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33 無名さん
冬は退き、春の盛りも若葉に越されて落ち着いた。昇る陽は長く、流れる大気は潤い始める。紫陽花が梅雨の恩恵を受け、夜に瞬く星々は天の川を目指す。織姫と彦星より一足先に出逢ったのは朔日の巡り合わせか其れとも縁か。

愛しい者と過ごす幾年附き。
未だたったの三月程しか過ごして居ない様な気もするし、もっと長い間を共に歩んだ気さえする。長短の差は在れど其処に宿る心中は何れも幸。不動の感情。一度の四季を跨いで益々貴女を好きになる。隣に居たいと、肌に触れても尚望む。

河原遊び、魚獲り、桜の花見、遠駆け、夏祭り、灯籠、花火、街の甘味処、料亭、露店の食べ歩き、立ち寄った小間物屋、呉服店に反物屋、駄菓子屋…。戦も含めれば共に行った所も随分増えた、暖かくなったし今度は海にでも行きたいわ。

駒鳥の可愛さは数カ月前から比べて衰えが無く、寧ろ増すばかり。其の上規則的に寝入る様になって、捨て身の無理も少しは治まった…様に思う。何より随分と素直になったわ。好きだ惚れたと追い掛けて、喧嘩して謝って亦追って。繰り返す日常の中で貴女の身が危険に曝されない様にと願う気持ちも数カ月経っても変わりはしない。

有難う、今まで隣に在って呉れて。繋いだ手は離さない、出逢いの節目である今日からも、亦私の隣に在って頂戴。他は要らないの、国も何も関係無い。貴女が欲しい。

最上級の感謝と幸と愛しさを此処に。