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21 無名さん
臆……ここまで私ばかりが望みを伝えてしまっているね。叶える側であった身でありながら、随分と我儘だと思われてしまったかな。汗顔の至りだけれど、ここからは君の望みを聞かせてもらおうか。さて——君は何を望む?伍番勝負のような苛烈な斬り合いも喜んで受けて立とう。見廻りの最中であるならお供させて欲しい。特に望みがなければ……そうだな、一献どうだい。願わくは君の笑顔を見たいものだけれど、そのために何を叶えればいいのかわからずにいる私に、君の選択を聞かせてくれると嬉しいよ。


初めての文は君らしい言葉で飾っていればそれで構わない。……と言ってしまうと、流石に筆先が迷いの雫を落としてしまうかもしれないね。不可事項と文末の物語の続きは必須として、残りは君自身の言葉でお願いしよう。だって、私ばかりが胸筋を開いて語るのもさみしいだろう?君がどんな思考を持ちどんな言葉を綴るのか……教えて欲しいんだ。
〆と書き記すまでは君を待つよ。返書はひとりにのみ、五日以内に送る予定だ。——英。君の言葉が届く瞬間を、楽しみに待っている。


(鬱蒼とした森を吹き抜ける風が枝葉を揺らす。天空からの陽射しが地に落ち、ざあざあと揺れる木々に合わせて踊る影を作っていた。腰元の刀に利き手を触れさせ機敏な身のこなしで振り返る男の銀髪が、長い外套の裾が、動作によって生まれた風ではためく——うつくしい銀灰の眼差しが、貫く。すっきりと切れ上がった眦。涼しげな、と言い表すにはいささか鋭い——鋭すぎる双眸に浮かぶ驚きの素直さが愛おしい。一歩、……それ以上の距離を詰める勇気を持てず、相対する彼の警戒を無闇に煽らない離れた位置で足を止め、ゆるく口角を持ち上げた笑みを浮かべ)ところで……こんな森の中でなにをしていたんだい?

2023/8/17(木)21:55

アイナナで右側もするのかキツい