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20 無名さん
(唐突に耳に入り込んだ目覚ましの音によって眠りの淵から浮上するが、薄く開いた筈の視界に映るのは黒一色の世界だけであり、まだ覚醒しきっていない思考でも己の違和感に気が付き)……、きよ…し…?(相変わらず真っ暗な視界によって目覚めた自覚は薄いものの、昨夜一緒に寝たはずの相手の存在を思い出せば手を伸ばして隣の存在を探そうと。しかし伸ばそうとした手を何かによって阻まれてしまい、相手の名前に疑問符を付けて呼びかけることとなり)……ッ…なんだ、よ…これっ(確かに自分以外の気配は感じるのに、閉ざされた視界と頭の上でひとまとめに拘束された腕では、それが恋人なのかを確かめる術はなく、ひたりと己に忍び寄る恐怖に喉をひきつらせて戸惑いの声を漏らし)っ、…木吉…だよな?おい…なんとか言…ッ…(自分の知る相手の雰囲気とは異なるが、微かに感じる似た部分に縋るように声を掛けるも、その途中に頬に何かが触れれば、息をひきつらせて声が途切れ)…ど、うした?お前だろ?…きよし…(怖ず怖ずと頬に触れた何かが大きな掌であることを感じると、よく知る感触に身体の強ばりを解いて安堵の息を漏らし。顔をずらして掌に唇を寄せながら甘い声で問いかけるように相手の名を呼び)