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40 無名さん
遅くなっちゃった…!(歩きにくい下駄と、すぐに肌蹴てしまう浴衣の裾を気にしながら、小走りにやってきた花火大会の待ち合わせ場所。笑顔で迎えてくれた相手にほっとした表情を向けて。着慣れぬ浴衣を着るのに手間取り、髪やメイクにも手間取った。いつもは下ろしているセミロングの髪も、今日は緩くまとめて項の近くでお団子に。白地に赤い金魚と小さな黒出目金が踊る浴衣はちょっと子供っぽかっただろうか。少し不安そうに指先で耳朶に触れると、浴衣に合わせた金魚のピアスが小さく揺れる。行こうかと歩き出した相手を追って歩き出すも、ごった返す人波に揉まれて思うようについていけず、腕を取ろうとか伸ばしかけた手もなんだか恥ずかしさが勝って途中で止まり)…ちょっと待って! もお、早いよお(その代わりに精一杯の文句と共に袖を掴んで)