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22 無名さん
この人物件だったんだ
ロル投下するね

次の授業の開始時刻が差し迫っていることを知らせる予鈴のチャイムが鳴り響き、それを聞いたクラスメイトたちは教科書やら筆箱やらを抱えて次々に移動を開始する。次の授業は選択科目なので、各々が選択している授業を受けるために該当教室へ移動するのだが、ふと窓際に目をやれば未だ机に突っ伏している放っておくに放っておけない存在──創作の姿があったため、柳は小さく肩を竦めながらもやれやれ、といった様子で声をかける。
しかし、その声掛けに対して返ってきた言葉はなんとも気が抜けてしまうもので、教室に掛けられている壁掛け時計で時間を確認しながらも、椅子に根付いてしまったという根っこを何とか自分の力で引き抜くように諭した。

柳「予鈴が鳴ってから48秒が経過している。その様子だと移動にも時間が掛かりそうだから、この調子では遅刻するぞ」

予鈴から本チャイムまでの猶予は5分。もう間もなく予鈴が鳴ってから1分が経過しようとしている中、この調子では教室にたどり着くまでに通常よりも時間がかかってしまうだろう。そこまで予測した上で、柳は創作に早くするように急かすのだが、それだけではきっと揺らがないであろうことも予測し、幸い選択科目が同じで移動先の教室が一緒ということも考慮した上で咄嗟に機転を効かせ、先手を打って妥協案を提示する。

柳「どうしても無理だと言うのなら、せめてお前の分の教材と筆箱は俺が運んでやろう。どうだ、これで自分の力で引き抜けそうか?」

お腹も満たされて気持ち良くなっている中、ぬくぬくと暖かい窓際を手放し、わざわざ教室を移動するのが酷く億劫なのだろう。創作が浮かべる怪訝そうな表情からはそれがひしひしと感じられるのだが、柳はまるで駄々っ子をなだめるような、そんな優しい声色で創作に問いかけ、中学の頃と比べて更に大きくなった体を少し屈めるとこちらを見つめてくる創作の瞳に視線を合わせるようにする。
相手の要望に100%応えて甘やかすようなことはしないものの、こうして譲歩してしまうのは、所謂惚れた弱みというやつかもしれない。柳はそんな自分にも少し呆れてしまいつつ、あくまで諭すように創作のことを上手く促すのだった。