Write
62 無名さん
『ギリシア人・ローマ人のことば』(岩波ジュニ ア新書)の中に、カトゥッルスの残したことばとして、表題のわれ憎み、かつ愛す(odi et amo)が紹介されています。典拠となる85番の詩は、次の2行だけですが、簡潔な表現の中にも、深い恋愛心理の洞察が刻み込まれています。

Odi et amo. quare id faciam, fortasse requiris. nescio, sed fieri sentio et excrucior.

わたしは憎み、かつ愛す。どうしてそんなことができるのか、君はたぶん聞くつもりだろう。わたしにもわからない。ただそういう気持ちになるのを感じ、苦しむのだ。

「われ憎み、かつ愛す」という表現に凝縮される 詩人の内面の葛藤は、「不実な恋人へのうらみ」と共通するテーマといえます。ローマの誇る 独自のジャンルとして、しばしば風刺詩と恋愛詩 の2つが指摘されますが、カトゥッルスは後者の創始者と目されます。

不実な恋人へのうらみ