11 無名さん
1:ヤタ
山奥の祠にて(R20/FT)
おや、このような山奥に来客とは珍しい!
景千代様がお喜びになるに違いない!
客人、このような山奥まで歩いて来たのならば、さぞ疲れたであろう?ささ、暫し休まれていかれよ!無理にとは言わんが、休んでいけ!
挨拶が遅れたの。儂は、景千代様にお仕えしておるヤタガラスのヤタじゃ。
名前が安直だとは言わせぬ。この名は、景千代様がお付けくださった有難く誉れ高い名なのじゃ。決して適当に付けられたなど…。
景千代様とは誰かじゃと?まぁ…知らぬのも仕方ないか。
それでは、少しばかり昔話をしてやろう。―遥か大昔の事じゃ。日本神話は知っておろう?その中でも特に有名な、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治したと言われる伝承には「天羽々斬(アメノハバキリ)」という神刀が描かれておる。神々のおわす霊山で鍛えられ唯一無二と言われた天羽々斬には、実は同じ玉鋼を用いた兄弟刀があったのじゃ。その名は、神刀「羽々斬景光(ハバキリノカゲミツ)」。
そして、羽々斬景光は兄刀の天羽々斬よりも強く、美しく、そして神々しさを宿した刀であった。じゃから、羽々斬景光は神事の奉納舞でしか使用されない宝刀だったのじゃが…。ある時、賊に盗まれ、人斬りの道具として使用されてしまったのじゃ。血の穢れに触れてしもうた刀は、恐慌状態となり暴走し、その強大なる力は数多の神々にも勝るものであった。しかし、陰陽師達は、仲間の命を幾人と失いながらも一月以上をかけ、刀を封印したのじゃ。
…何となく気付いておるじゃろうが、その刀の化身が、景千代様じゃ。
遥かなる時を経て封印が弱まり、今では人の形を成せるようになっておるが、長きに渡る封印によって景千代様は何故眠らされたのか記憶を失っておられる。
元は、宝刀。穏やかで、優しいお方じゃ。それに景千代様は人の子が好きなのじゃ。少しで良いから、話相手になっていってはくれまいか―。
山奥の祠にて(R20/FT)
おや、このような山奥に来客とは珍しい!
景千代様がお喜びになるに違いない!
客人、このような山奥まで歩いて来たのならば、さぞ疲れたであろう?ささ、暫し休まれていかれよ!無理にとは言わんが、休んでいけ!
挨拶が遅れたの。儂は、景千代様にお仕えしておるヤタガラスのヤタじゃ。
名前が安直だとは言わせぬ。この名は、景千代様がお付けくださった有難く誉れ高い名なのじゃ。決して適当に付けられたなど…。
景千代様とは誰かじゃと?まぁ…知らぬのも仕方ないか。
それでは、少しばかり昔話をしてやろう。―遥か大昔の事じゃ。日本神話は知っておろう?その中でも特に有名な、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治したと言われる伝承には「天羽々斬(アメノハバキリ)」という神刀が描かれておる。神々のおわす霊山で鍛えられ唯一無二と言われた天羽々斬には、実は同じ玉鋼を用いた兄弟刀があったのじゃ。その名は、神刀「羽々斬景光(ハバキリノカゲミツ)」。
そして、羽々斬景光は兄刀の天羽々斬よりも強く、美しく、そして神々しさを宿した刀であった。じゃから、羽々斬景光は神事の奉納舞でしか使用されない宝刀だったのじゃが…。ある時、賊に盗まれ、人斬りの道具として使用されてしまったのじゃ。血の穢れに触れてしもうた刀は、恐慌状態となり暴走し、その強大なる力は数多の神々にも勝るものであった。しかし、陰陽師達は、仲間の命を幾人と失いながらも一月以上をかけ、刀を封印したのじゃ。
…何となく気付いておるじゃろうが、その刀の化身が、景千代様じゃ。
遥かなる時を経て封印が弱まり、今では人の形を成せるようになっておるが、長きに渡る封印によって景千代様は何故眠らされたのか記憶を失っておられる。
元は、宝刀。穏やかで、優しいお方じゃ。それに景千代様は人の子が好きなのじゃ。少しで良いから、話相手になっていってはくれまいか―。