Write
42 無名さん
(やさしく降り注ぐ春雨のように中空が振動し、音となる。口説のまろび出た唇弁は、まるで今日のおやつでも教えてあげようと言付けかねないほどの穏やかさで薄く綻び、聞きかじったのが他の者なら錯聴かと耳を疑って然るべきの、せせらぎかのようこぼれ落ちたものだった。しかしこれが、剣呑を余儀なくするふたりのまなかいだけで及んだものでないことは更なり。──過日。南の魔法使いは野外での訓練に勤しんでいた。およそ瞬きの間と感ずるほど早く、芽吹いたばかりの若葉は既に青葉の頃を迎え、そよ風に靡くごと葉の至るところが煌めくような、さわやかな佳日と締めくくるひと日になるはずだったのだ。それが、──。)

>>21と比べてどうだろうね