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4 無名さん
【タイトル】
かつての
【ジャンル】
#恋愛 #現代 #bl #相手募集中 #描写遊び
【閲覧注意項目】
分割、終止形含む。若干切なめ。
【備考】
心情を情景や動作で表現するのが好きで、久々にバーで誰かとお酒を飲む描写を回したい…と思いつつ書きました。グラスの見え方や僅かな仕草までも書きたい。BLのみですが、お相手様募集しています。普段のロル数は〜400程度です。
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(カタン、カタタンと不定に揺れる電車内は、休日の夜であるにも関わらず人気が少ないように見える。何故だろうとぼんやり考えながら空席がいくつかある中で扉の脇に立ち、背後にある不透明な仕切りに体を預けては、外の映り変わっていく夜景を僅かながら楽しんで。何故か今日は、既に行き慣れたビルや煌めく店ばかりの都会なこの街から出て、静かな一人暮らしの自宅へ帰ってしまうのが勿体ないと思う程、物寂しさを覚えていた。心做しか、車内で循環する冷気が隙間風のように内心へ入りこんでくるかのようで、外観に顔を向けたままゆっくりと両瞼を半分伏せる。と、ふとその時、若干の距離がある場所でカラフルに道を彩っている出店が視界に入っては、その間で多くの人がぞろぞろと行き来しているのが見えて)…ああ、そうか。今日祭りだったの、か……、(その一面を上から下へなぞる様にして眺めながら、周りに聞こえない程度の声量で独り言を呟く。が、途中から脳内で過去の記憶が呼び起こされては、言い終わる頃の声も外の闇に消え入りそうな微々たる物に変わっていき)あいつと別れてから、1年だな…。(もわつく夏の暑さ、それに負けない程に賑わう屋台たち、汗をかきながらも人混みに紛れて手を繋いだ、かつての温もり。小さな穴の原因はきっとこの思い出によるものだろう。未練が残っている訳では無いが、この1年間すっかり忘れていた人の体温というものを再度感じたくなり、無意識に目線は己の掌へと向けられる。そして、何となくその手を開いては閉じて、閉じては開いてを2、3度繰り返しながら、じわりと熱を持っていく皮膚に僅かながら心地良さを感じると、何かを決めたように楽にしていた背筋をピンと伸ばして。明日も特に用事は無いなと、一応頭の中で再確認しては間もなく次の駅へ停車を知らせるアナウンスが流れる。)