21 無名さん
(久し振りに会えた主人の顔だったが安堵のあまりジワァッと滲み出てくる涙で視界がぼやけて見え、治部煮の優しく温かな香りが鼻腔に届くと高価であろう鴨肉を調達してくれた主人の慈悲を感じて更に涙溢れて咽び泣き、身を引きずるようにして相手に縋り寄り)カジサン…キテ、クレテ…アリガ、トウ……パムハ……パムハ…シアワセ…デシタ……。(絞り出すように言うとクタリと脱力して事切れ。すると後ろ足を覆ったギプスが音もなく崩れ去って中から白いモフモフの巻き毛が現れ、不良たちから辛うじて守られた体毛は、パムの忘れ形見だと言うかのようにいつまでもそよ風に揺られていた)完