじゃご褒美にならないよ。まあ、私は嬉しいからいいのだけどね。君の愛すべき音楽を私に寄越すといい。喜んで受け止めよう。

狼狽するトキを見るのもなかなかいいかも知れないが、それだとアスに怒られてしまうからな。私の言葉に喜んで貰えたなら、…その、なんだ、2人きりなら、いつでも、トキが望んだ時に。
うん、普段ならこんなこと言わないんだけどね。…惚れた弱味か兄の弱点か…
ああいや、なんでもない。気にしないでくれ。

君が駄目だというなら、私だって同じようにもう駄目なんだけどね。どうせ堕ちるなら二人で堕ちた方が賢明だと思わないかい?

私だって、君を愛してるんだからね。時々君は忘れているだろうからもう一度言うよ。

私も愛してる。

分かってるかい?トキ。