83 無名さん
子_狐_丸(刀_剣_乱_舞)
2016/04/23(土) 23:03
総て捨てる事の出来ない己が脆弱さも、甘さも。……兄様に顔向け出来るものか。兄様の手を借りねば前すら向けぬ此の堕落した心も。嗚呼、兄様は失望なさるだろうか。兄様に掛ける総ての言葉が呪縛だ。雁字搦めに束縛し、窒息させる。…可笑しいものだ。ぬしさま以外に縛られる事はああも厭うと言うのに。振り向き様、顰められた御眉頭。余りの美麗な御姿に身動き一つ取れず見惚れていた。淑やかで艶やか、兄様の口元が緩く弧を描く様に持ち上がった時、私の奥底で星屑が弾けたかの如く、視界が明滅する感覚に襲われる。兄様の御言葉、柔らかな聲色にて紡ぎ出される其れは時折私に呼吸すらも忘却させる事が有る。兄様が与えて下さる命、兄様が示して下さる道、紛う事なき私への期待を、僭越ながら日々此の身で実感している。統括隊長であり、ぬしさまの右腕たる兄様の御期待に添えぬ様な失態は犯せない。──見上げた兄様の眩しい御姿。木漏れ日の様な過去に在るのはぬしさまだけでなく、兄様と、愛い弟達と…皆が其処に居たからだと理解している。誰が欠けても崩れてしまう脆い幸だった。冷静沈着な兄様の横顔が、時折曇る其の時に、私に似た何かを感じる事が有る。喪った私には、何かを手放そうとする兄様に哀愁帯びる表情を見出してしまう。……儚く散る刹那の表情すらも、お美しいなどと。
兄様、好いております。此の小狐は、不躾にも貴方に対し劣情を。如何か御赦し下さい、あにさま。
2016/04/23(土) 23:03
総て捨てる事の出来ない己が脆弱さも、甘さも。……兄様に顔向け出来るものか。兄様の手を借りねば前すら向けぬ此の堕落した心も。嗚呼、兄様は失望なさるだろうか。兄様に掛ける総ての言葉が呪縛だ。雁字搦めに束縛し、窒息させる。…可笑しいものだ。ぬしさま以外に縛られる事はああも厭うと言うのに。振り向き様、顰められた御眉頭。余りの美麗な御姿に身動き一つ取れず見惚れていた。淑やかで艶やか、兄様の口元が緩く弧を描く様に持ち上がった時、私の奥底で星屑が弾けたかの如く、視界が明滅する感覚に襲われる。兄様の御言葉、柔らかな聲色にて紡ぎ出される其れは時折私に呼吸すらも忘却させる事が有る。兄様が与えて下さる命、兄様が示して下さる道、紛う事なき私への期待を、僭越ながら日々此の身で実感している。統括隊長であり、ぬしさまの右腕たる兄様の御期待に添えぬ様な失態は犯せない。──見上げた兄様の眩しい御姿。木漏れ日の様な過去に在るのはぬしさまだけでなく、兄様と、愛い弟達と…皆が其処に居たからだと理解している。誰が欠けても崩れてしまう脆い幸だった。冷静沈着な兄様の横顔が、時折曇る其の時に、私に似た何かを感じる事が有る。喪った私には、何かを手放そうとする兄様に哀愁帯びる表情を見出してしまう。……儚く散る刹那の表情すらも、お美しいなどと。
兄様、好いております。此の小狐は、不躾にも貴方に対し劣情を。如何か御赦し下さい、あにさま。