Write
18 無名さん
( 行き詰まった。何本目か分からない煙草に火を点けながら、ジッポを鳴らして少々乱暴にノートパソコンを閉じる。紫煙を吐きながら椅子に深く座り天井を見る。小説家になって何年か、何度か賞も取ったり映画化やドラマ化される作品も。)くそだりぃ〜……( しかし話の展開に行き詰まるといつもこの仕事を辞めたくなる。辞めたところで次の仕事なんて、文字を書く以外の事をした事がない自分に出来る訳もなく。)散歩行こ( 煙草を灰皿に押し付けてスマホと財布と家の鍵。其れだけをもって家を出た。外はもう夜の帳が降りた深夜。ブラブラと適当に繁華街を歩く。酔っ払いやキャッチといった物を横目に見ながら何も考えずに歩いていると如何にもヤンチャそうな男や女が出てくる場所があった。気になって近づけば地下に行くように階段があり、治安の悪そうな場所である。普段なら絶対に近づかないけれど、少しの好奇心によりその階段を降りる。重たい扉を開ければ耳を劈くような音が脳を刺し、微かに眉を顰め )クラブハウスか……( ゆっくりと入店し、身分証と入場料、ドリンクチケットなどの諸々を済ませればバーカウンターでお酒と交換して貰う)……ラップかな( 後方で壁に凭れなが何となく人を眺め、ステージに立つ人を眺め、流れる曲を聞く。気分転換にはいいかも。酒を口にしながら、次にステージに立った貴方を見て、暫し目を奪われる )かっこいいじゃん ( クールな見た目とそれに反しない声色。フロアも盛り上がり此方の気分も良くなる )握手とか出来ないのかな。出来ないか。( 自分で言って自分で小さく吹き出す。貴方のステージが終わったら帰ろう。そう思っていれば不意に声を掛けられる。何かと思えばそういうお誘いで。男が此方の退路を断つように )ごめんなさい、俺そういうの興味ないから( 丁重にお断りしても酒に酔って気分が大きくなっているのか此方の腰を抱いて。全身にさぶいぼが立った。)ほんとにやめろ……( 思わず低い声が漏れ、それでも過激化する相手に手に持っていた酒をぶっ掛ければ当然のように相手は激昂して此方の胸倉を掴み)
19 無名さん
(昔から人には可愛がられた自覚はある。近所に住んでいた貴方を筆頭に、歳上に可愛がられた。新卒で入った会社では営業として日々汗水垂らしながら右も左も分からない儘業務をこなしているが営業成績だけは新卒の誰よりも良かった。そんな中で訪れた大型連休、ゴールデンウィーク。実家に帰ってゆっくりして、貴方と時間が合えば構ってもらいと今からウキウキとした心持ちで浮かれていた。先輩にも浮かれすぎだと注意をされたが、しかたない。)____尚くん!(実家に帰ると近所の、昔から仲良くしてくれている歳上の貴方が居て、あまりの嬉しさに荷物を全部放り投げて貴方に後ろから抱き着いていた。柔軟と貴方の元々の香りが混ざり合う落ち着いた匂いに抱き締める力が強くなる。貴方と話していた母にやめなさいと諌められれば渋々離すも、貴方の隣にピッタリとくっ付いて座り蕩けた瞳で目を細めて)尚くんだぁ(連絡も電話も頻繁に取ってはいたが本物を前にすると嬉しさが溢れてしまい)