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36 無名さん
遥の血が、欲しい。

遥と如何しても血を混濁させてみたかったの。軌跡を渇望した貴女の、私が鋭利な犬歯の先端を容赦皆無に挿入して汚した血管が浮き上がる程に白い首筋を舐めて鮮血の痕跡を払拭した。遥から浸出する血液を体内に取り込んで居るのにも関わらず矢張り此れは喉を潤して分解されて、私の血とは交わりを持つ事無く体外へと排出されて仕舞うのでしょう。不必要な物質として。

強く握り過ぎて居たからか赤く成って仕舞った貴女の手首を解放する。自由を手にしたのに動きを行わない遥は何れだけ私を理解して居るのかしら。遥は私の子供を産めない、私だって遥の子を産めない。出す事しか出来ない染色体を互いのもので充たす事は倫理学的に浮き世の理からかけ離れた願いも同然。遥の子供が欲しい、そうじゃない。遥の中に私を植え付けたい、そうでもない。ただ象として私達の中に存在したものが欲しかったの。私の遺伝子と遥の遺伝子の半分を受け継いで未来を駆け抜ける何かしらの象が。空想だ、解って居るからこそ余計に悔しくて遥の遺伝子を含んだ血液が欲しくなったのよ。遥が好きで未来が怖くて現在が不安定で、確実が欲しかったと背中に呟いた。御免なさい、其れでも未だ私は遥との遺伝子融合を夢見る。融け合えない二人だから、一理有る意見だとしても真っ直ぐには受け入れられない。何時だって私は遥との関係に絶対を求めたから。

視認出来る愛が欲しい。
触れる事が叶う愛が欲しい。

請う、請う、狂乱に。