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34 無名さん
69 :黒尾鉄朗(赤葦京治)
16/08/17(水) 08:54

むかーしむかーしある所に“赤葦京治”
という名の男がおりました。その男は
俺を黒猫と呼び赤い首輪を付け、とある
遊戯をしました。俺を惚れさせるという
遊びです。俺は甘い罠にまんまとかかり
その男を心底愛しました。俺の心を得た
赤葦は、もう用は済んだとばかりに姿を
消しました。俺の心は砕け散りました。

俺は赤葦の代わりを探し続けました。
20人……いや、30人程の“赤葦京治”と
知り合い、なるべくあの赤葦に近い者を
探しましたが、結局見つかりませんでした。

ある時、道端をふらついていた俺を
拾ってくれた親切な人がおりました。
その人は名を“赤葦京治”といいました。
温厚で人を騙すことなど知らぬその人は
あの赤葦には似ても似つきません。
35 無名さん
私怨ではないだろ
惑星みたいな恋愛厨だね
36 無名さん
酔いしれてて笑った
37 無名さん
30人も漁ったのか
38 無名さん
そんなに暇なのも羨ましい
39 無名さん
赤葦は叶わぬ恋をしていました。
相手の名を“黒尾鉄朗”といいました。
俺はその黒尾の代わりを務めたいと思い
赤葦の家に住み着きました。赤葦は
そんな俺を可愛がり、ペットにしました。
赤い首輪をくれました。黒猫と呼ばれました。

おやおやこれじゃあ、まるで同じ記憶を
繰り返してるようじゃありませんか。
でも良かったのです。いつか捨てられても
それはそれで良いと俺は思ったのです。

赤葦は気付けば俺の恋人になっていました。
幸せの絶頂でした。しかしその幸せは
決して長くは続かず、別れを選びました。

別れてから、俺は抜け殻になりました。
もう恋などするものか、と思いながら
ただただ別れた赤葦を思い続けました。

俺は自分が“黒尾鉄朗”であることに
拘っていました。最初の赤葦のことを
見返すには、黒尾として幸せになる
必要性があったからです。

だけれど、何故だか黒尾として生きる俺には
いつも痛い恋しか訪れず、ついに名と顔を捨て
俺は“赤葦京治”と名乗るようになりました。

すると不思議なことに良い出逢いがあり
恋人が出来ました。恋人は名を“黒尾鉄朗”と
いいました。その頃の俺は、引き摺っていた
赤葦のレプリカでした。赤葦の口調や性格を
真似していました。赤葦の好きだったところを
自分に取り入れて恋人の黒尾と接しました。

黒尾は俺の支えでした。付き合う前は。
付き合ってからの黒尾は情緒不安定で
毎晩俺を怒鳴りつけたり、わざと嫌な
気持ちにさせるようなことを俺に言い
反応次第で更に機嫌を損ねていました。

別れました。何故好きになったのかと思う程
別れてからは全く引き摺りませんでした。

もう恋は懲り懲りでした。俺は疲れて
いたのです。人を愛することや、
人を信じることや、人を忘れられず
思い出しては泣くばかりの毎日に。

だけど、どうしても愛されたかったのです。
そして愛したかったのです。

だから、これが最後の賭けでした。
俺は“赤葦京治”として、とある場所に
参加をし、最後の人を探しました。

見つけました。
その人は名を“白布賢二郎”といいました。


おしまい。